DXとマーケティングその11:DX実行のプロセスとマーケティングのプロセス

分析屋の下滝です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とマーケティングの関係を考えてくシリーズの第11回目です。今回は、DXの実行プロセスとマーケティングのプロセスを見比べていきます。焦点は、DXとマーケティングのプロセスがどのように関わり合うのか、を確かめることです。DXのプロセスにマーケティングのプロセスが(部分的に)含まれるのか、あるいは、その逆なのかどうか。

第1回はこちら。経産省のDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第2回はこちら。『DX実行戦略』におけるDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第3回はこちら。「無料/超低価格」のビジネスモデルを分析しました。
第4回はこちら。「購入者集約」のビジネスモデルを分析しました。
第5回はこちら。「価格透明性」のビジネスモデルを分析しました。
第6回はこちら。「リバースオークション」のビジネスモデルを分析しました。
第7回はこちら。ここまでの記事をまとめました。
第8回はこちら。「従量課金制」のビジネスモデルを分析しました。
第9回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍におけるマーケティング定義を確認しました。
第10回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍で紹介させている「戦略的コンセプト」をDXの視点から関係性を見ました。

マーケティングプロセス

まずは、マーケティングにおけるプロセスの例を見ていきます。次に、『DX実行戦略』で提案されているDXのプロセスを見ていき、最後に両者の関係性を考察します。

ここでは例として『コトラーの戦略的マーケティング』で紹介されているプロセスを見ていきます。この書籍では、次のようなプロセスが、マーケティングマネジメントプロセスとして紹介されています。

R → STP → MM → I → C

・R(調査、市場調査)
・STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)
・MM(マーケティングミックス。一般には4Pとして知られているもの。つまり、製品、価格、流通チャネル、プロモーション)
・I(実施)
・C(コントロール。フィードバック、結果の評価、STP戦略とMM戦術の見直し、もしくは改善)

コトラーは次のように解説しています。

効果的なマーケティングは調査(R)から始まる。市場調査によって、同じニーズをもつ消費者からなるさまざまなセグメント(S)が明らかになる。そのなかで、自社がうまく満足させられるセグメントのみをターゲット(T)とするやり方が、賢明といえるだろう。
企業は、それぞれのターゲット・セグメントの顧客に対して、自社のオファーを他社よりも高く評価してもらえるよう、そのオファーを巧みにポジショニング(P)しなければならない。またSTPは、企業の戦略的マーケティング思考を体現している。
次に行われるのは、戦術的マーケティング・ミックス(MM)の策定である。これは、製品、価格、流通チャネルおよびプロモーションに関する決定からなる。その後、そのマーケティング・ミックスが実施(I)される。最後に、結果をモニターし、評価し、さらにSTP戦略とMM戦術を改善するための管理基準が用いられる(C)。
──『コトラーの戦略的マーケティング』, コトラー, pp.46-47

「Rから始まる」という点が着目点かもしれません。次の節では、DXの実行プロセスを見ていきますが、そこでは、事業ごとに対応戦略を決めるための状況を把握することからスタートします。

また、プロセスとしてのRのアウトプットは「同じニーズをもつ消費者からなるさまざまなセグメント(S)が明らかにする」ことであると分かります。

ここではRとSの説明をもう少し見てみます。

調査はマーケティングの出発点である。調査せずに市場参入を試みるのは、目が見えないのに市場に参入しようとするようなものだ。
(中略)
この例が示すように、よいマーケティングというのは、市場機会についての慎重な調査と、期待収益が企業の財務目標に合致するかどうかを示す戦略提案に基づいた財務上の試算を備えているものである。
企業は、調査することによって、購買者のニーズや理解の仕方、および好みが市場によって違うことを知ることができる。女性にとって必要な靴は、男性用とは違う。太った人に必要な靴は、やせた人と同じではない。上流階級相手のし上に参入する時は、所得や教育、趣味の違いから、好みの幅はいっそう拡大するだろう。
調査の結果、いくつかの顧客セグメントが明らかになったら、経営者はどのセグメントを攻めるかを決定しなければならない。自社の強みが真価を発揮できるセグメントに狙いを定めるべきである。個々のセグメントを攻めるうえで必要な要件と自社の能力を検討することで、企業はより賢明な選択をおこなうことができる。
──『コトラーの戦略的マーケティング』, コトラー, pp.48-49

ここでは、単純に調査のアウトプットは顧客セグメントであり、そこから残りのプロセスが行われる、とだけ理解しておきます。

なお、「マーケティングプロセス」ではなく「マーケティングマネジメントプロセス」と冒頭では紹介しました。実は、本書では後の章に「マーケティングプランニングプロセス」という視点でマーケティングを解説している箇所があります。

マーケティングが戦略的かつ戦術的に優れていたとしても(本書の第I部と第II部を参照)、マーケティングの管理がうまくいかなければ、失敗することがある。マーケティング管理とは、適切なマーケティング・プランを準備し、かつ実行できる能力を有することである。
すべての戦略と戦術は、マーケティング・プラン上で統合され、マーケティング組織の手で効果的に実行されなければならない。本章では、マーケティング・プランニングとマーケティング組織を見ていきたい。
──『コトラーの戦略的マーケティング』, コトラー, p.266

「すべての戦略と戦術は、マーケティング・プラン上で統合され」とあるため、マーケティング・プランとは、マーケティングマネジメントプロセスより上位の決定であると理解して良いのかもしれません。コトラーによれば、マーケティング・プランに最低限含まれるものは以下になります。
・状況分析
・マーケティングの目的と目標
・マーケティング戦略
・マーケティング活動プラン
・マーケティング・コントロール
これらに関しての詳細は次回以降の記事で見ていきたいと思いますが、ひとまず、「調査」といったマーケティングマネジメントプロセスよりも上位のことが設定される、と解釈できそうです。

では、これらを踏まえて、『DX実行戦略』でのDXのプロセスを見ていきます。今回詳細を検討しなかったマーケティング・プランニングの方が対応としては近いのかもしれません。

DX実行のプロセス

『DX実行戦略』では、まずは、「変革目標」と「変革理念」を設定することが提案されています。

事業ごとに「変革目標」を設定する。
・対応戦略を決める
・カスタマーバリューを決める
・ビジネスモデルを決める

企業全体の「変革理念」を設定する。

変革目標の設定

まずは「変革目標」を設定します。変革目標の役割は以下となります。

事実、変革プログラムの多くが、曖昧な理念や極秘のプロジェクトによるものだ。あるいは、ある実践者が言うところの、実現化を目指したでたらめな行動が貧弱に結びついたもの。いずれも、寄せ集めのプログラムにすぎず、誰もが「変革」を自分なりの定義し、どうすれば自分好みの結果になるかを好き勝手に決めている。
おまけに、あまりにも多く変革が「カスタマーバリュー創出」や「ビジネスモデル」「対応戦略」と無関係におこなわれている。私たちは、これら3つの要素すべて合わせたものを「変革目標(guiding objectives)」と呼ぶ。変革目標とは、明確に述べられた一連の目標のことで、変革プログラムを効果的に実行するための出発点となる。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.68

『DX実行戦略』でのDXでは、ビジネスモデルを決めるのは、カスタマーバリューを提供するためです。企業がどのようなカスタマーバリューを追い求めるのかは、どの対応戦略(収穫戦略・撤退戦略・破壊戦略・拠点戦略)をとるのかで決まります。対応戦略の位置づけは以下です。

既存企業はバリューバンパイアやディスラプターにどう対応すべきだろうか。どうすれば、デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを利用して競争優位を確立し、自らディスラプターになれるだろうか。そのためには、カスタマーバリュー創出やビジネスモデルの構築に加えて、変革目標の第3の要素が必要となる。それが「対応戦略」だ。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.78

どの対応戦略を優先するのかは、『DX実行戦略』では以下のような20の質問からなるシートを使うことが参考になるとしています。各戦略での質問に「はい」か「いいえ」答えた結果、「はい」最もが多いものが有力な戦略です。なお、この作業は事業ごとに行います。現実的には、有力な戦略一つだけというよりも防衛的戦略(収穫と撤退)と攻撃的戦略(破壊と拠点)をバランスよく混ぜた「ポートフォリオ型アプローチ」がとられます。

<収穫戦略>
・この事業はディスラプターからの異常な市場圧力にさらされているか?
・「バリューバンパイア」が市場に存在しているか?
・デジタル化による効率向上やコスト削減で競争力を保ち、利益を維持もしくは増大できるか?
・ディスラプターをブロックできるか?(訴訟や積極的な対抗マーケティングなどで)
・収益が減っても少なくともあと2年間は、この市場はあなたの会社にとって旨みがあるか?
<撤退戦略>
・この事業は「変曲点」を通過しており、もはや資本利益率は魅力的ではないか?
・小規模だが利益をあげられるニッチな(ディスラプターが興味を持たない)市場で、特殊な顧客を対象にして今後二年間は事業を維持できるか?
・損失を出したとしても、他部門との相乗効果でこの事業を継続する旨みを出せるか?(目玉商品として売ることで顧客を囲い込むなど)
・他部門に移せば、利益に貢献できそうな資産や知的財産、プロセス、人材を持っている事業か?
・あまり大きな費用をかけずにこの事業から離脱、もしくは売却できるか?
<破壊戦略>
・デジタル技術やデジタル・ビジネスモデルを使って、この事業のカスタマーバリューを劇的に改善できるか?
・従来のバリューチェーンを使わずに、バリューを一からつくり直すことはできるか?
・「バリューベイカンシー」があることに気づいているか?
・この業界のマージンは大きか?(ジョブ・べゾフ風に言えば「あなたのマージンは私のチャンス」)
・新市場を形成する、あるいは隣接市場に参入することで、既存の製品やサービスもしくは能力を利用できるか?
<拠点戦略>
・あなたの会社にとって魅力的な市場は、すでにライバルによって破壊されてしまったか?
・あなたがターゲットにできる堅実な「バリューベイカンシー」はあるか?
・長期にわたり市場リーダーの地位を獲得できる道筋はあるか?
・(他社ではなく)あなたの会社がディスラプションを起こしたら、製品やサービスを変更する、もしくは激化した競争に対応するために経営にてこ入れする必要があるか?
・「バリューベイカンシー」を破壊して競争勢力図を一変させてしまうような「次の」ディスラプションはあるか?

戦略ごとに、追い求めるカスタマーバリューの種類が決まります。
コストバリュー      収穫:○ 撤退:○ 破壊:△ 拠点:○
エクスペリエンスバリュー 収穫:○ 撤退:○ 破壊:○ 拠点:○
プラットフォームバリュー 収穫:  撤退:  破壊:○ 拠点:○

カスタマーバリューが決まったのなら、ビジネスモデルを考える必要があります。ビジネスモデルに関しては、ディスラプターが使う15のビジネスモデルが参考になるとしています。

変革目標の例として、自転車製造・販売会社であるバイクコーの部品事業が設定した変革目標は以下となります。

カスタマーバリュー創出──プラットフォームバリューを創出して、組み合わせ型のディスラプションを起こす。顧客とサプライヤー、小売業者をデジタルマーケットプレイスのビジネスモデルでつなぐことで、参加者全員のバリューを創出する。プラットフォームの力によって、他のカスタマーバリューも強化することができる。この組み合わせ型ディスラプションが業界を揺るがし、バイクコーはふたたび業界の中心的存在に返り咲けるだろう。バイクコーSHIFTは、最終顧客が負担するコストを低減させ(コストバリュー)、さらなる選択肢と、買い手と売り手が部品を調達できる新たなチャネルを創出する。(エクスペリエンスバリュー)
対応戦略──破壊戦略。既存企業であるのにもかかわらず、バイクコーは、デジタル技術とデジタル・マーケットプレイスのビジネスモデルを組み合わせて、会社のエコシステムを活用できる自転車用部品販売の斬新なアプローチを創出した。これは破壊戦略だ。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.116

変革理念

変革目標は、事業ごとに設定しますが、企業全体の変革に関しては、「変革理念」というものを設定することが提案されています。変革目標と関係はしますが、区別されるものです。

変革理念は、企業全体の変革目標のアウトラインを定めた声明だ。この理念は、企業内の全部署、全事業の変革目標が持つ戦略的意図を集約し、変革に向けた目標をひとつにまとめることで足並みをそろえた実行を可能にする。変革理念は、曖昧な「(社内向けの)綱領」でも「(社外向けの)ブランドを通じた約束」でもない。未来における特定の時点(基本的には数年後)に自社の競争力をどう変化させたいのかを表すものだ。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.105

変革理念の例としてはシスコのものが挙げられています。

2020年までに、収益の40%を反復可能性の高い(サブスクリプションベースの)収益源から、同じく40%をソフトウェア事業から得るという未来像を表している。

すぐれた変革理念に共通する特徴をして、PRISMを上げています。
・正確(Precise)
・現実的(Realistic)
・包括的(Inclusive)
・簡潔(Succinct)
・測定可能(Measurable)

バイクコーの場合は、「25年までに4つで50」というものであり、「2025年までに、4つの事業分野のすべてで、デジタルチャネルから収益の50%を得る」というものです。

実行のフレームワーク

組織をオーケストラとしてイメージすることで理解がしやすくなるとしています。『DX実行戦略』では、オーケストレートという言葉を「望みどおりの効果を得るために、リソースを動員し、機能させること」を定義しています。

ここまで見てきた「変革目標」と「変革理念」も、交響曲の演奏で例えています。変革目標は、交響曲の楽章に該当します。これらをすべて集めると、企業が演奏しようとする交響曲(変革理念)となります。

このイメージをもとにしたフレームワークを「トランスフォーメーション・オーケストラ」としています。オーケストラは8つの楽器で構成され、楽器は、組織内の8つの要素に対応します。楽器は、部門や部署とイコールではありません。

「楽器」は、組織リソースを合理的に分類したものだ。各楽器は、新しい製品やサービスの立ち上げや、デジタルによる新たな顧客体験の提供、企業文化の変革といった特定の仕事を実現するために連携する。変革に取り組むには、組織内のいたるところにあるリソース(楽器)をオーケストレートしなければならない。楽器は、部門や部署とイコールではないことに注意して欲しい。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.121

楽器は、次の8つです。各楽器は、3つのセクションのどれかに含まれます。
<市場開拓セクション>
1.製品・サービス(あなたの会社が売る製品やサービス)
2.チャネル(製品やサービスを顧客に届ける方法、市場までの道筋)
<エンゲージメントセクション>
3.顧客エンゲージメント(顧客とどうかかわっているか)
4.提携業者エンゲージメント(提携業者のエコシステムとどうかかわっているか)
5.ワークフォース・エンゲージメント(従業員や契約スタッフとどうかかわっているか)
<組織セクション>
6.組織構造(事業部門やチーム、命令系統、プロフィットセンター、コストセンターの構造)
7.インセンティブ(従業員のパフォーマンスやふるまいがどう報奨されるか)
8.文化(会社の価値観や態度、信念、習慣)

各楽器はさらに、「人」「データ」「インフラ」3つの種類からなります。

「楽器」は、事業上の成果をあげるために団結した組織リソースの集合であり、変革を実行するために活用されなければならない。組織リソースには、「人」「データ」「インフラ」の3種類はある。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.121

それぞれの説明を引用します。まずは人です。

「人」は、変革の実行に必要な個人とチームを指す。製品やサービスに変革をもたらすには、研究開発やマーケティング、製造、経理、(製品やサービスをサポートする)サービス、流通などに従事する人々を使わなければならないかもしれない。「人」は皆、製品やサービスの変革と関係する成果をあげるために活用される(もしくは活用できる)。必要な「人」は、ある特定のサイロではなく、組織のいたるところに存在している。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, pp.130-131

ここでは「マーケティング」という言葉が出てきたことに注意が必要かもしれません。

続いてデータです。

「データ」は、変革に必要な情報を指す。バイクコーのような企業がプラットフォームの世界に飛び込み、オンライン取引で最終顧客と提携業者をつなごうと思ったら、会社のあちこちからかき集めなければならない情報が山ほどあるはずだ。プラットフォームを利用することになるエコシステムからの情報も集めなければならないだろう。こうした情報には、顧客や提携業者、価格、製品パフォーマンス、競合他社の製品やサービスのデータ、関連するシステム(取引エンジンやウェブサーバーなど)のリアルタイムデータ、サプライチェーン上で発生するデータなど、多くものが含まれる。ここでも、必要な「データ」は、特定のサイロではなく、組織のいたるところに存在している。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.131

最後にインフラです。

「インフラ」は、変革の実行に必要なものすべてであり、あなたが足の指をぶつけられるような具体的な「モノ」を指す。施設(オフィスや倉庫、コンタクトセンターなど)や資本設備(工場や社用車、機械など)、とりわけIT資産(コンピューターやモバイル機器、データセンターなどのハードウェア)がこれに含まれる。ここでもやはり、必要な「インフラ」は、特定のサイロではなく、組織のいたる所ところに存在している。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.131

なお、『DX実行戦略』では、各楽器に関して、「人」「データ」「インフラ」をさらに詳しく紹介してくれています。

『DX実行戦略』では、さらに具体的に、DXを実行していくための考え方が紹介されていますが、そこに関しては次回以降の記事で見ていきたいと思います。

DXのためのプロセスとマーケティングのプロセス

マーケティングプロセスにおける調査(R)は「同じニーズをもつ消費者からなるさまざまなセグメント(S)が明らかにする」ということでした。

『DX実行戦略』では、事業ごとに「変革目標」を設定しました。一つは、「対応戦略」です。「対応戦略」を決めるための質問に答えるには、もしかすると「調査」に当たるような活動が必要かもしれません。しかし、「変革目標」を設定するのは、「変革プログラムを効果的に実行するため」であり、マーケティングプロセスとは異なる目的を持った活動です。

マーケティングマネジャーたちが直面している課題は何か、という視点でみると企業の変革を行うこととの違いが見えるかも知れません。『コトラーの戦略的マーケティング』では次のような課題が挙げられています。

1.対象とする適切なセグメントをいかに見つけ出し、選択できるか?
2.競合企業に対して、いかに自社のオファーを差別化できるか?
3.値下げを要求してくる顧客にどう対応すべきか?
4.低コスト、低価格で攻めてくる国内、国外の競合とどう戦えるか?
5.個々の顧客に対し、カスタマイゼーションをどの程度推し進められるか?
6.事業を拡大するための主たる手段は何か?
7.どうすれば強力なブランドを構築できるか?
8.顧客獲得にかかる費用をどの程度削減できるか?
9.どうすれば顧客ロイヤルティを長期間維持できるか?
10.どうすれば大切な顧客を見分けられるか?
11.どうすれば広告、セールス・プロモーション、そしてPRのペイバック(資本回収にかかる時間)を測定できるか?
12.どうすれば営業マンの効率をあげられるか?
13.どうすれば複数の流通チャネルを築き、かつチャネル間の対立を避けることができるか?
14.どうすれば他部門をより顧客志向に変えることができるのか?
──『コトラーの戦略的マーケティング』, コトラー, p.15

これら課題からは「デジタル化が避けられない中で、組織をどのように変革すれば良いのか?」という問いとは異なることが分かります。

続いて「変革理念」に関してはどうでしょうか。変革理念は、変革理念を集約して一つの目標として定めたものです。このような目標設定のプロセスも、Rからスタートするマーケティングマネジメントプロセスとは位置づけが異なるものといえるでしょう。

「トランスフォーメーション・オーケストラ」に関してはどうでしょうか。変革に取り組むためのリソースの一つとして、マーケティングが関わることが分かりました。この点に関しては、次回以降の記事で見ていきたいと思います。

まとめ

今回は、マーケティングのプロセスを取り上げ、DXのプロセスと見比べました。詳細な分析はまだできていませんが、マーケティングが対象としている課題の範囲と、DXにおける課題の範囲が、異なっているだろうことが分かりました。

次回は、「マーケティング・プランニングプロセス」を取り上げ、同様の分析を行いたいと思います。続きはこちら

過去の記事

第1回はこちら。経産省のDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第2回はこちら。『DX実行戦略』におけるDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第3回はこちら。「無料/超低価格」のビジネスモデルを分析しました。
第4回はこちら。「購入者集約」のビジネスモデルを分析しました。
第5回はこちら。「価格透明性」のビジネスモデルを分析しました。
第6回はこちら。「リバースオークション」のビジネスモデルを分析しました。
第7回はこちら。ここまでの記事をまとめました。
第8回はこちら。「従量課金制」のビジネスモデルを分析しました。
第9回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍におけるマーケティング定義を確認しました。
第10回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍で紹介させている「戦略的コンセプト」をDXの視点から関係性を見ました。

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