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ひとりでは、気づけなかったことに、気づくしあわせ。

ふたつ並んだ椅子の写真を見ていた。

昔のクウネルが好きで、今でもページを

めくりたくなる。


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表紙の裏に掲載されていたネスカフェ、

ゴールドブレンドの広告だった。

やわらかい木調のダイニングチェア。

でもよくみると、そのふたつはまったく

同じじゃなくて。

ボディコピーを読んでいると、

同じ日にふたりで買ったらしいその椅子。

コーヒーを飲むときはそこに座って。

それを何年も続けて、年月とともに気が

つくとちがう顔をしていた。

そんなことが綴られていた。

こんなふうに。

       ある日、
     気がつくと、
     おなじ日に、
    二人で買った、
    おなじ椅子が、
 ちがう顔をしていた。
コーヒーを飲みながら、
   いつも、いつも、
      腰掛けて
もう何年になるだろう。  

このコピーの下には椅子の

写真が2脚ならんでる。

そしてこのボディコピーの右隣に

椅子と同じように並んでもうひとつ

コピーが綴られている。

椅子だけじゃなくてコピーもふたつ

ならんで。

少し引用すると

まるで
二人の個性が
うつったみたい。
座り心地も
風合いも
微妙にちがう
おなじ椅子。

その写真には誰もひとは出てこないのに、

そこに腰掛けていたふたりのすがたが

目に浮かんでくるような気がする。

椅子の座面のへこみかたが、微妙に

ちがって。

ちがうってことに気づくって、あなたと

わたしだと気づくことだ。

たぶんじぶんじゃないほうの椅子にそっと

座ったとしたら、うっかり誰かの椅子に座っ

てしまったような気がして。

まぎれもなくあの人の椅子なんだなって。

いつも暮らしている誰かの輪郭に触れた

ような気がする瞬間かもしれない。

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誰もいないのに、そこに写っている時間は、

たしかに誰かと誰かの時間。

いつだったか、いつも座っている母の

椅子に座ったことがあった。

タオルケットや座布団が重ねられていて

じぶん仕様の高さになっていた。

同じ椅子だったのに、ちがう椅子に

座っているそんな気持ちになって。

ここからテレビを視たり、ここで新聞を

読んだり、メモをとったり、薬を飲んだり

しているんだなって。

そして時々怒ったりわらったり、

無口になったりしてるんだなって。

いないのにいるなって。

ずっといてよねって思った。

あのネスカフェゴールドブレンドの

広告をながめていたら。

少しだけ物語をつくりたくなって

夏になる前に作ってみた。

この椅子に座っていたかもしれない

ふたりの話です。

だれもそこにはいないのに。

その椅子に座りながら交わされたたくさんの

会話や凪のような時間を想ってはなんとなく

ゆめのように途方に暮れてみたりしながら。

一人じゃ気づけなかったことに気づくって、

もしかしたらかなり幸せなことなんだなって

今頃気づいてます。

椅子ふたつ 振り子が揺れる ゆきつもどりつ
秋の夜の ひとりびとりの 雨打つ窓に


                               ◆ こんなこともやってます

                             💐みなさんありがとうございます💐


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