銀蔵@妄ツイ
短編や中編、その他になります。
乃木編 学園もの・バトルもの。 坂道グループの物語、乃木編になります。
主人公真壁宗一郎と日向坂のメンバーたちの話になります。(バトル描写有) 坂道グループの物語、日向編になります。
主人公藤崎春樹は、とある夜道で女性を一人助けた。それがきっかけで不可思議な事象に巻き込まれていくことになる。坂道グループの物語、櫻編になります。
『無理を道理で押し通す』 この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 「ねえ! これ!! どうして誰も気づかなかったの!?」 生徒会室に愛季会長の声が響き渡った。 「あー、これはですね……」 言いづらそうにしていた書記の代わりに、僕が答える。 「彼らは部費と称して私物に費やしているんです。なので、その額に達しているのかと」 「かと、じゃないよ! どうしてそれを認めちゃってるの!!」 皆が唇を噛み締めて下を向く。 「前会長もそれ
夕焼けで赤く染まった空がとても綺麗な日だった。 放課後の教室に二人。 「好きです。付き合って下さい」 告白された。 顔を真っ赤にさせて照れている彼女がやけに可愛く思えたからか。 それとも彼女に好意を寄せていたのか。 「うん……いいよ」 そう答えていた。 ほとんど反射的に。 彼女とはただのクラスメイトだった。 それも挨拶を交わす程度のそんな薄い関係だ。 年の終わりに仲の良い親友同士が恋人関係になり、そこからお互いを紹介されて、強引にダブルデー
僕は必死に走った――彼女から逃げるように。 「――はぁッ、――はぁ……」 気付けば知らない通りだった。 やけに薄暗く、通行人もほとんどいなかった。 (どうしてこんな道に入っちゃったんだ……) 逃げた先が暗い夜道だなんて、映画やドラマであれば『この後に何か不吉な事が起きる』そんなシーンとなるのであろう。 ただし、これは現実である。 あるのだが…… キキィー、と僕の横を通り過ぎていく自転車に、 「うわっ!?」 と思わず飛びずさった。 続いて、
「……三」 スコープを覗きながら狙撃手――齋藤飛鳥は淡々と呟いた。 「――甘い……四」 けたたましい音をして回るプロペラや、体の芯まで響くエンジンの駆動音と時折揺れる機体。 それらに集中力を削がれることもなく目標を撃ち抜いていく。 (……慌ててしゃがんでも遅いよ……丸見えだから) 「五」 五人目。現場に到着して即座に狙撃を開始した飛鳥。ヘリコプターの中からの狙撃であるが、一分経たないうちに五人もの敵を葬ったのである。 「あーーー!! あいつら逃げていくよ
この学校の窓はどういうわけか強化ガラスで出来ている。 何かが起きた時用、つまり不慮の事態のための強化ガラスである。 ただその割には警備力ないし防衛力が薄く、今回のような事態への対処が御座なりなのは見通しの甘さというところだろうか。 政府直轄の学校といえどこの程度か。 などと考えながら、 「――フッ!!」 西野七瀬は腰に携えた愛刀――七瀬丸を抜いた。 窓ガラスへと袈裟斬りに抜刀したのである。 「――ア!?」 驚愕したのは白人の男。 視界の端に移る窓ガ
一階の有様は酷いものだ。 そこかしかに死体が転がっている。 ジョーンは心の中で溜息を吐いた。 『逃げれば殺す』そう伝えたのに、頭の悪い連中だ。 中には抵抗する者らもいた。教師らしき人物だったが、なかなかどうして腕がたち、こちらにも負傷者が出るほどだった。 それでも数の差というのは簡単には覆せない。四方から蜂の巣にされてしまえば如何な強者も、屈強な警備員も地に伏せるのだ。 そうやって、いくつかの死体を見ていた時。一人の女子生徒の後頭部に視線が固定された。
山下美月は一段飛ばしで階段を駆け上った。 「……はぁ、はぁーっ。――い、委員会って三階だったよね……はっぁ……ふぅ」 史緒里を探していた。 どうしても今すぐ会って伝えたいことがあったから。美月たちにとって重要な話だ。 だから祐希の返事も待たずにここまで走ってきたのだ。 それなのに―― (……何が起こってるの?) 一階が騒がしい…… 聞こえてくる悲鳴に銃撃音。 「お、おい! 下から変なやつらが上がってくるぞ」 「逃げたほうがいいよな!?」 蜘蛛の子
乃木坂警察署。 朝早くから呼び出され、今し方まで七瀬がいた場所である。 (こんなときに、今更この間の件で呼び出されるなんて思うてへんかったわ……) 「忙しいのにまったく」とブツブツと呟く七瀬。 数日前に捕まった乃木坂高校の生徒の一人。 山本洋介。彼は半年前から乃木坂市を脅かしていた通り魔だった。 話によると、彼の自宅には被害者のものと思われる頭部が瓶詰めにされて飾られていたそうだ。 (そんなサイコ野郎の話なんてどうでもええねん) 心の中で悪態を吐きながら
教室の窓際の一番後ろ――のひとつ前。 そこが祐希の席。 ちなみに後ろは美波の特等席。 今日は朝早くから登校し、机の上でノートパソコンを広げてカタカタとキーを叩いていた。 「あ~、これがこーで……よし!そしたら次は――」 と独り言を呟く祐希。 そんな祐希から対角に位置する教室の隅にて、数人の女子生徒がコソコソとなにやら話をしていた。 『与田さんまたブツブツいってるよ』 『ほんっと、気持ち悪い」 『あんまり見ないほうがいいよ。後で番長にシメられちゃうから』
二千〇〇年。 世界的に感染症が爆発的に流行り、数億もの人口が減少した年。 同時に世界各地で略奪行為・紛争が急激に増加。 あわや世界大戦の危機にまで至っていた。 日本も例外にあらず、K国から攻め入られると瞬く間に北海道・東北を占拠され、福島との県境で戦線が展開された。 A国の助力もあり、どうにか前線を維持する。 そうした激しい戦禍により両親・親族・住む場所を失う子供が後を絶たなかった。 これが後にいう東北戦争である。 劣勢を強いられた政府は民兵を募るこ
駅前にある商店街の小さなスーパー。 そこから出てくる仲良そうな雰囲気の二人の女性。 「あははは。それでさ~」 「あ、そっちの方が重いでしょ? 持ってあげるよ」 と手提げ袋を奪う美月。 代わりに史緒里に渡された小さなビニール袋。 「もう~。私だってそのくらい持てるもん」 「いいのいいの。これもトレーニングの一環だからねっ」 「ふふ、ありがとう。……美月のそんな優しいところが好きだよ」 「えへへ~私も~」 好きだよと言われて嬉しそうに笑う美月。 両手い
この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 『依然戦況は……T国の……また、政府は』 ――ピッ 『東北戦争が終結して、ちょうど三年を迎え』 ――ピッ 『地域のニュースです。迷子の猫ちゃ』 ――ピッ 『本日の天気です』 ――ピッ 『昨夜未明、乃木坂市にて女性の遺体が発見されました』 男はそこでリモコンを握る手を下ろした。 乃木坂市。 男が現在住んでいる場所である。 『殺されていたのは二十代の若い女性で、腹部に数か所
この話はALTシリーズ 同期の大園 の第12話目となります。 上記を一読してから、読み進めていただけると嬉しいです。 (投稿順=時系列) Snow White 『睡眠欲』 食欲・性欲と並ぶ三大欲求のひとつ。 俺「つまり、大園は人より睡眠欲が強いってことですか?」 小林「そうだね……っていうと語弊があるね。正確には――」 『Desires Transformation Accumulated』 通称DTA。 欲求が変容して、蓄積されていく病気。
正源司陽子は振り返った。 暗い山道を走る一団の最後尾にて、師の合流を期待しているのか、はたまた人狼の追走を警戒しているのか。 陽子本人もわからぬまま、無意識に幾度となく振り返っていた。 「――あ! 見えた!!」 先頭を走る菜緒の声だ。 どうやら県道へと辿り着いたようである。 片側二車線の道路で山道としてはだいぶ大きい。 どちらかというと田舎に分類される道沿いでも、しっかりと灯りが整備されている辺りは近隣住民の多さが関係しているのだろうか。 それでも一定の間隔を置いて設
真壁は茉莉の目尻を流れる涙を拭うと、彼女の瞼をそっと撫でた。 見開かれていた目を閉じる様に。 「守ると誓ったのに、すまない」 誰に聞かせるでもなく、ただ虚空にそう呟いた。 真壁宗一郎。 二年前に婚約者を交通事故で亡くす。 その場に居合わせれなかった自分を心底恨んだ。 しばらくして仕事を辞めた。 昼間はデートでよく訪れていた高台から町を眺め、夜は当てもなく街を歩いた。 ひたすら同じような毎日を送っていた時だ。 いつも通り高台へと足を運ぶ真壁。 普段なら誰もいないはず
菜緒は突っ立っていることしか出来なかった。 目の前で後輩が倒れているのに…… 血だらけになった彼女――その命を、皆が必死に繋ごうとしているのに…… 現実を受け入れることが出来ず、ただ小刻みに呼吸を繰り返すだけ。 『なおが守るんや』 『伊藤さんの事も気にかけていかないと』 そう決心したのに。 (なお……なにしてんやろ……ぜんぜんアカンやん……) 人狼の気配が分かる。 それが何だというのだ。 全能感に浸っていたとでもいうのか? 訳の分からない、根拠もないそれに酔い