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しゃべるピアノ #ショートショートnote杯。

少し長い奏君の指がまっしろい鍵盤の
上をすべってゆく。

右手の指が忙しく、右に右に移動していた
時だった。

「このまま奏君の指がずっと右にいったまま
帰ってこなければ、曲は終わらないのに」

たしかにそう聞こえた。

鍵盤たちが歌ったみたいに聞こえた。

ほら。

「奏君の指が右に右に行ったまま迷子に
なればみんなで歌っていられるのに」

奏君の指が左に戻りかけて曲が終わりを
つげようとしている時の声だった。

奏君には音階の音しか聞こえないみたい。

ピアノの鍵盤は、白鍵と黒鍵をあわせて
88あるって、いつか奏君が教えてくれた。

誰もいない放課後の音楽室の鍵盤を
ひとつひとつ
押してみた。

どした?

ドの音が言う。

いま忙しいんだけど?

ミの音が言う。

こんちは!

レの音。

ラの音を訪ねてあげて。

ファの音が呟いた。

ラの前に立った。

押してみた。

一番低いラの声だけ聞こえない。

88の鍵盤のうちひとつだけしゃべらない。

迷える子羊のような
ラの鍵盤をわたしは、そっとさすってあげた。


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410字って意外と書けそうで書けないですね。

なにが楽しいってエッセイとちがって、

煮詰まらない所です(笑)

意外にじぶんを解放する形としての

ショートショートってあるのかもしれないと

そんなこと思いました。

今日が〆切なのでもしかしたら後1本ぐらいは

頑張れるかな?

お読みいただきありがとうございました。

健やかなる心のためのショートショートを

書いて行きたいなって思ってます。

世の中を わたる前は ひとりだった
世の中を わたる今は 君を感じた

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