何でもない日々が愛おしくなる【ブラッシュアップライフ】
自分として、ゼロから人生をやり直せるならどう生きる?
そんなことを考えたことはあるだろうか。
今までの記憶は持ったまま、人生をやり直せるとしたら。
落ちてしまった受験も、
失敗した恋愛も、
後悔している出来事も、
全てをブラッシュアップすることができる。
その代わり、全く違う人生になり、前世で仲の良かった人とも赤の他人になってしまう。
Netflixでたまたま選んだドラマに、“生きること”を改めて考えるきっかけをもらった。
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2023年1月に放送された、バカリズム脚本のドラマ「ブラッシュアップライフ」
何でもない日々が愛おしくなる
主人公の麻美は、33歳あたりで、毎回不慮の事故で死んでしまう。
本当なら怖い。悲しい。
描かれていないが、残された人たちの悲しみを想像して胸が痛くなる。
赤ちゃんから何度もやり直すところも、「世にも奇妙な物語」のようにゾッとする展開にもなりうる。
でも「ちょっと…え〜まじかよ、うわ〜気を抜いたわ〜。」と、死んでしまったことを嘆く麻美の姿が、コミカルで笑えてしまうのだ。
悲しいはずの展開が、麻美の明るさと話のテンポ感で打ち消される。
「生と死」という決して軽くないテーマを描いているのに、コミカルでポップな作品。
それなのに“生きること”がぐんと心に迫ってくる。
麻美は、人生をやり直す度に、前世でうまくいかなかったことをブラッシュアップしていく。
前世で徳を積むと、次は希望の生命に生まれ変わる確率が上がるため、コツコツと徳を積む。
何度も人生を繰り返すうちに、どうしても運命を変えたい出来事が起こる。
麻美は人生をかけて、運命を変えようと奔走するが…
とうとう「自分としての人生」は、次が最後であることを知る。
すると、もう何度も生きてきた日々も、“これが最後”と思うと愛おしくなる麻美。
私も麻美と一緒に、何でもない日々を愛おしく見ていた。
でも本来、私たちはこれが最後の人生。
そう思うと、今自分の目の前で起こっている全てが愛おしくなった。
朝起きて、仕事に行って、帰るだけの平凡な日だって、同じ1日は2度と来ない。教室での子どもとの会話も、家族と食べるご飯の時間も。
当たり前のことだけど、改めて実感すると、1日たりとも要らない日なんてないことに気付く。
自分の人生をゼロからやり直せるなら?
私ならどうするだろう。
ドラマを見終わってから、ぼんやりと考えた。
そう思った自分に驚いた。
今の人生が100点満点とはいかないけど、
また自分でもいい、また今の人生がいい、と思える人生ってなかなか幸せなんじゃないか。
おまけ〜女友達っていいよね〜
この作品が好きな理由の一つに、麻美たちの“女友達特有のノリ”がある。これが非常に共感できるのだ。
私にも「同じ老人ホームに入ろうね」って約束していた友達がいる。
最近はライフステージ、生活の違いから、少し疎遠になってしまった。
ドリンクバーでカフェに長居してから、さらにカラオケに行く流れ。
最後の方はだらーんとソファに寝そべりながら、3人で一緒に歌う姿。
過去の私たちの姿を見ているようで、切なくなった。
「絶対に言っちゃいけないけどさ、」って前置きして、仲間内でしかいえないようなブラックなことを話すところも、毎回笑ってしまった。
もしかして、世の中の女友達ってみんなそうなの?
女友達っていいよね。
久しぶりに友達に連絡してみようかな。
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放送から時間は経っているけど、見た人と語りたいし、まだ見ていない人にはおすすめしたい。
見終わった時には、一度きりの人生を生きるパワーがみなぎる。
自分の人生が愛おしくなる作品です。