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小説を書く人は小説を読む人より多い?

感覚的な話ですが、小説を書く人は以前より増えている印象があります。
奨励賞をいただいた「ポプラ社小説新人賞」の応募総数を調べると、第3回が623作、第12回が1105作ですので、10年の間に2倍に増えています。
ひとつの賞の応募作品数だけをみても全体は分かりませんし、Web投稿が可能になったとか様々な理由がありそうですが、投稿サイトの隆盛を見ても、ここ10年で小説を書く人は増えているのではないでしょうか。

一方で、小説の販売数は落ちています。小説を売っている小規模の書店数も10年で半減しています(ネットの影響や雑誌文化の衰退などの理由もありますが)。
書く人は増えているけど、小説を読む人は減っているのでしょうか。

厳密にいえば、小説を書く人が増えたのではなく、自作の小説を公開する人が増えたのかもしれません。
その背景には自作を公開できる場が増えたことが影響しているでしょう。
「小説家になろう」「カクヨム」などの小説投稿サイト、セルフ出版ができる「Amazon Kindle」と自作を公開する方法は多種多様です。Kindleなどのサービスは読んでもらえると収益が入るのも大きいですね。
ネット以外のリアルの場では、文学フリマの人気が挙げられます。昨年の「文学フリマ東京」では1万人以上が来場したそうです。

本を買って読む人は減ったのかもしれませんが、無料の小説を読んでいるのかもしれません。公開できる場が増えたことで、本を買わなくても読める小説は大幅に増えました。
紙の本が欲しければ、文学フリマに行って安価で購入することができます。

セルフ出版された小説と、書店で販売している商業出版の小説とでは違いがあります。
商業出版は、プロの小説家が編集者と校正の人と協力して作り上げています。装丁家とイラストレーターの手が加わった本はときに芸術品と言っても良いほど美しいです。

商業出版以外の小説が劣っていると言いたいのではありません(僕も多くの作品をKindleで出版していますので)。ただ、多くの人の手が加わる商業出版は、基本的に作家ひとりで作る小説と違いがあるのは事実だと思います。これは自分が両方に携わって得た実感です。

商業出版かセルフ出版のどちらか一方を選択するのではなく、一番重要なことは、小説に興味を持つ人が増えることです。誰も小説を書かずに読まなくなれば、どちらも絶えてしまいます。
小説を書く人が増えることは好ましいことですし、セルフ出版と商業出版が共存共栄して、小説を楽しむ人を増やすことができるのではないでしょうか。

初の商業出版です。よろしかったらぜひ。


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