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ざっくりまとめ金融商品取引法~発行開示規制~

上場企業や上場を目指している会社で株式を取り扱う以上避けられないが、正直分かりづらくてきついのが金融商品取引法。証券会社等の社員でなく、一般企業の法務パーソンが関わり押さえておくべき点は絞られているところ、その点を自分の脳内の整理のためにもまとめておきたいと思いましたので投稿していくことにしました。
今回は発行開示規制を扱います。
同じく苦労されている方の参考になりましたら幸いです。

1 発行開示規制とは

発行開示規制について内容を端的に申し上げますと、「有価証券の募集」「有価証券の売り出し」をするには有価証券届出書を提出をしなければならない、というものになります。これは、有価証券の流通を円滑にするためには企業内容等を適切に開示する必要があるという趣旨による制度です。
「有価証券の募集」「有価証券の売り出し」をするには有価証券届出書を提出をしなければならない、というものなので「有価証券の募集」「有価証券の売り出し」かどうかを見極められるようになることが法務パーソンにとっての重要ポイントになります。

2 有価証券の募集とは

(1)有価証券の募集とは

有価証券の「募集」は、多数の一般投資家がその有価証券を取得する可能性がある行為で、その有価証券を初めて発行する場合に対応するものになります。なお、既に発行された有価証券の譲渡の場合には、有価証券の「売り出し」になります。

(2)「募集」に該当するか

ア 継続開示義務がある場合

継続開示義務とは、有価証券報告書の提出義務があることをいいます。継続開示義務がある場合、その発生原因となった株式について募集行為を行う限り、金商法上の有価証券の募集に該当します。
そのため、勤務先や相談元が上場企業の方においては、株式について募集行為を行うとした場合、金商法上の有価証券の募集として有価証券届出書の提出が必要になるだろうとアラートを立てる必要があります。

イ 継続開示義務がない場合

継続開示義務がない場合には、まず勧誘の相手が50人以上を確認しましょう。50人未満であれば「少人数私募」として「募集」に該当しないと判断されます。また、50人以上であっても相手方が金融機関や適格投資家等一定の要件を満たす投資家のみの場合「プロ私募」として「募集」に該当しないと判断されます。
もっとも、「プロ私募」が実際に行われることは稀ですので、まずは継続開示義務の有無と勧誘の相手方が50人以上かという点を確認することが重要になります。

3 有価証券の「売出し」とは

(1)有価証券の売出しとは

有価証券の「売出し」は、多数の一般投資家がその有価証券を取得する可能性がある行為で、既に発行された有価証券の譲渡の場合になります。

(2)「売出し」に該当するか

有価証券の「売出し」と「募集」の違いは、既に発行された有価証券か、新たに発行する有価証券かという点になります。
そのため、募集と同様に継続開示義務の有無と勧誘相手が50人以上かという点が重要なポイントになります。
他方で「売出し」は、既に発行された有価証券に関するものであることから、募集にない例外が定められています(金商法施行令1条の7の3)。
上記の例外は複数ありますが、重要なものは、証券市場での取引である場合と発行関係者以外との取引である場合になります。これらの場合には「売出し」に該当しないことになります。

3 有価証券届出書の提出

(1)有価証券届出書の提出義務

有価証券の「募集」又は「売出し」に該当する場合には、原則として有価証券届出書を提出しなければなりません。
例外として、①役員・従業員への譲渡禁止ストックオプションの付与の場合②発行価額が1億円未満の場合には、有価証券届出書の提出は不要となります。もっとも、発行価額が1億円未満であっても1千万円以上には有価証券通知書の提出義務が生じます点には注意が必要です。

(2)有価証券届出書の提出義務化に伴う効果

有価証券届出書の提出義務を負ったことの効果として、以下の3つの効果が生じます。届出書を提出して終わりというものでない点も押さえて実務フローをしっかりと組んでおく必要があります。
・勧誘規制と待機期間
・目論見書の作成・交付義務
・継続開示義務

金商法の発行開示規制の概要について以上のようにまとめてみました。お役に立つ点が少しでもありましたら嬉しいです。



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