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Web3(3.0)で、世界はどう変わる?(2)

(前回からのつづき)
こんにちは。Boundless Creative Studiosの大岡です。
前回は、没入型体験やメタバースについて広く触れてきました。今回は、Web3の概念や、その可能性について触れていきたいと思います。

Web3とは?

「メタバース」と並び、バズワードとなっている「NFT」「分散型自律組織(DAO)」を含む、次世代のインターネット「Web3(3.0)」の概念です。DXの次のステージとも言われています。

Web3は2018年頃から出現しはじめた比較的新しい概念で、広義に「分散型のインターネット」とされ、Web2.0の中央集権型のWebではなく、インターネットの源流でもあるWeb1.0と同じく、非中央集権的なWebを指しています。

Webの歴史

Web1.0

文字通り「World Wide Web」黎明期。ホームページや情報をハイパーリンクで接続したWebページで構成されていました。

1990年代半ば、Netscape Navigator(Webブラウザ)やYahoo!などが登場し始めた時期であり、一方向のコミュニケーションが主流で、Web2.0に代表されるインタラクティブなコンテンツが提供されていない静的なWebでした。また現在のようにSNSやブログを使って、個人が簡単に情報発信できる時代ではなかったため、HTMLを駆使したホームページの制作は一般的ではありませんでした。

またホームページといえば、ほとんどと言っていいほど、ページ上部に「アクセスカウンタ」が設置されていて、訪問者のアクセス数が表示されていました。一方で企業サイトでは、所在地、地図などの基本的な情報の掲載のものや、会社案内のパンフレットの一部を掲載したWebページになっていたり、という時代でもありました。

Web2.0

2000年代のインターネット環境を支えたのは、第2世代のウェブである「Web2.0」です。Web1.0のインターネットの「見る」から「参加する」へ変化しました。人々はインターネットを静的な世界ではなく、ユーザー双方向のインタラクティブなコミュニケーションと広義に捉えて差し支えないでしょう。

Wikipediaによると「ティム・オライリーによって提唱された概念であり、狭義には、旧来は情報の送り手と受け手が固定され送り手から受け手への一方的な流れであった状態が、送り手と受け手が流動化し、誰もがウェブサイトを通して、自由に情報を発信できるように変化したウェブの利用状態のことである。」とあります。

Web3

Web3.0とは「次世代インターネット」とも呼ばれており、2018年頃から始まった比較的新しい概念です。Web2.0では、Google・Amazon・Meta(旧Facebook)・Appleなどに代表されるプラットフォーマーなどの寡占による、中央集権的なインターネット環境で「ユーザーが囚われた世界」。ユーザーがインターネット上のプライバシーの侵害だけでなくサイバー攻撃を受けやすいという問題点を解決するために、ブロックチェーン技術を活用した「自律分散型」の次世代インターネットが、Web3となります。

ブロックチェーン技術により、より強固なセキュリティ環境下において「取引の公明な記録を残すこと」が可能なため、NFTアートなどのデジタルコンテンツの偽造不可能な所有証明書を発行することが可能なのです。

そして、この「Web3」の世界では、「所有」する概念がWeb2.0と大きく異なります。構築者とユーザーが共同所有する分散型のインターネットであり、たとえば、NFT、メタバースなどもWeb3の環境下で仮想通貨はつながっており、イーサリアム(Ethereum)など暗号資産の売買や、「ウォレット(仮想通貨)」を通じて、利用したいサービスに 「接続 」 するだけで、この「バーチャル・エコノミー(仮想経済)」の世界につながることが可能です。

Wenの歴史

Web3のトレンド

2021年末にWeb3はトレンドワードとして国内外のメディアで頻出しました。もっとも2021年には、NFTでのデジタルアートの高額売買が大きな話題となりました。

小さな帽子をかぶった宇宙人の24×24ピクセルの1組のポートレートがそれぞれ約750万ドル(約8億2000万円)で販売

Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は最初のツイートのNFTをおよそ291万ドル(約3億1500万円)で販売

「Axie Infinity」プラットフォーム上のデジタル土地の一区画が550ETH(約2億8,600万円)で販売

Web3の大きな方向性としては、個人的には今注目が集まる「クリエイターエコノミー」に関わっていくのではないかと思います。例えば、YoutuberやSNSインフルエンサーなどのクリエイターたちの主戦場が、Web3に移行されていくと思います。そうするとおのずとそこには、「コミュニティ」や新たな「クリエイターエコノミー」が形成されていくことでしょう。

ここからは、Web3の中でも4つのトレンドでもある、「DeFi(分散型金融)」「メタバース」「NFT(非代替性トークン)」「SocialToken」について紹介していきます。

DeFi(分散型金融)

DeFiは「Decentralized Finance」の略称で、「分散型金融」とも言われます。読んで字の如く、ブロックチェーンの恩恵を受けて銀行などの中央集権に縛られることなく、金融資産の管理ができるというものです。高速でかつ低い手数料で、デリバティブ取引ができたり、さまざまな金融商品の開発に期待がされるでしょう。

これらのアプリケーションが注目・活用されはじめたのは2017年頃と言われており、ブロックチェーンを用いた資金調達法「ICO(Initial Coin Offering)」が登場しました。従来、取引所を通じて株式を売却するIPO(新規株式公開=Initial Public Offering)と比べ、非常に手軽に、世界中から大きな資金を調達できる、ということから非常に話題になりました。

メタバース

メタバースは、メタ(meta=超越した)、ユニバース(universe=宇宙)を組み合わせた造語で、不特定多数のユーザーが仮想空間の中でさまざまな活動ができるようになる技術です。

昨年に引き続き、特にゲームを中心として、没入型のプラットフォームが活況を見せています。先日発表された、ガートナージャパン(Gartner)のメタバースに関する展望によると、2026年までに、25%の人々は、仕事、ショッピング、教育、SNSやエンターテインメントなどで、1日1時間以上をメタバースで過ごすようになると予測しています。

Gartner、メタバースに関する展望を発表 ー 2026年までに、人々の4分の1は、1日1時間以上をメタバースで過ごすようになるhttps://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20220209

ガートナージャパン

2018年に劇場公開された、スティーヴン・スピルバーグ監督作品の『レディ・プレイヤー1』は、まさに、インターネット上の仮想世界=メタバースの世界観だと思います。現代のVRベースのメタバース開発者が目指す理想の世界なのかもしれません。

余談ですが、エストニアに拠点を置くWolf3Dでは、メタバースを色々なプラットフォームをまたいで使えるアバターシステム「Ready Player Me」も登場してきていますので、周辺サービスがもっと活況になりそうです。ちなみにReady Player Meは、1枚の自撮り写真から3Dアバターを作成可能な「ハブ」システムが実装されているそうです。

次世代のバーチャルファッションショー

当社のUKスタジオでは、次世代のバーチャルファッションショー「Fabric of Reality」を開催。3人のトップファッションデザイナーがVRクリエイターとコンビを組み、それぞれのショーを制作しVR空間で展示しました。オーディエンスは、VRヘッドセットを介して、リアルタイムで3Dの作品を鑑賞。デザイナーズコレクションの背景にあるストーリーを探求する旅を、革新的かつ独創的に作り上げ、次世代のファッションショーを展開しました。(実施国:UK)

Boundless没入型体験調査レポート2021はダウンロードはこちらhttps://pages.beboundless.jp/immersive-report-e-book-2021.html


NFT(非代替性トークン)

NFT(Non-fungible Token)は、非代替性トークンの略称です。たとえば、ゴールドバー(金塊)100gの価値は、どのゴールドバーでも同じ100gの価値ですが、NFTはそれ自体に、固有のIDが割り振られるトークン毎に資産を紐つけることが可能で、唯一無二の価値を持つ非代替なトークンとなります。

NFTを用いた取引では、すべてブロックチェーン上に記録されます。「分散型台帳」とも訳されているブロックチェーンでは、改ざんが容易にできない点もありますが、万一改ざんがあっても自動修復されるため、デジタル証明書の改ざんも困難です。

オリジナルを所持する価値とインターネットでコピーを見る・ダウンロードする価値は違うと捉えられています。実際にコピーをすることができますが、それは証明のしようがないので、価値がない。だから、デジタルコンテンツの分野に所有権の概念が生まれたことは、非常に好ましいですし、クリエイター・エコノミーがどんどん盛んになっていく契機になると思います。

リアルアートの分野で言えば、1点ものを自分だけで所有するということになると思いますが、NFTでは、これを数千、数万人と「所有」できるというほうが価値があるとされています。なぜならば、バーチャル・エコノミーのなかで、コミュニティを通じて、多くの人々が同じ価値を持てるというほうが、価値そのものが安定するからです。

SocialToken

SocialTokenは特定の個人やグループなどに紐づいているトークンです。例えば、特定のサービスやスポーツチーム、インフルエンサー、クリエイターなどがトークンを発行するような世の中に、進んでいくことでしょう。

湘南ベルマーレ(Jリーグ)は、ブロックチェーン技術を利用したプロスポーツチームの「クラブトークン」を発行しています。ブロックチェーンを活用したクラウドファンディング「FiNANCiE(フィナンシェ)」上で、クラブ活動の一部に参加しながら応援できるものです。発行されたトークンをつかい、以下のような応援ができるそうです。

投票テーマ(案)
・選手に向けた応援メッセージ投票
・サポーターの選ぶマッチMVP投票
・上半期MVP選定グッズのデザイン案

急拡大するクリエイターエコノミー

世界的な危機を背景に、多様なワークスタイルが浸透しました。本業の傍ら、クリエイターやギグワーカーとして活躍する人々が増えており、もはや日本は一億総クリエイター社会といっても過言ではないでしょう。

今や全世界で5000万人以上の人がコンテンツクリエイターを自認しており、NeoReach Social Intelligence APIとInfluencer Marketing Hubの共同調査によると、クリエイターエコノミーは、2021年時点で、市場規模は1040億ドル(約11兆4400億円)を上回るレベルまで広がっています。ちなみに、IDC Japanの調査によると2020年のVRの市場規模が1,433億ドル(約17兆円5000億円)とのことなので、クリエイターエコノミー市場はある程度の規模であることがわかると思います。

スタートアップ企業やプラットフォーマーは、先を争うように、こうした事業やサービスを運営・管理し、クリエイターが簡単にものをつくったり、稼いだりすることができる、仕組みやツールをこぞって開発しています。

Voicy代表の緒方さんが、とてもわかりやすく解説されていたので、参考までに。

クリエイターエコノミーは「確実にくる」
きっかけはnote代表の加藤さんから「クリエイターエコノミー協会をやりませんか?」という連絡をいただいたことでした。僕たちもVoicyをクリエイターエコノミーの会社だと思っていたので、「ぜひ!」と返事しました。

クリエイターエコノミーを盛り上げていく中で、新しいビジネスや働き方が出てくると、法律上などで難しい部分が必ず出てきます。たとえば納税の仕組みひとつ取ってもそうです。そういったまだ固まっていない新しい制度について一緒に議論できるのはすごくいいことです。
https://note.com/ogaken/n/nbe2f56378910

5分でわかる「クリエイターエコノミー」を取り巻く現状【声の履歴書 Vol.62】
緒方憲太郎(Voicy代表)
note

クリエイターがより活躍しやすい世界に

TikTokを例に、考えてみると、有名なクリエイターが活躍するというよりは、たまたまおもしろくて、ばかばかしく、インパクトある、といった創造性だけで視聴者を集めたごく一般の人々です。2021年には、TikTokの全世界の月間アクティブユーザー数は10億人を超えています。

このnoteでもそうですが、個人が投稿したコンテンツの利用や収益化をサービス側が自由にできるようになっていますが、YouTubeのように広告の再生回数による収益還元しているものは稀で、ほとんどのSNSサービスではたくさん投稿し多くのフォロワーを獲得していても収益を得る術はありません。Web2.0の世界では、コンテンツもフォロワーも収益もプラットフォーマーに運命を委ねられている状態にあります。

ですから、たとえ有名なクリエイターではなくても、クリエイターの経済圏で生きられるという面で見ても、Web3のような世界が、一般の人でも比較的簡単にチャレンジできる時代に入ってきています。

たとえば、Discord(ディスコード)のようなチャットサービスやFortnite、Robloxといった交流ができるゲームでプライベートコミュニティを盛り上げる課金型メンバーシップや、購読型ニュースレタープラットフォーム「Substack」のようなメール配信型のメディアサービスで収益をあげたり、また、自分の得意や好きを活かして、ハウツーを教える動画の制作や教材、コース販売をするなど、より一般の人(クリエイター)による経済活動の自由度が増してきています。

DAO(自立分散型組織)とコミュニティ

DAO(自立分散型組織)とは「Decentralized Autonomous Organization」の略で、「ダオ」と読み、文字通り「分散型で自律的に機能する組織」のことを指します。

従来の組織では、主に中央集権型・階層型のヒエラルキー構造に基づいていて、意思決定などがなされますが、これに対しDAOでは、中央集権型の組織の代わりとして、予め定義されたルールに則り、自動化された運営がなされます。とはいえ、自動化されると言っても、意思決定や実行や、利用にあたっては人間が関与することになります。

組織と言うと、ティール組織やホラクラシーにも似ているように聞こえますが、DAOはブロックチェーン技術を使った意思決定として考えると、まったく別物とも言えます。

  • ティール組織...経営者や上司などの管理者のマネジメントを少なくし、共有・共感する組織のビジョンや目的を達成するためにメンバー各自が自律的に動く組織

  • ホラクラシー...社内に役職や階級のないフラットな組織形態で、意思決定権が組織内で分散された組織

  • DAO…階層がなくフラットな組織構成で、全員に投票・意思決定の権限が割り当てられている組織

DAOでの意思決定は定められたルールに基づいた投票・合意によって行われ、運営資金なども構成員の承認がなければ利用できないようになっているため、とても民主的です。

gumi創業者の國光さんが、ブロックチェーン技術を利用したトークンプラットフォーム「FiNANCiE」(株式会社フィナンシェ運営)では”Web3、メタバース領域で日本発、世界で活躍するユニコーンを増やす”というビジョン実現するための「國光DAO」というDAOで構成員を募っていましたので、以下引用です。

2022年はDAOの年になる
Web3が世界中で大注目になり、2020年はDeFi、2021年はNFT、2022年は間違いなくDAOの年になると確信しています。DAOというのは『Decentralized Autonomous Organization(自立分散型組織)』の略で、最小構成は「ビジョン、それに賛同する人が集まるコミュニティ、独自トークン」です。

一番有名なDAOはビットコインやイーサリアム。イーサリアムを例に挙げると、2013年に当時19歳だったヴィタリックの「あらゆる目的のために使えるブロックチェーンのプラットフォームを創りだす」というビジョンに共感した人たちが集まって、コードを書く人はコードを書く、マイニングする人はマイニング、資金を出す人は資金を出す、コミュニティを盛り上げる人はコミュニティ、dappsを開発する人は開発など、各人がビジョンの実現のためにできる貢献をしていき、初期は6人で始まったプロジェクトが、皆んなの頑張りによって、100人、1万人、100万人と支援者が増えていき、今では1.8億人までDAOメンバーが広がっていきました。もちろん、その過程でETHの価格も上昇し、約50兆円(※2021年12月末時点)ものネットワーク価値まで成長し、関わったメンバー皆んなが報われました。

Web2(中央集権型)サービスとの大きな違いは、これまでは、ごく一部の創業メンバーや従業員、VCに偏っていたオーナーシップが、初期から貢献したメンバーの多くに分散化されているところです。実際、ヴィタリックはETHの約0.3%しか保有してません。

このように、強いビジョンをベースに、賛同する人が集まり、独自のトークンを発行するDAO、これは今後の新しい組織の形になっていくと確信しています!

【超本気!國光DAOいよいよ始動!日本スタートアップ逆襲の煙!】
国光宏尚 (Hiro Kunimitsu)
note

今後も、色々なジャンルやタイプのDAOが出現してきそうですね。将来、企業活動についても次世代の組織、プロジェクトがDAOとしてどんどん運営されていく世界が生まれることにも期待したいですね。

さて、話は少しNFTに戻りますが、筆者も遅ればせながらNFTアートの制作を実践してみたのですが、NFTマーケットプレイスへ出品されているクリエイティブを見ても、クリエイターたちが集まるコミュニティも覗いてみても、もはやプラットフォーマー主導からクリエイターへ主導権が移りつつあることを実感しました。

NFTがデジタルコンテンツに「所有」という概念を持ち込み、本物と証明されたアセットを持つことによる本当の価値へと転換したことは、前述のとおりですが、「クリエイターが熱量の高いファンから直接お金を稼ぐことのできる」仕組みはもうすでに準備万端整っている状況ですl

そこで有効だなと思うのは、やはりストーリーテリング。語り手が、作品を通じて、相手に伝えたい思いやコンセプトなどを、それを想起させるような印象的な体験談あるいはエピソードなどの「物語」を引用し、例示することです。成功しているクリエーターやプロジェクトにも、この「物語」がしっかり語られていると思います。

Web3の世界とクリエイターエコノミー

最後に、Web3の世界とクリエイターエコノミーのまとめです。

  • クリエイターエコノミーにより個人が企業・プラットフォームと対等以上の影響力を持つ可能性がある世界である

  • クリエイター自身がパブリッシャーとなり熱量を持ったファンやコミュニティを通じて収益を得られる組織はDAOへ。

  • 中央集権に支配された世界から分散型組織により、適正な報酬が分配される資本主義へ

  • 昨今、世界的な取り組みテーマであるSDGsもこの流れを後押し(誰一人取り残さない、ジェンダー平等、働きがい、平和と公正、技術革新など)

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

次回は、サスティナブルを表現するバーチャルクリエイティブなどについて触れていきたいと思います。

当社では、企業活動の中で、SDGsやDEI、LGBTQIAなど様々な考え方や視点から、新しい価値観がイノベーションを創出する活動を開始しました


*Boundless株式会社(バウンドレス)は、米国に本社を置くYahoo Inc.の日本法人です。


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