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いちばん売れるのは「受賞作」だけど

年末年始の繁忙期がようやくひと段落しました。

次に控えるのは芥川賞・直木賞の発表です。選考会は1月19日(木)に行われます。始まるのは16時ごろ。例年通りなら、18~19時の間ぐらいに結果が出て報道されるはず。

直木賞候補作はすでに発売されています。芥川賞候補作でまだ書籍になっていない鈴木涼美「グレイスレス」は1月14日(店によっては週明けの16日)、佐藤厚志「荒地の家族」は1月19日、そしてグレゴリー・ケズナジャット「開墾地」は1月26日に単行本が出るようです。

気になる本をひとつ挙げるとすれば、最後に紹介した「開墾地」でしょうか。

↑によると、著者はアメリカのサウスカロライナ州グリーンビル生まれで現在は法政大学グローバル教養学部の准教授。「鴨川ランナー」で2021年に第二回京都文学賞を受賞してデビューとのこと。

長さは96ページ。芥川賞にノミネートされる作品は「新進作家による純文学の中・短編小説」が原則です。しかし単行本で100ページに満たないものは珍しい。短い話の場合は他の作品を併録することが多いのですが、あえてそれをしていないのかなと。

芥川賞候補作の単行本は、どこか詩集のそれを思わせます。本棚に並べたくなる独特の装丁と心地良い紙の手触り。決して分厚くないけど、言葉の「密度」ではなく「純度」が極めて高い。そして静謐な広がりを持った空間のそこかしこにひとりでは容易に考えの及ばぬ「問い」の欠片が潜んでいる。

いちばん話題になり、賞賛され、売れるのは当然受賞作です。しかし誰もが知っている文学賞の候補になっただけでも素晴らしいこと。もし気になる作品があったら、結果にかかわらずぜひ書店で手に取ってみてほしい。それが「一生の出会い」になることも十分あり得ますから。

「開墾地」が職場の棚に並ぶ瞬間を楽しみにしています。

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