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「このご時世」にオススメの一冊

いま集めているマンガはありますか?

私は昨年「ジョジョリオン」が終わったので「キン肉マン」「るろうに剣心・北海道編」だけです。

作者が急逝した「ベルセルク」はもし続巻が出ると決まったら考えます。以前は「こち亀」「デスノート」「バクマン。」などを愛読していました。人生でいちばん影響を受けたマンガは「MASTERキートン」です。

途中でやめてしまったものもあります。「どうらく息子」とか。主役の落語家が二つ目に昇進した辺りから恋愛要素が入って来て「何か違うな」と。「プラチナエンド」も矢の違いを判別しにくいことに加え、主人公に感情移入ができず断念。。。

一方で「やっぱりまた集めよう!」となることも少なくない。置かれた立場や社会情勢の変化によって本に求めるものも変わってきますよね。

精神的に尖がっていた頃は伊坂幸太郎の小説が苦手でした。「リアリティがない」「世の中そんなに甘くないだろ」と。でも仕事で嫌なことが続いて「もう働きたくない」と落ち込んでいたときに「フィッシュストーリー」と出会い、励まされてファンになりました。そういうこともあるのです。

というわけで、今回は「このご時世になったことで改めて魅力に気づいた」マンガをご紹介します。

安倍夜郎「深夜食堂」です。映画やドラマにもなりました。

舞台は新宿・花園界隈です。深夜0時に開店する「めしや」のマスターとお客さんが織り成す、業の深さや喜怒哀楽の妙味を感じさせる人情劇。一話完結なのでどの巻から読み始めても大丈夫です。

毎回登場する料理も楽しみですが、特に興味深いのは常連たちの顔触れ。ヤクザ、AV男優、ストリッパー、ゲイバーのマスターなど。「え」と眉をひそめた方のお気持ちは理解できます。でも当たり前ですが彼らも我々と同じくこの社会で必死に生活を営んでいます。職業に貴賤はありません。そもそも自分たちだっていつ連中と同じ境遇になるかわからないのです。

「多様性」と言うは易し。でもそのフレーズを使いたがる中で己がマイノリティの側に置かれる可能性を自覚している人がどれだけいるのか。そういう意味では「え」と条件反射的に眉をひそめてしまった人にこそオススメしたい作品です。

今回久し振りに最新の24巻を買い「また集めよう」と考えたのには理由があります。本作は「ビッグコミックオリジナル」で連載しているのですが、2020年の春から10か月間休載していたようなのです。まさに東京都で飲食店に休業及び時短要請が出されていた時期ですよね。

連載再開後、マスターは開店時間を早め、密を避けるように訴え、酒類の提供をやめます。丼もののテイクアウトも始めました。作者が社会情勢を取り入れたのです。「あら、もうお店開けんの?」「ああ。どこも時短でガンバってんだ」「そうよね、やんなきゃ食ってけないしね」というお隣さんとの何気ない会話が刺さりました。

「ドラえもん」でのび太がマスクをして登校する姿は見たくありません。マンガやアニメを楽しんでいるときぐらいコロナ禍を忘れたい。でも「深夜食堂」には違った役割があると思うのです。理不尽な状況下でどうにか生き抜こうと踏ん張る姿を描き、同じように苦しむ人たちを元気づける。共に頑張ろうと励ます。いまこそこういう作品が必要なのです。

伊坂幸太郎の小説とはまた異なる形で(突き詰めれば同じかも)、読むとエネルギーが沸き上がる一冊です。ぜひ。

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