読書日記.6「欲望の見つけ方」
私自身、仕事や恋人など、自分で「選択する」ということに自信を持てない期間もあったので、この本を手にしました。
【概要】
・私たちが欲しがるもののほとんどは、”模倣”によるもので、内在するものではない。人間は、真似することを通して、ほかの人が欲しがるものを欲しがることを学ぶ。
・一人一人が他者の欲望を形作るきっかけに。→「あなたは何が欲しいのか」「あなたは他者の欲望の形成にどのような役割を果たしたか」に注目。
・模倣は崇高な野心を乗っ取る可能性(他者を征服することに取り憑かれ、他者を基準に自分を判定することに)
・欲望にはモデルが欠かせない(それを欲しいと思わせる人やモノ)
・子供は他者が何を欲しがってるか気遣う(助けようとする)健全な関心だが、大人になると、模倣により、他者が欲しがるものを欲する不健全(得るために競争する)な関心に変化。
・大前提、模倣の欲望は➀ネガティブサイクル➁ポジティブサイクルのどちらかで動く。
┗➀模倣の欲望は、対立や争いに。他者は自分の持っていないものを持っていて、双方の欲望が満たされる余地はないという誤った信念のもとに回る。欠乏、恐れ、怒りの信念から誕生。
┗➁模倣の欲望は、「共通の利益を求める欲望」で人々をつなぐ。豊かさを相互に与えあうといった心理から誕生。
・セレブの国、一年生の国
→モデルが時間、空間、金銭、地位で十分に距離がある場合は、同じ機会をめぐって真剣な競争になりにくい。
・模倣の力が強いと、自分はそもそも何のために闘っていたのか忘れる。求めるものは取替可能に。ライバル同士の二人は、相手が求めるものがある限り、ずっと競争できる。(模倣競争において、目標はライバルが求めるから価値がある)
・価値のヒエラルキーは、良いものの中で選択しなければいけない時、模倣が判断の主な材料になる。
・欲望を識別する力
➀複数の欲望について検討する時、心の中で起こることに注目。どれがその場限りの満足をもたらすか、どれが持続する満足をもたらすか➁どの欲望が寛大で愛があるか、自身に問いかける➂死に際、心穏やかで居れるのはどの欲望に忠実に生きた人生かを考える➃その欲望がどこから生まれたのか自分に問う
・模倣の欲望は、競争や衝突を生み、やがてスケープゴートメカニズム(混乱をつくり模倣の欲望を最大になるまで高め、それから象徴的なものを追放・犠牲にする)
・目標設定に執着するのは的外れ、むしろ逆効果も。なぜなら、「目標の選び方」に100%の責任を負っていない。欲望のシステムの中で提示される目標を追いかけていることが殆ど。そのため、ゴールポストは常に動いている(変わる)。
・ネガティブな模倣サイクルは、二人の人間が共感を通じて、互いを競争相手と見なすのをやめた時に破壊される。「他者を知り、他者に知ってもらう」
・共感は、模倣のネガティブサイクルを破壊する。共感力のある人は、他者の経験に入り込んで”その人の欲望を共有すること”なく、その人の考えや感情を共有できる。共感力のある人は、”他の人のようにならなくても”、他の人を理解し深く繋がれる。
・濃い欲望と薄い欲望(模倣の欲望)がある。
▪️濃い欲望の見つけ方
→時間をかけて身近な人から、人生で最も満たされた経験についてきき、自分も同じように語る。相手が達成感を覚えた経験に理解を深めるほど、互いにどのように協力すればいいかわかる。
→仕事において、相手を動かすもの、動機づけるもの、満足感につながるものがわかる。
・充足物語を紐解く際の3つの要件
・希望とは何かを欲することで、濃い欲望が育つ土壌である。その何かとは、➀未来にあり➁良いもので➂達成が難しく➃実現可能なもの。欲望を満たすのが可能だと確信できなければ、希望も欲望もない。
→模倣サイクルを破壊するには、希望や展望をもつこと。
・欲望を変容させるには、人間関係の本質を変える必要がある。
→家庭、(文学など)想像の世界、職場 において。
・欲望とは、「欲しいものを手に入れるまで不幸でいることを課す自分との契約」。欲望は、常に自分に欠けていると感じるものに向かい、苦しみをもたらす。
模倣の欲望は、誰かや何かへの変わらぬ憧れとして姿を現し(形而上的欲望)、自分が求めるものにつながるドアの鍵をモデルが持っているとおもうから、そのモデルを選ぶ。
→モデルを見て欲しいものを手に入れた時、そもそもモデル選びを間違えたのではと思い、別のモデルを探しにいく。終わりがない逆説的なゲーム。勝つことは負けることを意味してる。
・もっと大切な欲望を追うべき。それを見つけたら、それ以外の些細な欲望を、大切な欲望の役に立つように変容させること。
・もっとも大切な欲望を手にするということは、モデルを手にすること。モデルなしに欲望に達することはできない。(自分がにとって間違いなく本物だと思える)崇高なモデルを見つけて終わりでなく、モデルは外部のものなので超越するために内なる変容が必要。内なる変容はモデルにより自動的にはもたらされない。内なる変容が起きれば、薄い欲望を消し去り、濃い欲望を根付かせる動きが勝手に進む。
・日常的に薄い欲望はありふれているので、無意識に模倣的な生活を送るか、懸命に濃い欲望を育てるか。
・欲望の変容は、自分の欲望よりも人の欲望の達成を気にするようになった時に起こる。逆説的だが、それが自分の欲望を満たす確かな道なのだ。
・欲望のポジティブなサイクルが機能するのは、真似される自分を差し出す行為。これが、美しい結婚、友情、慈善活動の裏にある模倣の欲望のポジティブな力に。
→「欲する」ということは、「愛する」の別の言い方。模倣的なもの。
【感想】
この本を読み、自分の真なる希望(濃い欲望とモデル)を見つける大切さを知りました。
「(誰もが欲する)ステータスを追うことは、蜃気楼のようなものだった」という趣旨の文があり、非常に共感しました。
また、”共感”を起点に創造的サイクルは始まり、この時自己は、周りの人の欲望を尊重し、その実現に協力するものだという世界観が、素敵だなと思いました。そのために、まず周囲の相手の濃い欲望を聞きだすこと、自分の濃い欲望を語ることから始めようと思いました。
ライバル関係でなく尊重関係(共感や与え合い)で周りと関わり始める大切さを知りました。濃い欲望の実現には、「他者を知り、他者に知ってもらう」コミュニケーション、周りとの協力、協働、周りの成功を応援することが、改めて大切なんだなと気付かされました。