セイウチのビンタ 〜職人の旅日記〜
2014年7月。
会社を辞めて自転車日本一周中。
三重県にあるシーパラダイスという水族館でセイウチショーをやっていた。
体長2メートルを超えているであろう巨大なセイウチの周りには、大勢の家族連れやカップルが集まり輪が出来ている。
私もその輪の中に入ってセイウチショーを見ていた。
職員さん「では、ここで誰かにセイウチと一緒にゲームをしてもらいたいと思います。
では、、、そこのお兄さん。」
どうやら自分に指名がかかったようだ。
「日常生活の中で踏み出そうと思っても、踏み出せないことってありますよね。」と言ってマイクを向けられる。
僕「あ、はい」
誘導されるようにそう答えるとお兄さんは、
「じゃあ今日はセイウチに背中を押ししてもらおうと思います。」
セイウチの前に背中を向けて立つ。
体重1トンを越えるという巨大なセイウチに背中を押されても大丈夫なのだろうか ?
「踏ん張ると逆に危ないですから、力を抜いて立っていてくださいね。」
耳元でお兄さんがつぶやく。
ショーでやるのだから大丈夫だろうとわかっていても、背中にセイウチの気配を感じて徐々に緊張が高まっていく。
言われたとおりに力を抜いて待つ。
お兄さん「それでは行きます」
「3!」
振りかぶるセイウチ
「2!」
迫りくる巨大な手のひら
「1!」
吹き飛ばすセイウチ
顔が全てを表している。
大人に猛烈な勢いでタックルされるくらいの衝撃だった。
このあと、3メートルくらい飛びました。
みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。