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「愛」ゆえにヤンチャは生まれ変わる

震源が宮城県沖らしいので、現地の揺れはかなり激しかったはず。会場で観戦していた人は怖かったと思います。

「大丈夫、大丈夫だよ」

悲鳴が上がりかけた矢先、飯伏選手が落ち着いた様子で両手を挙げ、上の言葉を繰り返しました。試合が中断している間もリング上で腕立て伏せをしたり、棚橋選手やオカダ選手とポージングしてスリーショット撮影を促したり。素晴らしいサービス精神でした。

そこで気づきました。飯伏選手の「本当の神になった!」発言に込められたもうひとつの意味を。

元々彼は棚橋選手を「神」と呼んでいました。その真意は日々激しい試合をして会社を引っ張りながらオフはプロモーションで全国を飛び回り、且つトレーニングと食事制限を欠かさずに体調をキープする姿へのリスペクトです。

昔の飯伏選手は良くも悪くも「リング上」が全て。試合は一級品だけど他は危なっかしく(某レスラーの全裸画像をツイッターに上げたり)、責任を負うのも苦手。つまり棚橋選手は彼には絶対できないことをやっていた。ゆえに「神」なのです。

私も含めた長年のファンは、心のどこかに「ヤンチャな飯伏を見たい」という願望を燻らせています。真面目に働く元ヤンキーに「いまのお前は違う」と余計なことを言うかつての仲間のように。でもやっと理解できました。「これでいい。彼は生まれ変わったんだ」と。

WWEにショーン・マイケルズというレスラーがいました。彼も若いころは飯伏選手に劣らず破天荒でした。ナイトクラブで喧嘩してクビになる、ライバル選手の母国の国旗を鼻の孔に詰めておちょくる等々。

でも腰の怪我で一度引退してから変わりました。復帰後はクラシカルなレスリングを軸に据え、発言や態度にも重みが増しました。加齢や結婚、あるいはクリスチャンの信仰に目覚めた影響かもしれない。でも私は彼の佇まいに強い「愛」を感じました。「俺が俺が」ではなく「プロレスのために」という「愛」を。

若いスターを引き上げ、ファンを楽しませ、次のショーのチケットを買ってもらう。仲間の生活を守るために全力を尽くす。かつてはヤンチャで事件も起こした棚橋選手が憧れのマイケルズから継承したそんな「愛」を、飯伏選手も尊敬する先輩から受け継いだ。つまり「本当の~」は「愛」を大事にする己へ生まれ変わったという宣言だったのです。

いまの飯伏選手が好きです。ありがとう。




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