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教養・ノンフィクション

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#読書感想文

『島田清次郎 誰にも愛されなかった男』 風野春樹

『島田清次郎 誰にも愛されなかった男』 風野春樹

表紙は一人の青年の写真。神経質な感じはあるが、頭の良さそうなしっかりした顔である。
この青年がなぜにして「誰にも愛されなかった」とまで言い切られているのか。気になって読んでみた。

私と同様、その名前を見てもピンとこない方がほとんどではないだろうか。
島田清次郎は、大正8年(1919年)に発表した小説『地上』で一躍文学界のカリスマになるも、その傲岸不遜な言動から文壇で疎まれ、数々のスキャンダルを起

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『統合失調症の一族』 ロバート・コルカー

『統合失調症の一族』 ロバート・コルカー

この本をはじめて見たのはどこかの洋書サイトでだったか。目が引き寄せられたのはその表紙、豪華な螺旋階段にずらりと並ぶ正装した大家族の写真である。
題名は"HIDDEN VALLEY ROAD Inside the Mind of an American Family”。
なにやらアメリカの個性的な家族の話らしいこの本には、素通りできないものを感じた。
ただ値が張るのでちょっと検討、とアマゾンのカート

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『チェルノブイリ 「平和の原子力」の闇』 アダム・ヒギンボタム

『チェルノブイリ 「平和の原子力」の闇』 アダム・ヒギンボタム

威嚇するようなその厚さ、毒々しい黒・赤・黄の表紙。手に取るのを躊躇するような本だが、一度読み始めると抜け出せなくなる。

ずっしりと重いこの一冊に詰まっているのは、核施設の恐ろしい爆発事故について取材調査した、緻密で克明な記述である。
著者は本書で、チェルノブイリ原子力発電所建設までの背景と道のりから、未曾有の大事故に至った経過、事故後の技術的及び政治的な対処、放射線を浴びた人々の身に起きたこと、

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『暇と退屈の倫理学』 國分功一郎

『暇と退屈の倫理学』 國分功一郎

現代人の社会は豊かである。豊かな社会では人々は好きなことをする余裕=暇がある。
しかし、いざすべき「好きなこと」がわからず、人は文化産業によって用意、提供された楽しみを買って享受する。
つまり、「労働者の暇が搾取されている」。
なぜ搾取されるのかというと、人は暇の中で退屈し、そして、退屈することを恐れるからである。

なぜ人は暇の中で退屈するのか。
そもそも退屈とは一体何なのか。
暇の中でどう生き

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