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80歳夫婦イタリア絵画旅行記(4)

【イタリア・あの愛しい人達に】
ミラノ (3)
 ブレラ美術館には前記のマンテーニャと共に、義弟(姉とマンテーニャが結婚)でイタリア初期ルネサンスのヴェネチア派を代表するジョバンニ・ベッリーニ( 1430〜1516)の「ピエタ」 (テンペラ画) が展示されています。
 ベッリーニの「ピエタ」は、マンテーニャやフランドル派の影響を受け、特にフランドル絵画の持つ綿密な描写と情感に満ちた人間的感情の表現により、この絵をより深いものにしていると思います。聖母とキリストの胸詰まる人間的な感情表現は、傍にヨハネを配しているものの、ほとんどキリストとマリアの二人の内面表現に心奪われます。
 キリストは十字架降下後で肌も血の気を失った色で描かれており、光を帯びたその白さも唯ならず鮮烈で(マリアの赤みを帯びた手や顔と比べても)死に至ってるかと思われますが、顔に現されている表情は運命を認識しているかのような非常に人間的な生きている内面を現しているように感じます。

「ピエタ」(部分)
ジョバンニ・ベッリーニ

 キリストの肌は非常に滑らかでまたつややかで若々しく現されており、また明暗の描写も確かで立体的な表現がなされています。油絵の持つ滑らかなグラデーションを既にテンペラ画でここまで表現出来ていることにも驚きます。テンペラ画(実体験はありませんが)はそれ以前のものを見るにつけ、このボカシやグラデーションが容易でないと思われます。
 日本画においても画材的にグラデーションやボカシがなかなか難しい面があり(日本画の場合、単に伝統的表現と言うだけで無く、絵具の特性から平面的表現に適していると考えられますが) 常にこの点にはやはり苦労しています。そうしたことから見てもテンペラ技法によるこの滑らかなグラデーションに、つい眼を凝らして見てしまいます。

*拙い文を読んで頂きありがとうございました


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