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心のなかでピースサインをしていた。

今日はなにか書きたいと思えるほど

心のかけたところがみつからない。

わたしにしては珍しい。

いつもどこか欠けているのに。

すごくとかめっちゃとかがつかない

ただただ、幸せな午後のひとときを

過ごしていた。

世界の情勢のニュースからも遠くに

あったせいで、静穏な時間がすぎて

いった。

おだやかという風の中にずっと包まれて

いることだけが続いていけばいいのに

そんな時間をすごしていたから。

書きたいことがみつからない。

書きたいときは、渇望していなければ

書けないのかもしれない。

夜のプラットフォームにいることさえ

居心地がいいと感じたそんな夜。

お昼頃のことを振り返って思い出す。

駅にはどこかの街からやってきた

修学旅行の学生さんたちが大勢いた。

彼らが、楽しそうに写真を撮っていた。

みんなピースサインをしていた。

若い子のピースサインって顔のちかくで

あの指の形をつくるのなって。

そんなことを想いながら待ち合わせ

場所に急いでいた。

待ってくれている人がいることの

安堵さを感じながら喫茶店の階段を

あがる。

外に面している階段を上る時も、

駅付近にいる子供たちの笑い声が

聞こえてきた。

そして、あ、わたしってピースサインを

したことないなって気が付いた。

ジャンケンのチョキはだせるけれど。

わたしはピースサインというものを

生まれてからこの方たぶん、いや

きっとしたことがない。

なんだろうか。

みんなする、ピースサイン。

いつからだろうか?

写真の時のピースサインも

したことがない。

しなよって周りからすすめられて

そのかたくなさが可笑しいよって

笑われてもぜったいしなかった。

っていうか、みんななんでするん?

みたいなところがあって。

仕草に意味をもたせたくないのか。

わけもなく、指に意味をもたせたく

なかったりする。

意味なんてなくてあるのが、この世の

ならわしだから、とかなんとか

アマノジャクのわたしはあることを

思い出していた。

もうずっと前、憧れの人と仕事をする

ことになって

わたしがその方の事務所に訪ねて

行った時。

ふたりで記念写真を撮りましょうと

いうことになった。

彼の事務所のとても無口な新人の男の

方がカメラを構えて撮ってくれた。

スマホとかない時代だった。

その時、隣りに座る憧れのひとが照れ

隠しみたいにピースサインをしてくれた。

ちいさな声で、いぇーいみたいな声が

聞こえた。

失礼ながら、ひゅんと可愛いって思った。

緊張しているわたしをほぐすかの

ように、ちょっとだけみんなに

聞こえるようにいえーいって

言ってくれたことがうれしかった。

いえーいもわたしは言ったことが

ないことに気づいて。

あんなに嫌っていたピースサインだった

けれど。

彼がしてくれた、その仕草はそんなに

嫌いじゃなくなった。

あれからも今もピースサインして

いないけれど。

そうか、今日は平和であることも

忘れているぐらい、ただただ時間が

時間のままに流れていたんだなって

気がついた。

会話に凪が訪れても、そこを

埋めようとお互いすることのない

ひととき。

雰囲気とはその空間のことじゃなくて

人が醸し出す空気がその部屋をまとう

からその空間に雰囲気ができあがるん

だと思う。

そういう意味でわたしのまわりを

漂う空気がとてつもなく好きだった。

あの店は、居心地よかったねって話

ながら。

それは彼女でありお客さんであり

店員の方、お店に集うひとたちが

つくりあげていたのかもしれない

なって思った。

そう、雨上がりの午後から夜にかけて

わたしは心の中でピースサインしたく

なるような。

そんな時間が訪れたていたことを

かみしめたくなっていた。





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