ごく個人的な「ノミネート作」
白状します。↑のつぶやきを見るまで「20日の12時にノミネート作が発表される」ことを知りませんでした。メディアパルさん、ありがとうございます。
どうも自分の中で同大賞の存在はさほど大きなものではないようです。少なくとも芥川賞や直木賞ほどには。
もちろんノミネート作をディスっているわけではありません。レビューを見るとどれも概ね好評ですし、朝井リョウ「正欲」と逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」は発売当初から気になっています。
でもそもそものコンセプトを思い出してください。「全国書店員が選んだいちばん! 売りたい本」です。「いちばん売りたい本」という言葉に「まだそんなに売れてないけど」というニュアンスを感じませんか?
はっきり言うとノミネート作はどれもすでに売れているのです。我々が「売りたい!」と力を込めるまでもなく(「発掘部門」という賞も設けられていますが、話題になることは多くない)。
順調にヒットし、相応しい評価を受けている傑作へ「本屋大賞ノミネート」の冠を付すことに意味がないとは言いません。いまのご時世で売り上げを伸ばすという点においても、その方が間違いは少ない。
ただ困ったことに、私は「100」を「1000」にするよりも「1」を「2」にすることにロマンを覚える人間なのです。そこに「愛書家」兼「書店員」である己の矜持を見出しているのです。
ごく個人的に「ノミネート作」へ滑り込ませたい一冊をご紹介します。
実在する人や場所の名が多く登場します。事実とフィクションの境を曖昧にぼかす「いかがわしさ」は阿部さんの持ち味のひとつ。しかし彼の作品を読み慣れていない人には斬新に映るはず。分厚くて二段組みでこの装丁。お値段もまあまあします。だからこそオススメしたいのです。ここまで複雑に込み入ったシンプルな恋愛小説もなかなかないから。
ぜひお近くの書店でチェックしてみてください。
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