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言葉と言葉が出会う時。#十六夜短歌

君の声に自分の声を重ねてもいいのかな。
隣りに眠る君の呼吸をまねしたいんだ。
秋のこと、夏よりも好きなくせに
夏が去って行って寂しいとか平気で
行ってしまうきみがすきなのだけど。
わたしのハンドルネームだけを知ってる
きみはわたしのほんとうの名前が夏だと
いうことを知らない。


八月がやるせない雨でおわってゆく。
遠い昔訪れていた恵比寿あたりにつく迄
はじめて湾岸線から東京の街を俯瞰した
ことがあった。

ぐるぐるとうずまくような高速道路を
走っていると、身体がいつのまにこんなに
高度な場所へとつれてこられたんだろうと、
栞は時間が後戻りするようなへんな感覚に
取り囲まれていた。
どこがはじまりでどこが出口なのかわからなく
なるような錯覚。

生まれ落ちたのは北の果てだ。
今は地球の果てに住んでいるのだ。
あの高速みたいならせんをじぶんも描いているの
かもしれないなってそっとそのうずまきを栞は重ねて
見る。

ひとはみんなひととして、いろんなちがう人や場所や
ことばとかかわりながら、建造物なんかでは描ききれ
ないぐらいのらせんを描いているのかもしれない。

 


路地裏の猫が歩いているようなアスファルト
あたりに、もし文字が落ちていたらとりあえず
拾うだろう。

栞はそんなタイプのにんげんだ。

そのままコートのポケットの中にすんと入れて
また歩き出す。
昔、子供の頃に友達のお母さんからもらった
キャンディをその場で食べられなくて、とりあえず
ポケットに入れたときのように。

例えば、ぴちゃぴちゃにひしゃげた青と白の
しまもようのてらてらの包み紙が、
いつまでも忘れられないようなところがあって。

そのぐちゃぐちゃになってしまった飴玉が残像として、
そこに居座り続けることが、もしかしたらじぶんに
とってのことばなのかもしれない。

透のことばを時々呑んでしまいたくなる。
透が傷ついたようなことを言うからその言葉を
まるごと呑んでしまいたくなる。
嘘ついたら針千本飲ますってあの詩を聞いた時、
おとなになったら針を呑むだろうと栞はずっと
思っていた。

おとなになってもそんな機会はなかったけど。
今、透のかなしい言葉をぜんぶ呑んでもいいよ
そんな季節をそっと迎えていた。



🌕         🌕         🌕         🌕     

今夜は素敵なこちらの企画に参加しました。十六夜短歌とショートショート
に挑戦してみました。とっても楽しかったです!運営の皆様、企画して頂きありがとうございます✨✨これから短歌作りたい欲が芽生えています!
追伸:短歌なのにすごい破調になっちまいました。57577の約束守れなくてすみません。なんちゃって短歌のようなものになってしまいました。



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