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#逆噴射小説大賞2020
何も知らないあなたの旅路と、歯車の壊れた私の家路
立ち止まるのは悪い癖。私はどうせ、限界がある。
「…ねえ! お願い!お願いッ!」
もうだめです。
綾西絃帆は死にました。旅の終点沖縄で。
剃刀みたいな岩で作られた、夕日が最後に落ちる岬を登り、底なしの青い海へと落ちました。
盗んだバイクは待ち人なし。
でも、どうしてこんなノートを残したの? 本当に彼女はいじわる。
読んじゃダメ 遺書=9/9 改メ日記=8/28〜
一緒に帰ろう。
私は
されどお前には継がせない
少しくらいは俺の話をしてくれてもいいのに、三人ともバカだから鞄の中身しか気にしてない。
困った。鞄のカネ、ここの路地裏のドブから湧いて出たんじゃないんだよ。俺が銀行襲ってバッチリ揃えた十七億だ。ダッフルバッグに詰めるまで、結構大変だったのに。
「絶対私のモンだから! ビタ1円切るもんか!」
女は銃を向けている。俺ではない男へ向かって。
「るせえ! 俺は約束したんだよ。中まで通して対価に貰うと」
『ロングソードの返済者』
「私、魔具にもならねえよね」「黙れ」
「あとどれだけ話せる?」「俺を泣かせるのはやめろ」
もうギュミとは喋れない。今や俺だけがお尋ね者だ。
この街だけじゃなく、トゥードラ大陸全体で。首、回る訳ねえ。
少し遡る。
取り立て人の俺たちは、政界のドン、かつての勇者の大豪邸を訪れた。
「借りたもんは返してもらうぞ」
プールサイドで侍女に囲まれ、肥えたそいつが怪神殺しの伝説の男。
「明日の地租で払うよ、