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1月の手帳のページは、いつもどこかよそよそしくて。

今年になって一週間を過ぎた今頃って、手帳とかが、

まだよそよそしい。

ページがまっさらなので、そこにペンで何かを書く

時にすこしばかり緊張してしまう。

白いページの上で、文字が気を遣ってるみたいで。

はじめての物事や、はじめて出会う人にずっと

馴染めないようなところが、こんな手帳にまで

顔をだしてしまう。

繊細とかではないです。

癖っていうか、白いセーターとかも汚しそうで

あまり着ない。

白いセーターを着ているひとは、すごく好きです。

今年の手帳は去年モレスキンの星の王子さま

してから、もろもろラッキーなことがあったので、

引き続きモレスキンの2021年バージョン

してみた。

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不思議の国のアリスにした。

白いページ、白い紙への緊張感って今書いていて

想い出したことがあった。

すこし昔、母があんまりもこもこしすぎて着にくいから

あげるわってキルティングのコートをわたしにくれた。

それを着て仕事に行った小田急線に乗っていた、

帰り道。

指先がかじかんできたので、なにげなくポケットに

手を入れると、指先に紙のようなものが触れた。

短冊をもっと短くしたような分厚そうな紙だと

わかった。

ポケットから手に取ってみると、香水が沁み込ませて

ある、あのお試し用のシート、ムエットだった。

たとえばこんな感じの。

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シャネルではないけれど、そこにはブランド名が記されて、

真っ白いその紙には、<beyond paradise>って文字が

読めた。

鼻に近づけてみると、その香りはとっくに消えていた

けれど。

でも、じっと匂いをたぐっていると、微かに涼し気な

とがった匂いがつんとしてくる。

香水好きの母が、いつか立ち寄った化粧品売り場で

試した残り香だった。

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誰にも気づかれないまま、コートのポケットの中で

香りを放っていたんだなって、想うと親しみが湧いて

きて、あのムエットをしばらくは本の栞代わりにしていた。

どんな本にはさんだままなのか、忘れてしまったので、

まだ行方知らずのままだけど。

あの頃は、その香水の名前を聞いてもぼんやりとしか

イメージできなかったけど。

でも、今ここにそのことを綴っていると、ちょっとだけ

しんみりしてしまう。

こんどいつか、その本のページの間で見つけた時は

そこに漂うことのない<楽園の彼方、天国の香り>って

意味のほんとうの匂いをすごく知りたくなるんだろう

なって思いつつ。

天国に行ってしまった人を想いながら、あの人はたぶん

すてきな匂いを放つ場所で生き生きと生きている

気がしていて。

向こうにいっても、向こうってどこだ。

どこか、はつらつとしていることを想像させてくれて

ちょっとありがとうっていう気持ちに

すごくなっている。

あまり今は寂しくないよって。

想い出しても、やっと涙がでなくなったよって。

香りを想像するって、まだ聞いたことのない声を

想像する時にちょっと似ている。

ぶらんこが 揺れてるせつな あなたが香る
駆け巡る 生まれる前に 知ってたような

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