Caita911

私は日本画家で無所属です。約50年振りに妻と二人でイタリアへ行って来ました。フリーの旅…

Caita911

私は日本画家で無所属です。約50年振りに妻と二人でイタリアへ行って来ました。フリーの旅行で苦労もしましたが、各地を巡り目的のイタリア絵画(中世〜ルネサンス)を懸命に見て来ました。様々な私見やまた現地で感じたことを自由に書いてみたいと思います。どうぞ興味のある方はお読み下さい。

最近の記事

80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (13)

【イタリア・あの愛しい人達に】 カスティリオーネ・オローナ(4) [作品制作などで忙殺されてちょっと間が開きましたが、やっとイタリア旅行記に戻って来ました!]  さて、このカスティリオーネ・オローナのマソリーノの魅力とは? (11) に照会したマソリーノの初期の「聖母子」 (ドイツ・ブレーメン美術館蔵)と同質の彼本来の持つ優しさや艶やかさや穏やかな暖かさであり、また個々の人物もたいへん印象的で魅力があり、それらによって静かに語られるいずれの名場面も親しみ易く心地良く見る

    • 80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (12)

      【イタリア・あの愛しい人達に】 カスティリオーネ・オローナ (3)  この"水" を見ると直ぐに思い浮かぶのが、京都出身の院展日本画家森田曠平氏の「桜川」を始めとした一連の流水を扱った作品です。氏は何度もヨーロッパへ行かれて研鑽されたようで…。(*下記画像 )  ここに見られる氏の川の表現は、マソリーノの「キリスト洗礼図」と共鳴しているようにあって、表現として共感を持って見ることが出来ます。こうしたマソリーノの洗礼図を見ていると、少し安易ではありますが…ヨーロッパ中世の表

      • 80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (11)

        【イタリア・あの愛しい人達に】 カスティリオーネ・オローナ (2)  *上の画像・ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵のマソリーノ「受胎告知』 (1420年後半制作か?) を見てみると様々な矛盾が見えてきます。画面構成や遠近法の不確かさなども然りですが、私が一番気になるのはマリアと天使の衣装の表現の違いにあります。  マリアの衣装では、右上からの光によって衣の襞の凹凸を表すため、強い陰影で立体的表現がなされています。それに反して天使の方は、大胆な図柄を用いた平面的・装飾的

        • 80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (10)

          【イタリア・あの愛しい人達に】 カスティリオーネ・オローナ (1)  列車を降りて、丸1時間半二人で歩き (スマホの写真では場所・月日・時間まで各画像と共に表示されていました ) 丸い石の石畳みの坂を登り切って漸く辿り着いたカスティリオーネ・オローナの参事会教会。 受付では50才代くらいの二人の女性が笑顔で歓待してくれました。50年振りに来れたことを伝えると、二人は一層暖かく迎えてくれました。私も感激して何故か胸一杯になりました。  片方の女性が早速真っ先に案内してくれたのは

        80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (13)

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (9)

          《イタリア旅行・雑記》 (4) 西へ西へひたすら西へ  ミラノ中央駅から列車で北へ、そしてベネゴーノ・スペリオーレ駅に。 駅員も人影もない田舎?の駅。バスは勿論、タクシーなど全くないところ。とにかくここからカスティリオーネ・オローナに向けてひたすら西へ西へ歩くしかありません。携帯で"北"を確認し、ひたすら西へ歩き始めました。妻と横並びする余裕もない道幅、曲がりくねったり、上がったり下がったり、その上、前から後ろから例の如くかなりのスピードの車が、危なくて気が気でなく、妻を振り

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (9)

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (8)

          《イタリア旅行・雑記》 (3) ユーレイルパス  待望の「カスティリオーネ・オローナ」を目指しミラノ中央駅へ向かいました。  旅行前に、サポートの旅行社の方が、日数や移動距離などを考慮して鉄道の【ユーレイルパス】(指定した期間内の何日分かを選び、乗車料金を日本で先払いしておく。特急料金や座席指定料金は別。従って各駅停車の列車には各当日は乗り放題 ) を進めてくれました。その都度スマホで乗車手続きをする必要があるので、高齢者にとってはちょっと苦手なスマホ操作のため、少しハードル

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (8)

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (7)

          《イタリア旅行・雑記》 (2) コインランドリー  前日はイタリアの初日で慣れない現地で思うように動けず、随分歩き回って疲れました。妻も足に痛みが出てたいへん心配しました。マッサージをしたり、シャワーでふくらはぎを温めたり、塗り薬を塗ったり、経皮鎮痛消炎剤 (沢山持って行きました)を貼ったり……。  10月末近くでしたが、ミラノは朝8時でもまだ暗くてちょっと不思議な感じで、夕方も4時頃には日が暮れるのでたいへん気持ちが焦りました。気候的には、この期のイタリアは日中はさほど寒く

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (7)

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (6)

          【イタリア・あの愛しい人達に】 ミラノ (5)  ブレラ美術館には沢山の作品があり、ひとつひとつ見飽きず、いくら時間があっても足らないほどですが……。そうした中でも何故か微笑ましく愛おしいものに、アンブロージョ・ロレンツェッティ(1290年頃〜1348年)の「聖母子」があります。  ロレンツェッティは、親しみ易く愛すべきシエナ派のひとりで、兄のピエトロ・ロレンツェッティと共に沢山の絵を残してくれています。  この絵では最初は表情がつかみにくく、謂わゆる"隈" ( クマ:日本

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (6)

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記(5)

          【イタリア・あの愛しい人達に】 ミラノ (4)  ブレラ美術館にあるマンテーニャ「聖ルカの多翼祭壇画」ではキリストを含め十二人の人物が描かれています。いずれもそれぞれ特徴があって印象的に描かれていますが、下段右端に胸に剣が刺さった聖女?がたいへん愛らしくて目に留まります。 この聖女の場合もマンテーニャの得意な下から見上げる"視点"で描かれており、その描法ゆえの結果としてか、大きなオデコが特徴的で、このオデコがこの聖女の可憐さを特徴付けているかと思います。  私共が主催する写

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記(5)

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記(4)

          【イタリア・あの愛しい人達に】 ミラノ (3)  ブレラ美術館には前記のマンテーニャと共に、義弟(姉とマンテーニャが結婚)でイタリア初期ルネサンスのヴェネチア派を代表するジョバンニ・ベッリーニ( 1430〜1516)の「ピエタ」 (テンペラ画) が展示されています。  ベッリーニの「ピエタ」は、マンテーニャやフランドル派の影響を受け、特にフランドル絵画の持つ綿密な描写と情感に満ちた人間的感情の表現により、この絵をより深いものにしていると思います。聖母とキリストの胸詰まる人間的

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記(4)

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (3)

          【イタリア・あの愛しい人達に】 ミラノ (2)  ミラノ・ブレラ美術館では結構小さい部屋が沢山あって、見逃した絵も少なくないようで… 旅行前に書き出していた資料を確認する間もない程、夢中で見ていました。  ここでは何と言っても見逃せないものに、アンドレア・マンテーニャ(1431〜1506)の『死せるキリスト』 (テンペラ画)があります。  初期ルネサンスと言われるこの頃、造形的表現に目覚めた画家達が、地域( パドヴァ派・フェラーラ派・ヴェネチア派・シエナ派・フィレンツェ派

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (3)

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (2)

          ミラノ市内 《イタリア旅行・雑記》  旅を通して体験した様々なことを《雑記》として各事を書いてみようと思います。興味のある方はぜひお読み下さい。 (1)交通状況  関空を夕方に飛び立ち、日付けとしては翌朝の8時にミラノ郊外の空港に着き、空港からはバスでミラノ市内へと向かいました。少し躊躇しましたが一番前の席に妻と並んで座り、「イタリアへ来たぞ❗️」と言う強い思いや喜びを抱いて窓外に目を向けていました。  運転手は慣れた道なのか、度々車線を変えながらスムーズにバスを走らせて

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (2)

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (1)

          ミラノ ブレラ美術館       ジョバンニ・ダ・ミラノ 【イタリア・あの愛しい人達に】  出会った愛しい作品達にそれぞれ拙い感想《私見》を書いて行こうと思います。興味のある方は是非お読み下さい。 ミラノ (1)  飛行機で到着した1日目のミラノ、歩き歩きで結構迷ってやっとたどり着いたブレラ美術館。美術学校も併設されているようで、そこでも迷い、一角に座っていた女子学生に尋ねると自ら連れて行ってくれて、やっと美術館への階段に至りました。チケット売り場では戸惑う私達に気付いて

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (1)

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 [序文]

          【イタリア・あの愛しい人達に】 《 序 文 》  妻と二人で、50年振りにイタリアへ行って来ました。ツアーでなくフリーでの17日間、ハラハラドキドキの毎日、窮地に陥ることもしばしば、緊張と不安の日々でした。それらの殆どは乗り物や食事や買物や言語、そして50年前と様変わりしていたイタリア社会の実態であって、それらのプレッシャーに対して、万感胸打つ感動で埋め尽くしてくれたのは、あの愛しい人達に再び会えた喜び・感激・震える感動でした。  日頃何度も見て来た画集よりも、また自分の

          80歳夫婦イタリア絵画旅行記 [序文]