20190519__学力_心理_家庭環境の経済分析_

「学力・心理・家庭環境の経済分析」を読んで、教育に真摯に向き合う姿勢を学んだ。

昨今よく「子供の貧困」「貧困の固定化」が取り沙汰されています。貧しい家庭に生まれた子供はやはり貧しく、成人してもその貧しさから抜け出せずにいる。そしてそういう人が、少なくない数いる。

自分自身、母子家庭で塾や習い事をさせてもらえなかったり、周りのいわゆる幸福な家庭に対して「家族」というバックグラウンドを持っていないと感じたりして悩んだ時期がありました。

そういう意識から、本書を読みました。”生まれ”と”育ち”は子供たちの成育にどのような影響を与えるのか。本当に可哀想なんだろうか。自分ができることはなんなのだろうか。そういった点を知りたいと思いました。

本書は、「クロスセクションデータ」:ある一時点における世帯所得やテストのスコアといった一次元的なデータだけでなく、「パネルデータ」:一定期間対象を継続して調査することで得られる各項目の推移まで分析して見ることができる二次元的なデータを用いて、家庭環境の諸要因が子供の学力や心理面(本書中ではQOLを指標としていました)に与える影響を分析しています。

率直な感想として。

データ、まだ足りてないのでは。

本書が分析対象としている「日本こどもパネルデータ」は2010年に開始され、本書が執筆された段階で4回分のデータが蓄積されています。2010,2011,2012,2013年の4回ですね。一方、義務教育は9年です。正直、まだ家庭環境が子供に与える諸影響を解明するにはデータの蓄積年数が少ないと思います。実際、本書においても多くの点で今後の分析の課題を提示するに留まっている印象があります。

ただ、本書が掲げているような大きな課題を前にして、これはとても真摯な姿勢だと感じました(何様や、、、)。

ある一時点における親の学歴や収入と子供の成績をみて短絡的に「親が高学歴で高収入だと子供の成績も高い傾向がある」と言い切ってしまうのは簡単です。自分もそこで思考停止してしまっていました。

本書はそこから一歩踏み込んで、「なぜ親が高学歴、高収入だと子供に影響があるのか」まで分析していこうとする姿勢を見せています。そこで実際に何が起こっているのか。そのメカニズムを解明しようとする姿勢。実際、そこまで解明できないと、なにか施策をうつにしても「親に一時給付金を与えればいいんじゃない!?」みたいな的外れなものになってしまいますよね。本質を見ようよ、本質を、ということですかね。

家庭環境なんか、みんな程度の差はあれ不平等です。

生まれつき個人の能力差や適正が異なる上、生んでくれた親も違う。生まれて育つ地域も学校も周りの友達も違う。世の中不平等なのが当たり前なんです。

それを是正していこうとする正当性がどこにあるのか、正直自分にはまだわかりません。

ただ、自分は、親や育ちで悔しい思いをしました。その中で、恵まれた出会いなんかもありました。結果として、今なんとか生きています。

これを、返していきたい。同じような境遇がある子供がいるのならば、思い上がり甚だしいですが自分自身が「恵まれた機会」になれれば。自分もそういう機会に救われたから。ただ、それだけですね、今は。

教育は、国の一番大事なところだと考えています。政治も、行政も、経済も、全て人間がやっていること。その人間を育てる。大事じゃないはずがないですよね。

この課題には、自分も長く、付き合っていきたいと改めて思いました。何ができるのか、何が妥当なのか考えていきたい。

蛇足です。

先日久しぶりに家庭教師で子供に勉強を教えました。やはり、楽しい。わからなかったもやもやが晴れる感覚が、こちらにも伝わってきます。逆にもっと理解不能な深みにはまっていくもどかしさも伝わります。人生の中のほんの少しでも自分に関わってくれるのだから、なるべくいい影響を与えられたらな、と思います。

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