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「今こそ彼に学ぶ」三冊

2011年10月。当時の店長に「スティーブ・ジョブズの伝記が出るらしいよ」と言われました。「そうなんですか」「読む?」「読まないです」そんな会話をした記憶があります。

白状します。私は「スティーブ・ジョブズ」が誰なのかわかっていませんでした。彼が亡くなった際、初めて「Appleの創設者」だと知ったほどです。

当時の私はガラケーユーザー。もちろんiPhoneやiPodは知っていました。でもそれらを創ったのが誰かということには無関心だったのです。

そんな私がジョブズに興味を抱いたのは2012年。NHK出版の営業さんに教えてもらった「Think Simple」という本がキッカケでした。

ジョブズは時間を大事にします。だから無駄に長い会議を好まないし、自己満足のアイデアや着飾ったプレゼンを聞かされることに耐えられない。ゆえにAppleは決断から行動に移すまでが速く(決定プロセスの中でたらい回しにされない)、どの責任が誰にあるかも明快。特にジョブズが承認している案件なら、誰にお伺いを立てずともどんどん進めていいわけです。

ミニマム且つシンプル。少人数チーム。選択肢をむやみに増やさない=製品の数や機能を絞り込む。そう、ジョブズ哲学とは「引き算」の美学にあるのです。「削るものが何もなくなったら完成である」と。

やがて私もiPhoneを使うようになり、本質を追求した機能性とスタイリッシュなデザインに感激しました。改めてジョブズに敬意を抱き、彼の伝記がようやく視野に入りました。

↑は亡くなった直後に出たハードカバー。私はソフトカバーを買いました。ちょうど職場が変わるタイミングで年齢的にも思うところがあり、人生の答えを探すように必死に読み進めました。

いちばん印象に残っているのは「ジョブズはiPodにビートルズのアルバムを7枚入れている」という下巻31章のエピソード。私もビートルズが大好きだからすぐに納得しました。「彼らの音楽こそシンプルで美しいものの代表だよな」と。

そこから「小説や文章にジョブズやビートルズから学んだやり方を落とし込もう」「書店員の業務でも実践してみよう」という発想が生まれました。無駄を省いて迅速に進め、なおかつ常にベストを尽くす。今も続けている習慣です。完璧に実践しているとは言い難いですが、こういう目標があるかないかで日々の意識と景色が変わるのもたしか。

そして最近読んだ↓で、さらに自分の「ジョブズ流」が明確になりました。

ジョブズの生き方には「禅」がかなり影響を与えています。逆に言うと「禅」が難しくて理解できないと感じたら、彼の選んだ決断や創った製品に当てはめて遡ればいい。「そういうことか」となります。理屈ではなく直観で。

目の前の仕事に全力で挑む。いちばん大事だと確信した己の使命に集中する。と同時にそれらに囚われない。置かれた場所でベストを尽くす。でもやりたいことができないなら他の場所を作る。過去や未来ではなく「今」が全て。だがその全てを捧げた「今」という点が将来繋がり、予期せぬ展開で線となる。

↑は私が「禅」と「ジョブズ」から学んだ人生哲学です。水を温めながら冷やすようでロジカルに考えると難解。でも私の中ではこれ以上ないくらいに「シンプル」な答えなのです。

「今更ジョブズ?」と笑う人もいるでしょう。でも私は「今こそジョブズ」と唱えたい。たしかに彼の実績を詳しく知る人は多いです。でも彼らの中にそれらを生んだ哲学を掘り下げ、己に活かせる点はないかと考えた人がどれぐらいいるのか? 

大切なのは知っているかどうかじゃない。活かせているかどうかです。この機会にぜひ。

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