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そっか、わたし悲しかったんだな 父を看取って三週間~その女、喪中につき②

こちらの続きです=======

酸素吸入器をつけて病室のベッドに横たわる痩せた父を見るなり,胸につかえていたマグマのような衝動が横隔膜から上に突き上げてきて,わたしの涙腺を崩壊させた。

涙を見せれば,父が哀しむことはわかっていたけれど,止められない。

ドワーッと,後から後から言葉もなく,涙が溢れてくる。

魂が震える時,感情はとっさに言葉にならない。

そんなに冷静でいられない。

神経心理学で言えば,泣きは身体言語とも言えるし,「悲しいから泣く」のではなくて,「泣きたいから悲しい」のだ。

人には2つの神経回路があって,「泣きたい」という身体感覚があって,その刺激信号が脳へ登って行くのがボトムアップ型の脳神経回路で,逆に脳から身体へ信号が降りるのがトップダウン型の脳神経回路だ。

脳が感情をキャッチするよりも先に体が反応する説は,長いこと心理学の論争になっているが(ダマシオとか),ソマテック心理学(身体心理学)として,最近,とても熱い。

と,つい研究者目線で,左脳を先に働かせて,言語で分析して理解しようとするけれど,いやいや,体の方が先に反応してるから,わたし,泣いてるんだわ。

思えば,その兆候はもっと先に現れていた。

「わたし元気そうに見えるかもしれないけれど,限界なんだ。おとーさんが入院しているって,やっぱり辛いよ」

父との3年ぶりの対面が病室だった1週間前の朝,脱水が終わった洗濯物を洗濯機から出している夫に,わたしは告げた。

年度末で仕事が忙しいのと,子どもの中学受験が終わって塾のお迎えがない分,遅くまで仕事をして帰宅も夜遅い夫なのもわかっているけれど,自分一人で,何とも言えない気持ちを抱えるのは,やっぱり,辛かった。

わたしの外勤の仕事は,3月上旬で年度納めをしていて,子どもの卒業式の準備や3学期末面談など子育て業務に多くの時間を割きながら,自分の事業もしていた。

「父が入院していて,先が見えない何とも言えない状況だけど,この先,危篤になったらいつでも駆け付けられるように準備はしなければならない」

こんな宙ぶらりんの状況を2週間続けていたら,わたしの心は疲弊しきっていた。

「父の容態が悪くて,スケジュールを開けておきたいので,一旦,保留にしていただけますか」

相手にそう言えばいいのに,わたしは言えなかった。だから,事情を知らない相手にとっては,急な予定変更が重なるのだから立腹する。

でも,わたしは認めたくなかった。

そう言ってしまえば,父が死に向かっていることを受け入れなくてはいけないから。

でも,でも,でも……。

わたしは「でもしか」が嫌いだ。

「でも」「しかし」なんて,受け入れようとしない,相反するアンビバレントな言葉を聞くと,虫唾が走る方だ。

でも,人間の心は複雑だ。

「でも」「しかし」の矛盾でしか,言い表せない心情があることをやっと知った。

結果,たくさんの人にスケジュール変更をお願いし,迷惑をかけてしまった。

人は迷惑をかけずに生きていられないし,たくさんの他者の助けを借りないと生きていられない。わかっちゃいるけれど,なんなのこの自責罰は。

子育てなんてその最たるものだけど,子どもが他者に迷惑をかけるのはわかるけれど,いい歳した大人で,しかも《心理学者のわたし》が「人に迷惑をかける」なんて……。

《できないアホな自分》であることは,わかっているし,アホを受け入れているけれど,それでもまだ,認めたくないものがあったとは,どんだけ自己肥大しているんだろう。

肉親の死は,人のライフイベントを100点満点で点数化した,アメリカの心理学者ホームズと内科医レイの古い心理学研究(1967)によれば,63点の4位。

因みに1位から4位の【ライフイベントのストレス度】の順位は
1位「配偶者の死」(100点)
2位「離婚」(73点)
3位「夫婦別居生活」(65点)
4位タイ「拘留」(63点)

(ホームズ&レイ「社会的再適応評価尺度」)

5000人くらいを対象にした約60年前の古いデータだけれど,家族の死はかなりの心理的ストレスを与えるのだ。

ストレスは,冷静な判断を欠く

特に,《死への恐怖》は,かなりのものだ。

「死の受容」と言えば,精神科医のエリザベス・キュブラーロスの「死の受容5段階モデル」がある。

1否認と孤立→2怒り→3取引き→4抑うつ→5受容

エリザベス・キュブラー・ロス「死の受容5段階モデル」)

これは,当事者が死を受け入れるまでのステップとされるけれど,まわりの人にとっても同じだろう。

だって,わたし,父の死を認めたくなかったんだもの。夫以外,誰にも言えなかったんだもの。

父を看取ってしまえば,案外,心はスッキリしている。

それは,父がこの死の5段階を受け入れて,すうっと見事に帰天していく様をわたしは立ち会ったからだろう。

とはいえ,これは,家族の中でも心理的距離が遠い,父親だからだ。

母親とは,比べようがない。

先回りして,心の準備をしておけばいいんだろうな,とは思うけれど,今は,まだ,考えたくもない。

わたしの体の感覚は,鈍感ですぐにバグる脳に比べて,とても繊細で鋭く,また傷つきやすいのだから。

これは,《繊細さん》とか《HSP》の感覚なのかもしれないけれど,うん,それ,ポップ心理学だからさ,学術の心理学と全然違うんだよ。って,言いたくなる意地悪なわたしもいる。

ああ,人って,複雑で面白い生き物だな。(お前がな)

つづく

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論文や所見書き、心理面接にまみれているカシ丸の言葉の力で、読んだ人をほっとエンパワメントできたら嬉しく思います。