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自伝的岐路エッセイ

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これまでの人生を「岐路」を中心に振り返った自伝的エッセイ集です
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#エッセイ

出・ナガサキ

出・ナガサキ

連続岐路エッセイその①

 一九九四年、当時十九歳だった私は大学進学のために長崎を出た。将来に対する目標など、何も持たない無気力な若者だった私は、ただ「このまま働きたくない」という、とても後ろ向きな理由で進学を志していた。大学選びも「演劇サークルがあるところ」という、学問とは何ら関係のない部分を重視していた。そしてとにかく実家を、長崎を出たかった。

 なぜ演劇サークルなのか?
 何も打ち込むもの

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演劇廃人

演劇廃人

連続岐路エッセイその②

 演劇をやりたいと言いながら具体的なイメージがまったくなかった私は、大学の演劇研究会に入って、その本気度にまず驚かされた。生っちょろい部活動などではなく、それはほとんど劇団であった。会場は外部のホールを借りる、照明は自分たちで回路図を書いて吊りこんでいく、舞台装置や小道具、衣装などももちろん自分たちの手作りで、搬入から舞台の設営までには二、三日の期間を要する。そしてチラシ

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上京物語

上京物語

連続岐路エッセイその③

 卒業後は上京するつもりだという話をしたら、北九州で何となく演劇をしながら暮らしていた一人の先輩が「俺も東京に行って芝居しようと思ってたんだよ」と言ってきた。じゃあ節約のためにも向こうで同居しようかという流れで話は進んでいった。この先輩が木村である。
 木村は特別芝居が上手いというタイプではなかったが、ハートが強く恥じらいのないぶっ飛んだ演技が出来る稀有な役者で、彼だった

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音楽の力

音楽の力

連続岐路エッセイその④

 試験に合格したとは言え、じゃあすぐに行政書士として食っていけるかというとそんなわけはない。私はしばらくは派遣社員を継続しながら資格をどう活かすか考えることにした。派遣先は大手広告代理店の子会社でDTPを専門にやっているところだった。前職のスキルが十分に活かせる職場で人間関係も悪くない。残業は多く、たまに徹夜作業もあったが特に苦にすることなく、ストレスを感じることはあまり

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西の果てにあった閉塞感

西の果てにあった閉塞感

連続岐路エッセイ 最終回

 仕事を失うまで、残り二ヶ月を切っていた。
 ちょうどその頃、東京の外れにある大手自動車工場に季節工として働きに来ていた三〇歳の従兄弟が、契約期間を満了して長崎へ戻ろうとしていた。この一年、私は彼に付き合って東京の色々な場所を案内していた。
 三〇歳になるまで長崎を離れたことがなかった彼には「一度は東京で暮らしてみたい」という願望があったらしい。彼は週末の度に都心に出て

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