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【短歌エッセイ】秋に作るフィクション短歌

 他の方々はどうかわからないが、私の作る短歌のほとんどは、心情吐露、心象風景、情景描写、過去回想のどれかに該当するノンフィクションだ。
 表現は具体的であれ抽象的であれ、自身の体験に基づき感じたことをそのまま反映するものが多い。
 そのような、ほとんどノンフィクションという短歌群において、ごくわずかながらフィクションの作品もある。割り合い的には全体の1.2%くらいだ。
 そのわずかなフィクション短歌の中で、秋に作られたものの割り合いは72.7%になる。
 どうやら秋という季節は、小説を創作するように、私にフィクション的な短歌を作らせる何かを持っているようだ。
 移り行く季節の在り様が、静かに生を終え枯れ朽ち行く生物達の様相が、そこはかとないもの悲しさが、寂寥的に感性を刺激して、それに類するようなドラマを短歌という形の中にも抽出させようとするのかもしれない。
 以下に、そんな秋に作ったフィクション短歌8首を、「愛」と「別れ」という2つのテーマで掲載してみる。


紅き葉は 寄りつ離れつ 流れ行く    
      想い秘めたる 我らがごとく
            (2001年11月作)

わかってる 「君だけだよ」と いう言葉
      あと何人に 言っているのか
             (2002年9月作)

美しき 言葉の裏に あるものは
        嘘か真か うつつか夢か
            (2002年10月作)

愛してる その言葉だけが 言えぬまま
       並んで歩く 木洩れ日の道
            (2002年10月作)


別れ

別れ際 「また明日ね」と 言う友の
        いる幸せを 失って知る
             (2002年9月作)

明日はもう ここにはいない 君だけど
      遠い町でも 変わらずにいて
            (2002年10月作)

これからも 友達だよねと 言いながら
       切なさ胸に 押し隠してる
            (2002年10月作)

黄昏に 飛び去るカラスが 告げるのは
       君がいないというこの事実
            (2004年10月作)


 短歌を作るようになった頃以降の私は、割とパートナーに恵まれたために、恋愛という分野において苦しい思いを短歌に吐露するという経験はほとんどないままに生きて来た。
 それでも、関係を秘めるような愛や、不実な相手に悩むような愛、疑心暗鬼になるような愛、未だ想いを伝えられないでいる愛など、こういうものだろうか、と思いながら作ってみたフィクション短歌だ。
 自Webサイトに公開すると、パートナーやパートナーに近い人、パートナーを知る人の誤解を招きかねない、という思いから控えていた作品もあるが、大分時も経ったことだし、これを機にそろそろ掲載しようか、とも思っている。

 別れに関しては、関係性にもよるものの、心が震え胸が締めつけられるような別れも多く経験して来た。経験を振り返りながらも、色々な状況や心情を想像しながら作ってみたフィクション短歌だ。

 奇しくも、「【20字小説】別れの嘘」、「【詩】岐路」に続き、別れを題材に含む本記事。
 意図的なつもりはないが、もしかすると今私は、現在進行形で秋に影響されているのかもしれない。



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