「勝てば官軍」の是非

「やった者勝ち」という言葉があります。

10年ほど前、文庫担当になったばかりの新人がいきなりフェアを開催しました。オススメの短編集を20点近く集め、ひとつひとつに詳細なPOPを付け、紹介する小冊子まで作ったのです。

ただ店長や正社員への報告が不十分で(ラインナップや冊子の文面に関する了承を得ていなかった)、のちに注意されたようです。たしかに内容によっては「ここはこんな本を置く店なのか!」とお客さんを困惑させる可能性があるわけで、責任者への事前通達は必須でした。

でもそれはそれとして、行動力がすごいと思いませんか? これは「やった者勝ち」の好例だと私は考えます。まずはやってみる。やらなきゃ何も始まらない。

悪い方の例もあります。↑で紹介された一戦です。

1999年1月4日、新日本プロレスの東京ドーム大会。マウントから橋本真也選手の顔面をボコボコに殴り、フルスイングで蹴った小川直也選手の姿は衝撃でした。

橋本選手の顔は真っ赤に腫れ上がり、鼻血も噴き出していました。当時の私はプロレスの「内幕」に関する知識が乏しく、素直に「すげえ!」と興奮しました。「小川強い!」と。

でもそうじゃないんですよね。

シュート(真剣勝負)をやりたいなら、なぜ事前にそう伝えなかったのか。もしボクシングのつもりでリングに上がったのに蹴りも投げも関節技もOKという試合があったら大問題になります。選手の健康面への配慮が雑だと。でもプロレスは競技の性質上、こういう事態がうやむやにされてしまう。

誰もやりたがらないことに最初に挑んで成功する「やった者勝ち」は素晴らしい。でもこちらのケースはルールの曖昧さに付け込んだ「騙し討ち」です。

「騙し討ち」で倒した=倒された相手より弱いと私は解釈します。格闘家とかビジネスマンとしては強いのかもしれない。でも人としては? 己がいちばんわかってますよね。

「勝てば官軍」とか本当にあり得ない。そういう世の中にはなって欲しくないです。

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