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青には、あおの理由があって。

冬の手袋を洗った。

ブルーカナールっていう色だと教えてくれた人がいて。

カナールは、フランス語で鴨の意味らしく。

ぱっとみは深緑のようで、そこに青も混じりあって
いるようなそんな色合い。

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雪でも降りそうな空模様の時、なんとなく口のなかで
ぶるーかなーると遊ばせながら、凍えそうな指を何度か
守ってもらった。

鴨は冬の季語でもあるし、なんとなく思い出しては
その色の名前を教えてくれたひとのことも同時に
思い出したりしていた。

色の名前は、遠くに思いを馳せるまなざしみたいに
ふしぎな音をまとってる。

忘れそうになって忘れないように、なんども、口ずさむ
ように覚えていようとしたりして、すこしだけ、
ほかの名称よりも気持ちを注ぎたくなる。

でもなんどもくりかえしてるうちに、ふいになにか
ちがうものへと変化してるように感じることが
あって。

もともとの意味はどこかへ飛んでいってしまって、
ただの音として存在しているような。

そんなことを思っていたある日、アメリカの作曲家、
スティーブ・ライヒがインタビューに答えている言葉
をみつけた。

「同じ言葉を繰り返し聞いていると、おのずと旋律の
形を成してくる。肉体の奥底から洗練とは無縁の
土俗的なリズムも湧き上がってくる」

ブルーカナールも意味を聞いた時はとても、美しい鴨の
姿を想像したけれど。

それを繰り返しているうちに、空気になんども触れて
ゆきながら、いい感じに酸化してるようなそんな響き
に変化している感じがする。

もともとあるべきだった場所にもどってゆく。
そんなぼんやりとした輪郭が、浮かんだり消えそうに
なったりしながら。

ぶるーかなーるの色の名前を教えてくれたあなたの
名前はひとりになるとそっと、呼んでる。

あんまり呼んでると、酸化するから。

すこしずつ、すこしずつ、呼んでは心に蓋をする。

そんなとき、なぜかいつもわたしの前を静かな
青い色が横切ってゆく。

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くちびるが ころんだ音を つれてくる日は
つかのまを 生き延びていた 鳥を想って


 

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