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記憶

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架空で空想で夢で現みたいなもの
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私はLの死を直接は知らない。

本当は全部が嘘。

何処か遠くの街で水商売とかをして生き延びていてくれたらなって考えたりする。嘘を吐かれたんだとしても死んじゃってるよりはマシ。

私を含めて友人知人の類いは、Lの家族から悉くよく思われていなかった。知らせを聞いたのも知人経由。

だから、私は冷たくなった彼女を知らない、焼かれて灰になった後の彼女を知らない、暗くて冷たい場所に押し込められた彼女を知ら

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L

出会った当時、私が15歳で、Lは13歳だった。

今年で私は30歳になり、Lは21歳のまま。

若い頃の私は何もかもに厭世的で30までには死にたいとよく嘯いていた。

あの頃からLはギターと歌うのが得意で優しくて賢くて子供のことが大好きだった。保育士さんになりたいと言っていた。

そんな私がここまで生きながらえて、Lが急にいなくなってしまったことがたまらなく許せない。怒りの矛先が分からないが

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今夜は遅くまで友達と飲んでいた。
みんな終電近くで帰った。

私の最寄駅はマイナー路線なので、すでに終電は通り過ぎたあと。ひとつ手前の駅までは電車がまだあるからそこまでは乗って行く。

そこからは歩いて帰るつもり。

ひとつ手前の駅から自宅までの間は、酔っ払いでも歩いて帰るのが苦ではない距離感。

が、楽しい時間のあとは寂しくなるもの。

深夜帯でも時間を省みることはなくLは飲み終わりによく私に電

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大学2年の時分。全休日の深夜1時。

早朝から万年床で惰眠を貪っていた私に友から電話が入った。どうやらバイト先の女性に酷く振られてしまったらしい。

大学時代の私は大変ノリが良い性格だった。
が、何よりも誰よりも惰眠を愛していた。
ので、正直言って面倒くさかった。

私は眠たい頭をもたげながら煙草に火をつけ可能な限り時間をかけて彼の住むアパートへと向かった。

アパートに着くと、彼は車に乗り込んで

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母方の祖母はそれはそれは優しい人だった。
初孫ということもあり私は大変甘やかされた。

幼少期の記憶を辿れば、怒られた記憶はほとんどなく、どこかに連れて行ってもらったり、何かを買い与えられたり、学校帰りにはおやつを作って待っていてくれたりと良い思い出しか残っていない。

時は流れて、私が大学生の時分に祖母は大病を患った。生活にこそ支障はないが、決して現代の医学では完治できないものだった。

何度か

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ここはかつて海岸線沿いに浜茄子の花が自生する様な自然が美しいところであったらしい。

今では見る影もない。海岸沿いの土手もコンクリートで覆われた堤防に様変わりしている。

私は昔から事あるごとに海を眺めに行く。

堤防や砂浜に座って寄せては返す波の動きをずっと見ていた。そうすると心が落ち着くのだ。

13年前、

海が全てを奪い去った後は、しばらく海に行くことが出来なかった。私は運良く何も奪われな

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今日出先で念願のタンカレーNo.10を手に入れた。

ので、1人でしこたまお酒を飲んだ。
たくさん飲んだんです。

「魂の汚れは酒でしか落とせない」

友人の1人が言ったこと。
良いこと言うね。誰かの名言?

卑劣な大人達とやり合って煮え湯を飲まされたり、辛酸を舐めたり、言ってやりたい言葉を飲み込んだりした。

魂があるんだとしたら、しなしなで真っ黒でカサカサだろうよ。

ひとしきり頭がガインガイ

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出来事と記憶

出来事と記憶

「12:56」に起きた。

眠りから覚めても布団でしばらく甘えていた。
頭と身体が言うことを聞かない。

一念発起して立ち上がってカーテンを開ける。
太陽はとうに頭上に昇っていた。

そのまま窓を開ける。夏が身体中に纏わりつく。いつかの気象予報士が言っていた。今年の夏は暑くなるって。

冷夏は消息不明になって久しい。いったい何処へ。

夏は、暑いのは、嫌いだ。

いつかの気象予報士はこうも言ってい

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順風満帆に見えた休職ライフも2日目にして早くも陰りが見えた。

このまま何もしなくていいのだろうか。
毎日のルーチンワークをこなした後の空き時間。
ひたすら長い時間。

何だかソワソワする。

罪悪感とまでは言わないが不快感が腹の底から沸々と湧き上がってくる。

ただ休むって何だっけ?

ゲーム、読書、映画、音楽、散歩…
どれも何だかしっくりこなくて集中力が続かない。

気づいたら横になってうとう

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昨日の朝兼昼食後にうとうとしてそのまま横になり、ぐっすり寝てしまったせいで未だ寝付けずにいる。

完全に昼夜が逆転してしまった。

カーテンの隙間から漏れ出す光が何だか懐かしい。

大学時代を思い出す。

深酒した日は決まって数時間で眠りから覚めて、その目はギンギンで再び眠ることはかなわなかった。

そんな時は煙草をふかしながらコンビニまで歩いた。コンビニに着くと店で1番安くて腹の満たせそうな物を

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眠れないことが続いている。

最近休職期間に入ってからというもの簡単な家事や買い物以外では、ほとんど身体を動かしていないことに気がついたのである。

眠れないのも当然ではないだろうか。
そりゃ疲れていないのだから。

なので、夜の散歩に出かけることにした。

「20:02」
散歩コースは特に決めず思うがまま歩みを進めた。

何となくで自身が通っていた小学校まで行った。数分で校門まで着いた。思

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