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担当編集者は言う。柳本先生は「響」そっくりの性格です!

2017年マンガ大賞受賞「響ー小説家になる方法」について熱く語る集いが、東京上野で開催された。担当編集者をお招きし、このベストセラー漫画が誕生した背景や制作の裏話、絵という手法で「文学」を描くことの難しさなど、作品の最も近くにいる漫画編集者ならではの視点をたっぷりと伺った。創作の裏側を知ることは、「響」の熱烈な読者のひとりである私にとって、まさに目から鱗だった。

ちなみに集いが開催された上野の書店はこんなところ。植物に囲まれた落ち着いた雰囲気のおしゃれな店だ。ここでは様々な本の読書会が定期的に開催されている。漫画をテーマに読書会を開くのは今回が初めてだそうで、初の漫画として選ばれたのが「響」であったことは、この作品が幅広い読者層に受け入れられている証拠なのかもしれない。

小学館で柳本光晴さんの編集担当をされる待永倫さんが、書店に駆けつけてくださった。

さあ、さっそく本題に入ろう。今宵、じつに様々な意見が飛び交った。というのも、この集いは皆がドリンクを片手にじっくり膝を突き合わせることができる小規模なもので、それだけに質問も気兼ねなく飛んだのだ。

そもそもなぜ柳本光晴さんはこの漫画を描こうと思ったのか? 編集者はどこまでストーリーに関与しているのか? そもそも編集者とは作り手なのか? 小説の編集者と漫画の編集者の仕事の違いとは? 主人公「響」の性格はどのようにして思いついたのか? 響はどうして何も語らないのか、どうして主人公なのにモノローグを持たずに自分の心を周りに語らせるのか? 響きを取り巻く人間関係は現実に近いのか、それとも純粋に想像の産物なのか? 柳本光晴さんは漫画家なのにどうしてこれほど文学の世界を知っているのか? 現実にいる小説家のパロディをどこまで漫画の中に取り込んでいるのか? 文学の話なのにどうして所々ヌードシーンや暴力シーンが入ってくるのか? 響が芥川賞・直木賞を同時受賞した「お伽の庭」とはいったいどんなストーリーなのか? この漫画の映画化などの予定はあるのか?

話題の中心になったのはざっとこのような具合だが、さらに話は脱線し、昨今のマンガ界の変遷についても触れた。

ピクシヴなど、ウェブが作品発表の場にシフトしていくこれからの時代に、漫画編集者は必要なのか?

またまた話題は脱線するが、参加者から面白い質問が飛び出した。

最近のドラマや映画のタイトルが長いのはなぜか?

たとえば「22年目の告白ー私が殺人犯です」や「ちょっと今から仕事やめてくる」や「僕は妹に恋をする」など。最新のドラマでは「脳にスマホが埋められた!」などもある。 

この質問への編集者からの答えには私も驚き、そして同時に深く納得することとなった。

長い記事になりますが、これを読めば、みなさんにとって漫画の楽しみ方がぐっと広がることでしょう。また、漫画に興味のない方でも漫画を通して今の時代の傾向を発見できること間違いなし! 分野の異なる創作に携わっていらっしゃる方にとっても、参考になることは多いはず。それではさっそく続きをどうぞ。

創作の基本設定

編集者の待永さんは言った。

柳本先生は「響」を書かれるにあたって、おそらく決められていたことが3つあります。第1巻の創作に取り掛かる前から、もっと言うなら、「響」という作品を思いつかれた段階で、その3つはご自身の中で条件だと心に決めていらしたのでしょう。それは、

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