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「名著」へ導く「名著」
今年も「読書の秋」がやって来ました。
ただ意欲とは裏腹に「何を読んだらいいかわからない」「いくら名著でも分厚い本はちょっと」という逡巡が存在するのもたしか。もちろん私にもあります。
そういうときに思い出すのは「やらなければやる気は出ません」というミステリィ作家・森博嗣の名言。実際始めてみてハマってしまえば自ずと興味が沸き「次はこれを読もう」「詳しく知りたいから関連書を探そう」となるはず。
本日はそういういい流れを作る「最初の1冊」に相応しい、多くの店舗で売り切れ状態になっている名著をご紹介します。
中日ドラゴンズの監督を2004~2011年まで務めた落合博満氏。「オレ流」と評される独自の哲学で知られています。高校の野球部を辞め、大学も中退してボウリング場で働いていたという変わった経歴の持ち主でもあります。
現役時代は「首位打者・本塁打王・打点王」の三冠を3度も獲得し、監督としても優勝4回、日本一1回。全てのシーズンでAクラス入りを果たしました。
彼の「オレ流」が広く世間に認知されるきっかけになったのは、やはり2007年の日本シリーズでしょう。8回までパーフェクトピッチングを続けていた山井投手を降板させ、クローザーの岩瀬投手に繋いだのです。当然賛否両論が巻き起こりました。
当時の私は「否」でした。たしかに点差は1点しかなかったけど、歴史的偉業が目前に迫っている投手をなぜ代えるのか、ランナーを出してからでいいじゃないか、と。本書はこの件の真相にも触れています。正直さほど大きくはない、しかし確実に言葉を失う驚きが記されていました。この余韻は森鴎外「舞姫」のラストに感じたものと似ています。
落合さんを好きかと訊かれたら「あまり」と答えます。もう少しコミュニケーションを取って欲しい。でも今回の読書を通じて「こういうリーダーの下で何年間か過ごしたら大きく向上するな」と確信しました。というか向上せざるを得ない。業界の慣習や予定調和や馴れ合いとは無縁だから、常に己を研ぎ澄ませていないとさっさと見切りを付けられてしまうのです。
特に球団の象徴的存在だった立浪選手をレギュラーから外すエピソードを読んだ際は、ナシーム・ニコラス・タレブ 「ブラックスワン」に書かれていた「七面鳥」の話を連想しました。「エサをくれるその手に、いつか首を絞められるかもしれない」「1000日にわたる過程の積み重ねも、次の1日についてまったく教えてくれない」という忘れがちな世の厳しい真理を。
そして落合さんの本といえば↓です。「嫌われた監督」から続けて読むと「あれ? 真逆なこと言ってる?」と感じることがあるかもしれません。考え方が変わったのかそれとも。
ぜひ自分なりの答えを見つけてみてください。読書から得る何かに絶対的な正解はありませんから。「嫌われた~」が売り切れの際はこちらを先に読むのもアリです(両方なかったらゴメンなさい)。
自然な流れで他の「名著」へと知的好奇心を導いてくれる。それも長く読み継がれる「名著」の証のひとつではないでしょうか? よろしければぜひ。
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