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ブランドアイデンティティを考える 4[独立系書店]

「変化」というはよくもわるくもあります。そこから恩恵を享受できるかどうかは企業や人次第です。コロナ禍という変革でさえ、泣く企業もあれば笑う企業もあります。では、出版業界はどうか。
電子書籍の登場はいわゆる大きな変化だったわけですが、既存の「紙」の出版は今後どうなるのか? こうした大きな逆境の中で、個人規模の商店はどんなブランディングに取り組んでいるんだろうか? 「紙」本を売る独立系と言われ、今注目の書店を各社取り上げて、こうした店舗のブランドの核にあるものは何か。その中心となるブランドアイデンティティを比較していきたいと思います。これは書籍小売業の方だけでなく、業種をまたいで小規模事業に携わる方々にご参考にいただける内容です。

世の中の書籍の流れが電子化へ移行していく中で、まだ「紙」の書籍や雑誌は少なくても日本ではまだ根強く続いている印象はあります。では出版流通を見てみるとどうでしょう。近年の電子書籍の登場により、「紙」の書籍を扱う取次会社大手の経営破綻や寡占化が進み、流通に大きな変革を迫られてきています。では、消費者に近い末端である小売はというと、とにもかくにも「アマゾン」です。。このグローバル企業が日本の出版業界にもたらした影響はあまりにもデカい! 弊社独立当初は書籍デザインに携わることも多かったので、このへんの事情に泣いている関係者の方々も多いです。

アマゾンは「本」が他の販売商品の中でも特に市場独占シェアが抜きに出ているらしいです。アマゾンでの購入のメリットは書籍の口コミがみれること、本は単なる情報源として新品にこだわらない人は中古が安い価格で手に入る。これは大きいと思います。服ではないので、実際に手にとって装丁の質感や色を確かめる必要はない。
では、本の購入に関しては書店に足を運ばないのか?というと別にそうでもない。いけばそれなりに発見がある場所です。テレビチャンネルのザッピングと同じ機能だと思いますが、そこにはセレンディピティがあり、目的外の発見がありえます。書店へ足を伸ばす醍醐味ですね。

書店はオーナーの書籍セレクションや棚の作り方、
外観も含めたインテリアから始まり、
空間で体験できるもののブランディングがマスト

定価制度の品を販売するだけでは差別化はムリです。料金に差がないのであれば、付加価値を与えるポイントを何にするのかが大切です。




[事例4]

BREWBOOKS



麦酒と書斎のある本屋

これはブランドコンセプトにつながるイメージですね。ステートメントとして社名のタグライン(社名につくシンプルなメッセージ)にもなっています。サイトに飛んでいただけると見れるのですが、2Fは畳部屋になっています。畳の心地よさは逆に強みになると思いますし、月額制でビールを飲みながら店内で本を読めるコワーキングスペースにしているのは面白い(現在コロナによりこの月額制サービスは中止)。




[事例4-2]

BAG ONE



本を読む人が集まる場

出版社TWO VIRGINSが運営する渋谷松濤にあるブックカフェバーです。TWO VIRGINSの大元会社の理念はこちら↓


「無垢であること」と、普遍性。多様性と可能性の未来へ。

運営会社の理念にもありますが、「人と人との出会い」を大切にされているブランドのようです。出版業界にとどまらなずに可能性を広げるということで、このブックカフェバーもそのブランド展開の一貫なのでしょうか。現役の編集者である吉川海斗さんという方が選書に携わっているそうです。




[事例4-3]

森岡書店



一冊の本を売る

一時、メディアでも騒がれていましたね。コンセプト通りです。「一冊」の本しか売らない!「一冊、一室」ということで、東銀座のギャラリーのようなシンプルなステュディオスペースに書籍は「1種類」だけ販売する店舗です。上の触れたアマゾンのような品揃えと手軽さのまさに「真逆」をいくブランドコンセプトです。だからホームページすらない笑 いさぎがいいですね。あえて作らないとのことでした。ということは、今売っているその1種類が何かがわかりません!行くまでは。そこも時代に逆行していていい。もう本当に気持ちいいくらいの差別化ですね。わたしは好きです。

「作った人と買う(読む)人が、売る場所でより近い距離感でいて欲しい(以下リンク引用)」森岡さんの言葉です。

HPがないのですが、サブスクはやっていらっしゃいました↓
ファンを交えたイベントや交流を図る目的のようです。店舗は「オフ会」、サブスクは「オン会」ということらしいです。素敵ですね。



今回ご紹介したいずれの書店にも共通していることがありました。


人との交流の場を作ること


本を通じて場所を提供し、人と人の出会いの機会の提供をすることです。以前よく通っていた代官山蔦屋書店のお話なんですが、書籍の売り上げ以外の収益が大きいとのことでした。あそこは打ち合わせに使えたりするバースペースもあり、映画レンタル販売やスタバなどのテナント収益、あとはやはり定期的なイベント収益だと思うのですが、いずれにしても、「本」はただのきっかけとしての機能で、狙いは人を集めることにあるんだなと感じます。
BREWBOOKSでは、居心地のいいスペースでの読書体験を売っています。
BAG ONEはすでに理念が物語っていますし、森岡書店は作家と本を買う人をつなげる機会をイベントを通じて提供している。全て本の向こうに「人との出会い」が見えてきますね。





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