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取締役会の流れ(新たに事務局になる方に)

4月の人事異動により、新たな業務の担当になった方もいるかもしれません。今回は、取締役会の事務局業務を担当する方向けに、取締役会に関する情報をまとめました。

1 取締役会の役割

(1)会社法上求められる取締役会の役割

取締役会は会社法において以下の役割を期待されています(会社362)。
①重要な業務執行の決定
②取締役の職務執行の監督
③代表取締役の選定及び解職
 即ち、会社の経営に関する意思決定を行い当該決定に則り会社が運営されているのかをモニタリングするのが取締役会の役割であるといえます

(2)コーポレートガバナンスコードで求められる取締役会の役割

コーポレートガバナンスコードでは、取締役会が会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上の要となると捉えており、下記の3つの役割を果たすべきとしております(基本原則4)。上場企業及び上場準備企業においては、下記の役割をいかに果たすかという観点から取締役会を設計しなければなりません。
①企業戦略等の大きな方向性を示すこと
②経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境を整備すること
③独立した客観的立場から経営陣・取締役員に対する実効性の高い監督を行うこと

(3)小括

上記のように取締役会は、会社の命運を左右するような重要な決議が行われる場です。取締役会が適正に運営されることは、コーポレートガバナンスのおける核心の一つであり、企業価値の向上を支える重大な要素となります。
 

2 取締役会の流れ

取締役会は、一般に①取締役会の招集→②取締役会の開催→③取締役会議事録の作成・保存という流れで運営されます。詳細については、「第2 取締役会の運営」で扱いますので、ここでは大筋の流れを下記で押さえましょう。

(1)取締役会の招集

取締役会の開催のために、各役員に対し、取締役会の3日前までに以下の内容を記載した招集通知を発信して取締役会を招集します。
・開催日時
・開催場所
・議題(報告事項及び決議事項)
※招集にあたり、開催日時と場所の記載があれば会社法上は問題ありませんが、実効的な議事のために、議題を記載しその説明資料を添付するのが一般的です。
※※取締役会の招集通知の通知方法は、特に限定されていません。簡便さからメール等の電磁的な方法が多用されます。

上場企業・上場準備企業においては、取締役会は少なくとも月1回は実開催をしなければなりません。また、取締役の一部に対する招集通知を欠く場合は、原則として取締役会決議が無効となります。

(2) 取締役会の開催

招集の後、当日を迎えたら取締役会を開催することになります。開催にあたり、まずは取締役会を開催できるか、以下の2点を確認します。
・役員出席状況(取締役の過半数が出席していなければ決議要件を満たしません。)
・ウェブ参加の役員がいる場合、当該役員と円滑な意思疎通ができる状況であること

上記2点が無事確認されましたら、議長が開催を宣して取締役会を始めます。各議案について、報告又は決議を行い、全議案を終えたら終了です。なお、決議は議決権を持つ出席取締役の過半数の賛成をもってなされます。
※議事録作成のために、事務局では取締役会の間にその内容を記録する必要があります。
※決議事項:取締役会において決議が必要な事項(会社369)
 報告事項:取締役会に報告するのみで足りる事項(会社372)

(3) 取締役会議事録の作成、保存

取締役会の議事について以下の内容が記載された議事録を作成し(施行規則101)、当該議事録に出席役員の署名又は記名押印をいただきます(会社369)。
・取締役会が開催された日時、場所
・議事の経過と結果(特別な利害関係がある取締役がいるときは、その取締役の氏名)
・出席役員の氏名
・議長の氏名

なお、押印においては、取締役会議事録が登記手続きの提出資料になる場合があることから下記の整理で押印する運用にされている企業様が多いようです。
・代表取締役(1名):会社実印
・その他役員:個人認印
 当該取締役会議事録を変更登記手続きに使用する場合には、会社の実印が押されている必要があり、その押印がされていれば他の印鑑は実印である必要がない(商登規則61)。

そして作成を終えた議事録は、取締役会の日から10年間、会社本店で保存しておかねばなりません(会社371)。
※保存された取締役会議事録は、株主や債権者等による閲覧や謄写(コピー等)請求の対象となります(会社371)。
 

3 取締役会の流れ(イレギュラー)

取締役会における報告・決議は一定の条件を満たすことで書面実施による省略が可能となります。急遽報告又は決定すべき問題が生じたが、全員とスケジュールを調整している時間がない/結果、実施が先になりすぎてしまうといった場合に行われます。

(1)書面による決議(みなし決議)

【みなし決議の要件】
取締役会の決議事項について、以下の条件をいずれも満たす場合には、取締役会が開催されていなくとも取締役会決議がなされたものとみなされます(会社370)。
・みなし決議可能な旨の定款の定めがあること
・提案に対する取締役全員の書面又は電磁的記録による同意(口頭同意は不可)
・監査役の異議がないこと

【議事録の作成】
上記の要件を満たしみなし決議が成立したら、下記の事項を記載した議事録を作成します。みなし決議は、決議をしたとみなすものなので、議事録の作成が省略されるものではありません。
・取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
・提案をした取締役の氏名
・取締役会の決議があったものとみなされた日
・議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名 

(2)書面による報告(報告の省略)

【省略の要件】
取締役会での取締役の報告について、取締役・監査役全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、報告を省略することができます(会社372)。
※定款の定めや監査役の異議がないことは求められません。

【議事録の作成】
報告を省略した場合にも、取締役会議事録の作成は必要であり、以下の事項を記載しなければなりません(施行規則101)。
・取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
・取締役会への報告を要しないものとされた日
・議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

補足:参考文献


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