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マリリンと僕

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小説『マリリンと僕』をまとめました。
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#役者

マリリンと僕9 ~クリスマスは終わらない~

マリリンと僕9 ~クリスマスは終わらない~

目が覚めた時、時計は昼の12時を回ったところだった。カーテン越しでも外が晴れていて、陽が差しているのがわかる。体は朝方よりはスッキリしていて、頭痛や吐き気も無い。

マリリンのお父さんから誘われたクリスマスパーティは、想像を超える盛大さだった。それはまるで夢のような出来事だったし、戸惑いや緊張を抑える為に大量にワインを飲んだせいで、本当に夢だったんじゃないかと思うくらい実感を伴っていない。

昼過

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マリリンと僕3〜その黒猫は光を運ぶ〜

マリリンと僕3〜その黒猫は光を運ぶ〜

6月は梅雨の時期。

最近では初夏という言葉が失われたかのように、早々と真夏日が訪れる。そこに不快指数100%の湿度が加わると、外を少し歩くだけで体がじっとりと汗ばみ、心まで陰鬱としてしまう。

近所の公園に鮮やかに咲いた紫陽花は、梅雨の時期にあって、鈍色の僕の心に色彩を与えてくれる。雨に濡れることで、より活き活きとして美しく、華やかに咲き誇る。

半年前、僕は役者の夢を諦めることを考えたが、もう

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きっかけはロリータ少女から

きっかけはロリータ少女から

11月も終わりが近づくと、いよいよ吹く風の冷たさは厳しいものに変わる。

深夜に差し掛かる22時過ぎ、レンタルビデオ店でのアルバイトを終えた僕は、自販機で買ったホットコーヒーをダウンジャケットのポケットに入れ、肩をすくめながら自宅近くの公園のベンチに腰を掛けた。

27歳、独身。彼女もいない。
高校卒業後、役者を目指す為に、俳優コースのある専門学校に入学した。

「夢追い人」と言えば格好良いが、特

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