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80歳夫婦イタリア絵画旅行記(5)

【イタリア・あの愛しい人達に】
ミラノ (4)
 ブレラ美術館にあるマンテーニャ「聖ルカの多翼祭壇画」ではキリストを含め十二人の人物が描かれています。いずれもそれぞれ特徴があって印象的に描かれていますが、下段右端に胸に剣が刺さった聖女?がたいへん愛らしくて目に留まります。 この聖女の場合もマンテーニャの得意な下から見上げる"視点"で描かれており、その描法ゆえの結果としてか、大きなオデコが特徴的で、このオデコがこの聖女の可憐さを特徴付けているかと思います。

「聖ルカの多翼祭壇画」(部分)
アンドレア・マンテーニャ

 私共が主催する写生会では、最前列の方々には床(畳に上敷)に座って写生をして貰っていますので、ポーズによってはモデルさんの顔を見上げて描いて貰うことがしばしばです。そして、実は皆さんオデコが大きくなりがちで……。
 顔を下から見上げた場合、あご裏にそれなりの奥行きや画面上の縦幅が見られ、その分、顔の縦幅(顎からオデコの生え際まで)が真正面の時より短く、そこに眼・鼻・口・オデコなどの要素を描くことになります。オデコの上部は普通は頭頂部へ向かって丸味をおびて斜めになりがちで、見上げた場合は見え難くなり、その分オデコを狭くする必要があるわけですが、これがどうしても皆さん真正面の時の感覚で長く描けてしまいオデコの(縦幅の)大きい顔になりがちです。また正面の顔でなく、このような斜めの場合、センターライン(顎・口・鼻・眼と眼の間、そしてオデコなど)を辿ってみると、髪の毛の「センター分け」の位置は頭頂部への丸味の斜めを考慮して、かなり左寄りになります。オデコの真っ直ぐ上の位置にセンター分けが描かれ気味なことで、オデコがよりせり出してより長く感じられ、その結果(縦幅が長いことで)大きなオデコになるかと思われます。

「聖ルカの多翼祭壇画」 (部分)
アンドレア・マンテーニャ

 マンテーニャのこの絵の場合、敢えてこのように描いて、オデコの大きい特徴ある人物を描きたかったのかもしれません。マンテーニャのマントーヴァの絵でも私が愛おしく思うオデコの綺麗な女性が描かれています。顎裏の奥行きもしっかりあった上での綺麗なオデコの女性像が。
 オデコが大きい女性像はデッサン的な意味よりも、むしろマンテーニャ自身の好みなのかもしれませんね??

*拙い文を読んで頂きありがとうございました

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