ビジネス法務のT田さん

弁護士事務所→上場企業の法務部員。高い専門性と大局観を持った法務のエヴァンジェリストを…

ビジネス法務のT田さん

弁護士事務所→上場企業の法務部員。高い専門性と大局観を持った法務のエヴァンジェリストを目指して研鑽中。 出版:「問題社員をめぐるトラブル予防・対応アドバイス」「問題社員をめぐるトラブル予防・対応文例集」。

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最近の記事

取締役会の流れ(新たに事務局になる方に)

4月の人事異動により、新たな業務の担当になった方もいるかもしれません。今回は、取締役会の事務局業務を担当する方向けに、取締役会に関する情報をまとめました。 1 取締役会の役割(1)会社法上求められる取締役会の役割 取締役会は会社法において以下の役割を期待されています(会社362)。 ①重要な業務執行の決定 ②取締役の職務執行の監督 ③代表取締役の選定及び解職  即ち、会社の経営に関する意思決定を行い当該決定に則り会社が運営されているのかをモニタリングするのが取締役会の

    • 法務観点から見た問題社員対応の実務

      先日、コンサルタントの方を対象に上記のセミナーをしましたところ、幸いにも好評でしたので、こちらでも同テーマを投稿します。 第1 問題社員 Q 問題社員とは? A 法務観点からは、雇用契約上の義務に違反する又は義務の履行を十分に果たさない従業員のことを問題社員とします。なぜならば、会社と社員の関係は、雇用契約関係であるためです。 Q 社員の雇用契約上の義務とは? A 雇用契約とは「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えること

      • 【書評】橘玲『幸福の「資本」論』

        橘玲氏の『幸福の「資本」論』を読みました。幸福を資本・資産の観点から考える点が面白いですね。幸福になるためにどうすればいいか、という戦術・戦略を考えられるようになる点で示唆に富みますので、まとめることにしました。このようなご時世ですので、幸福になりたいですし幸福な人が増えてほしいものです。 ■本書の内容1 幸福のための3つの資本 人が幸福を得る手段として、下記の3つの資本が挙げられます。 ①金融資産=現金や不動産など(自由) ②人的資本=個人の能力や働く行為(自己実現)

        • 法務担当のための商標対応の流れ

          前回は下記の記事で商標に関する基礎知識をまとめましたので、今回は当該基礎知識をもって実際にどのように業務を進めていくのかという点を扱います。 事業部にてこのような商品・サービスをこんな名称で始めようとするというところから法務担当における商標出願の検討が始まります。具体的にどのようなことをするのかという点を以下で説明していきます。 なお、下記の記事は文字商標を前提としています。 1 商標登録可否の見通し調査⑴ 申請すべき区分・分類の検討 ①名称とサービス内容の把握 商標は

        取締役会の流れ(新たに事務局になる方に)

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        • M&A、IPO実務を学ぶ
          4本
        • 働き方と法務
          12本
        • 改正会社法を学ぶ
          10本
        • HRデータ利活用と個人情報保護
          8本
        • デジタルトランスアクション(DX)をどう実現するか
          5本
        • ファイナンス法を学ぶ
          6本

        記事

          法務担当のための商標権超基礎知識

          昨年転職をしてから、日々の法務業務に加え内部統制機能の構築も担当しており、商標運用をちゃんと法務でやっていくように運用変更をしようとしていっています。如何に対応していくべきかという点の前提として商標に関する法的基礎知識をまとめています。 なお、実務の運用については別記事(下記)でまとめました。 1 商標と商標権⑴ 商標について商標とは、事業者が自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)をいいます。 商標の機能は、いわゆ

          法務担当のための商標権超基礎知識

          ざっくりまとめる金融商品取引法~インサイダー取引規制~

          上場企業や上場を目指している会社で株式を取り扱う以上避けられないが、正直分かりづらくてきついのが金融商品取引法。証券会社等の社員でなく、一般企業の法務パーソンが関わり押さえておくべき点は絞られているところ、その点を自分の脳内の整理のためにもまとめておきたいと思いましたので投稿していくことにしました。 今回はインサイダー取引規制を扱います。 同じく苦労されている方の参考になりましたら幸いです。 1 概要インサイダー取引規制は、①会社の重要情報に関するインサイダー取引規制と②T

          ざっくりまとめる金融商品取引法~インサイダー取引規制~

          ざっくりまとめ金融商品取引法~発行開示規制~

          上場企業や上場を目指している会社で株式を取り扱う以上避けられないが、正直分かりづらくてきついのが金融商品取引法。証券会社等の社員でなく、一般企業の法務パーソンが関わり押さえておくべき点は絞られているところ、その点を自分の脳内の整理のためにもまとめておきたいと思いましたので投稿していくことにしました。 今回は発行開示規制を扱います。 同じく苦労されている方の参考になりましたら幸いです。 1 発行開示規制とは発行開示規制について内容を端的に申し上げますと、「有価証券の募集」「有

          ざっくりまとめ金融商品取引法~発行開示規制~

          サービス検討担当の法務部員が最低限押さえておきたい管理会計

          法務パーソンは、会社で新サービスの検討等について伴走を担当することも多いかと思います。それにあたって、事業担当者と会話するにあたり法的知識だけでなく、管理会計の知識も持っておいた方がよいでしょう。 個人的に特に知っておいた方がよいと思う内容についてまとめておこうと思います。 1 固定費、変動費まず固定費と変動費を紹介します。 ①固定費:売上の増減にかかわらず発生する一定額の費用  …家賃・地代、減価償却費、水道光熱費等が一般に該当します。 ②変動費:売上の増減によって変動

          サービス検討担当の法務部員が最低限押さえておきたい管理会計

          ざっくりまとめる労務デューデリジェンス~労務DDの流れ~

          経営者の高齢化が進む中で、後継者不足の解決の一つとしてM&Aが注目を集めており、法務部員がM&Aに詳しくなる必要性は高まっていくだろうと感じております。M&Aの意思決定においてデューデリジェンスは大きな影響を与えますので、今回は労務DDについてまとめてみることにいたしました。 労務DD自体は、社会保険労務士等の社外の専門家に依頼して実施していただくことがほとんどでしょうが、それが適切に実施されるためにも社内の人間が全体像とポイントを押さえておくのがよいと考えています。 【労

          ざっくりまとめる労務デューデリジェンス~労務DDの流れ~

          webサービス利用規約作成後のチェックポイント

          前回の記事(下記)ではwebサービス利用規約作成に当たっての注意点をまとめました。そこで今回は、利用規約が作成された後に外に出してよいものになっているか確認するにあたってチェックポイントについて記事にしました。時間のない中、利用規約作成・レビュー対応に追われる法務部員や弁護士の方の参考になりましたら幸いです。 ■規約を確認する前に  □ サービス内容の概要とその仕様   □ 当該サービスが仕様として法規制に引っかからないか(※)    →そのおそれがある場合(サービススキー

          webサービス利用規約作成後のチェックポイント

          webサービスの利用規約の作り方の注意点

          最近、自社サービスの利用規約の確認や作成の案件が大量発生し、効率的に対応するためにチェックポイントや注意事項をまとめていたので、Noteでも共有することにしました。同じように利用規約対応をしている方の一助になると嬉しいです。 ■サービスの設計について【法規制】 ・サービスには様々な法規制があるのでそれにひっかからないようにしなければならない。どのような規制がないかを確認する必要がある。 ・重要なのは検討から漏れにくいが、サービス内でクローズチャットがある場合に電気通信事業者

          webサービスの利用規約の作り方の注意点

          【余談】インデックス投資信託を約1年積み立てていった結果

          今年の1月に下記の記事を紹介しましたが、今回は投信積立を大幅に増やしてから約1年が経ったので、その結果を共有してみようと思い記事を投稿してみることにしました。同じように積立投資をしていっている方の参考になりましたら幸いです。 1 投資方針上記の記事の要約のようなものになりますが、どんな方針で投資をしているのかという点をまずは前提として説明したいと思います。 (1)投資の原資について【軍資金=収入-支出】 会社員ですので収入のほとんどが給与になります。たまに印税(※1)が入

          【余談】インデックス投資信託を約1年積み立てていった結果

          会社が派遣社員さんから妊娠の報告を受けたらどうしなければならないか

          近年の案件対応の中で、派遣社員さんの産休・育休等についてはあまり知られていないのかなと思い、Noteでもまとめました。皆が正しく知識を持って無用な争いにならず子供を産み育てやすい労働市場になっていってほしいものです。 そこで派遣社員さんは妊娠した場合に産休や育休はとれるのか、派遣先に母性保護措置等に派遣先は対応しなければならないのかといった点です。また、別の方に交代させられないのかといった点について整理します。 1 派遣社員さんと産前産後休業派遣社員さんは産前産後休業を取

          会社が派遣社員さんから妊娠の報告を受けたらどうしなければならないか

          業務委託契約書レビューのポイント

          法務部員がレビューする契約書で多いのが業務委託契約書であるため、今回は業務委託契約書についてポイントをまとめてみることにしました。 過去の記事でマインドマップ化しましたが今回は、文章でまとめました。 1 業務委託契約のポイント業務委託契約は、委託者がある業務を自己に代わって受託者に行なってもらいそれに対する対価を支払う契約です。そのため、業務委託契約の骨子は、業務の履行と対価の支払いがどうなっているかであり、契約書上ではこの点が重要な内容となります。 2 業務の履行に関す

          業務委託契約書レビューのポイント

          M&A戦略で重要な3つの要素

          木俣先生の下記の本を読みました。大変良著でM&Aを考えるエッセンスがつまっていたのでこれだけは押さえておこうと思う内容を整理いたしました。 1 M&A戦略とはM&A戦略とは「経営戦略を実現するためどのようにM&Aを活用するかを定めた基本方針」のことをいいます。M&Aの成功確率は30~50%程度といわれており、これは逆に見れば半分以上のM&Aは失敗しているということになります。M&Aは経営戦略実現の手段であるところ、M&Aを失敗にさせないように戦略的に行うことが重要になります

          M&A戦略で重要な3つの要素

          IPO対応実務の流れ

          先週下記の2冊を読み、その内容を備忘のためにまとめたのでNoteにも投稿することにしました。 第1 IPO対応実務の概要 IPO実務においては、時間的な点から①意思決定期間②直前前期、直前期③申請期の3つに分けられ、それぞれの時期において中心的に対応しなければならない内容が下記のように分けられます。 1 意思決定期間 この時期はIPO申請を実施すべきかをまず検討するフェーズになります。この時期に、IPOをしてどうなりたいのかという点やまたそもそもの現実味を確認することにな

          IPO対応実務の流れ