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好きだった『blue』。ずっと忘れていた。#読書の秋2021

好きだった世界。

一度、出会ったら絶対忘れないって

誓ってもいいよっていうぐらい

心揺さぶられたのに。

月日はながれてゆくうちに。

あの時の思いは、にじんで

消えていったのか。

好きな世界が好きじゃなかったものや

どうでもよかったものに

まざってシャッフルされてゆく。

更新もされてゆく。

魚喃キリコさんの『blue』。

もうずいぶん昔に読んでずっと好きだったのに

今は手元にない。


女子校に通う桐島と遠藤の友情を

越えた恋情をえがいた物語だった。

ところどころ思いだす。

桐島が、「ねえ遠藤」って呼びかけて

なかったっけって。

わたしも女子校でみんな呼び捨てで

苗字で呼ぶのが流行っていたから

そこも懐かしい。

あの青の表紙。

あの青は何色っていうんだろう。

澄み切っていないけどふかめの青。

電話で画像をみせられなくてこの青を

好きなひとに説明する時なんて

いうだろうってふと思った。

そして魚喃キリコさんが描く

コマの中の情報の少なさ。

背景はいつもほとんどなかった。

シンプルな線で描かれた登場人物たちの

フェイスライン。

若さゆえの輪郭。

心はゆれるたびにぶれてゆくはずの

彼女たちの輪郭だけはしっかりと

確かな線で描かれていたと記憶する。

彼女の本と再会したのはこちらの

記事だけど。

そこでラインナップされた本の表紙を

左の下の隅から2番目にみつけて。

あ、『blue』だって懐かしさとか痛さが

蘇って来た。

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そして、魚喃キリコさんの対談の時の言葉が

気になって本棚を探しまくった。

あった。

これは捨ててなかったんだ。

IMG20211031220434文藝

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このマンガ『blue』は魚喃キリコさんの

故郷の高校が舞台になっている。

すこし自伝的なストーリーらしいの

だけれど。

高校を卒業されて5年ぐらい経ってから

記憶を辿るように描かれたと仰っていた。

今の大人の目でみちゃうと、そこにいた
キャラが将来どうなってるかもわかっちゃって
るから、全然不安な感じもないんだけど、
当の本人はこの1年後どうなるかもわかってない。

文藝2005年冬号・藤沢周さんとの対談「私たちの海」より

記憶を描くとはどういうことか?

みたいな話で魚喃キリコさんがこんな

ふうに喋ってる。

じぶんたちはじぶんたちの未来もわからない

ということをリアルに描くためには

目線をおろさないとその不安な感じが全然思いだせなくて
むずかしいですよね。

そしてインタビューの章のタイトルが

「思いだすという仕事」となっていた。

作家も漫画家もただ記憶を引き出す

だけじゃ作品にならないし、切実な

想いは描くことができないことを

語られていた。

懐かしい対談のページをめくっていたら

断然『blue』が読みたくなった。

現在は新装された復刻and新刊バージョンが

でている。

今読んだらどんな気持ちになるんだろう。

むかし読んだ時はカタカナのシットとか

セツナサとかジュンスイって感じに

それぞれ青い色があしらわれている

ような印象があった。

11月は大好きな青に染まっていたい。

雪の匂い 波の匂い 教えてくれた
気配を 耳の後ろで キャッチすることも




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