ほんとうのジュリエットからの手紙。#毎週ショートショートnote。
路美夫には悲しい過去があった。
樹里という名前の婚約者がかつていた。
江渡樹里。
名前と苗字を逆にしたらジュリエットやんけって
いつもからかわれているんよ。
あほらしいやろう?
今でも路美夫はその甘ったるい声を時々思い出す。
樹里が、路美夫のもとから大脱走したのは、
去年の今頃だった。
涙も枯れ果てた頃、路美夫に手紙が届く。
助けてほしい。
わたしを探しに来てって、書いてある。
そして次の日も次の日も同じ文面の手紙が
届いた。
釣り道具を持ってきてほしいと哀願されて
いるような文面だったので、小脇にそれを
抱えてそこに一目散に向かった。
現場で路美夫は驚いた。
目を疑った。
その入江には人魚のような樹里がいた。
樹里が人魚になっていたことに
驚いたのではない。
樹里と同じ顔をした樹里が何人もいた。
あの手紙の数だけ樹里はいた。
えっと樹里はどれなんだろうと
路美夫は狼狽えた。
樹里って叫んでみた。
殆どの樹里が返事した。
二度目の悪夢をみているようだった。
(おしまい)。
今週もこちらに挑戦しています!
お題は「ジュリエット釣り」です。
いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊