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80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (6)

【イタリア・あの愛しい人達に】
ミラノ (5)
 ブレラ美術館には沢山の作品があり、ひとつひとつ見飽きず、いくら時間があっても足らないほどですが……。そうした中でも何故か微笑ましく愛おしいものに、アンブロージョ・ロレンツェッティ(1290年頃〜1348年)の「聖母子」があります。
 ロレンツェッティは、親しみ易く愛すべきシエナ派のひとりで、兄のピエトロ・ロレンツェッティと共に沢山の絵を残してくれています。

「聖母子」
アンブロージョ・ロレンツェッティ

 この絵では最初は表情がつかみにくく、謂わゆる"隈" ( クマ:日本画では立体感や膨らみなどを現す手段のひとつとして、凹んだ部分や奥行きや重なりの下などに、暗みや色変化を施します。光源を元にした陰影法とは異なる表現です) これが濃いめでスムースに絵に入り込めませんでした。
 この聖母子では頬・鼻・あご・ひたい・上瞼・唇の上など凸な部分を残し、“隈”が少し濃いめに残っています。 日本画でも良く似た“隈"を用いることがありますが、暗さとしてはここまで濃く入れることは少ないかも知れません。日本の仏画などでは、暗さでは無く、朱のボカシなどを用い、柔らかさや穏やかさや暖かみのある“隈"で描かれたりしています。私の場合は、下地に淡い墨でクマを入れておいたり、セピアっぽい色や、時にはフレスコ画やテンペラ画のようにやや緑っぽい隈を使うこともあります。そうして平面的な表現ながら微妙な差の“隈"で立体感を補いますが…。

「聖母子」(部分)
アンブロージョ・ロレンツェッティ

 この濃いめの“隈”を乗り越えて、この聖母子を良く見ると、聖母の溢れる暖かさや優しい眼差しが赤児を見つめており、またあどけないキリストの黒い確かな眼差しが、聖母を見つめています。確かな…と言うのは赤児の眼の黒さ白さが比較的はっきりしているからで、聖母のそれは余韻を残すかのようにやや不確かさを持たせることによって、優しくより深い思いを想起させる眼差しになっているのでは…。
(描かれた当初からそうした意図で表現されて  いるのかどうかは分かりませんが?)

 それにしてもこの頃のイタリア絵画 (フレスコ画やテンペラ画 ) は日本画と非常に近いものを感じます。

[追]
昨日、作品写真を整理していたら、随分昔の自作ですが目に付いたので上げてみます。

「微光」(部分)

*拙い文を読んで頂きありがとうございました

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