帳尻が合わさる【ONSEN RYOKAN 由縁 札幌@札幌駅】(2/2)
新千歳空港には14時ごろに無事到着し、そこから電車に乗り換えて札幌駅に移動すると、東京とはうってかわって、外は少し涼しく過ごしやすい快適な気候だった。
都内では蒸し暑さのあまり、熱中症のリスクを考えると外を出歩く時にマスクなんてしていられないのだけれど、ここではマスクを着けていても全く不快感や息苦しさを感じることが無い。
札幌には約10年前、当時まだ大学生だった頃に教授やゼミ仲間たちと共に研修合宿で訪れたことがあった。といっても、企業訪問などはおまけのようなもので、学生たちは飲み会のことしか頭になかったのだが。
そんな懐かしさに浸りながら歩いていると、札幌駅から8分ほどで今回お世話になる宿に到着した。
「素敵な佇まいじゃないですか〜」
そう、今回訪れたのは「ONSEN RYOKAN 由縁 札幌」だ。たまたま札幌に用事ができて、その活動拠点としてこれから日曜日まで宿泊することにしたのである。
さっそく館内に入ると、モダンで和テイストなデザインの高級感漂うエントランスが広がっていて、お香のような心地のいい香りが僕の気分を高揚させた。
(公式サイト: https://www.uds-hotels.com/yuen/sapporo/ )
チェックインを済ませて部屋に向かうと、これまた高級感のあるシンプルでモダンな和テイストの空間が広がっていた。隅々まで手入れが行き届いていて、とても落ち着く部屋だった。
(公式サイト: https://www.uds-hotels.com/yuen/sapporo/#room )
初日は特に予定がなかった僕は、さっそく館内着に着替えて浴場へと向かうことにした。
エレベーターで2階に降りると、すぐ目の前に湯上がりの休憩スペースが設けられていて、ここから先は男女で分かれることになる。
僕がここで驚いたのは、アイス(北海道バニラ)が無料で用意されていたことだ。このような粋な計らいに、その店舗の経営者の哲学が現れているものだと思う。
僕は湯上がり後のアイスを楽しみに、奥へと進んだ。
脱衣所も想像通り清潔感があって、落ち着いた大人向けの仕様だった。僕の期待はさらに高まり、手際良く準備を済ませると、いよいよ浴場へと足を踏み入れたのだった。
「おぉ〜、素敵すぎる……」
(公式サイト: https://www.uds-hotels.com/yuen/sapporo/onsen/ )
浴場は全体的に薄暗くシックなデザインで、中心には直径2メートルほどの岩を削って造られた水風呂がある。お風呂には北海道登別市から運ばれたカルルス温泉が使用されていて、ミネラル分が溶け込んだお湯の香りがほのかに漂ってくる。全く混雑している様子もなく、内湯とは別に十分な広さの露天風呂もあるので、快適に過ごすことができそうだ。
僕はさっそく身を清めて、まずは内風呂に浸かることにした。肌にしっとりと馴染む良質なお湯が心地よかったのだけれど、内湯はさらに奥に続いているようだった。
お湯の中を歩いていくと、小部屋のように仕切られている薄暗い空間に繋がっていて、そこはまさに ”メディテーションスパ” といった造りだったのだけれど、僕が驚いたのはそれだけではなかった。なんと、その突き当たりの扉を開けると露天風呂に繋がっていたのである。つまり、露天風呂と内風呂が一体構造になっているのだ。これには流石に興奮を隠せなかった。
(公式サイト: https://www.uds-hotels.com/yuen/sapporo/onsen/ )
「では、行きますか」
僕は体を温められたところで、いよいよサウナ室へと向かった。全身の水分をタオルで拭き取り、ゆっくりと扉を開ける。
「めちゃめちゃ良いじゃないですか……!」
(公式サイト: https://www.uds-hotels.com/yuen/sapporo/onsen/ )
サウナ室の中はコの字型の二段構成で7〜8人ほどが座れるようになっていたが、感染対策のために間引きされて3人までの入室制限がかかっていた。囲いの向こうにはMETOS製のストーブが2台設置され、室温は87℃程度に維持されている。
僕は間接照明によって浮かび上がる座面に腰をかけ、そのまま無音の落ち着いた空間で静かに蒸されていると、数分で全身から大量の汗が流れ出した。
ーーそろそろ出よう……。
僕は立ち上がってサウナ室を出ると、汗をお湯で洗い流してから、冷水が貯められた岩の中に身を委ねたのだった。
「おお! ちょうど良い冷たさ!」
水温は19℃程度。水は常にかけ流されていて、特に説明は見当たらなかったものの、肌あたりは優しく、おそらく水道水ではなくミネラル豊富な天然水が使用されていると思われる。
そこで十分に冷やされてから露天スペースに移動し、そこのベンチに腰をかけて脱力すると、僕は多幸感に包まれたのだった。
その日はそのまま就寝をして、2日目は用事を済ませてから、札幌行きが決まったと同時に予定に組み込んでいたサウナ施設へと向かった。
ただ、その店舗は札幌駅からのアクセスが良く、メディアにも取り上げられることが多いのだけれど、有名店というだけあってか館内は大変混雑していて、浴場も人で溢れかえって賑わっていた。詳細は割愛するけれど、施設自体の満足度は非常に高く評価もされているはずなのだが、僕の心は穏やかではなかった。
やはり、どれだけ設備やセッティング、そしてサービス内容に力を注いだとしても、店舗の思想は客層や接客などに現れてしまうのだ。これは過去に数十箇所のサウナを巡った結果辿り着いた、僕なりの結論である。
結局、5時間コースで入館したものの2〜3時間程度で退館してしまい、少し札幌市街を散策してからホテルに戻って夕食を軽く済ませて、僕は再び浴場へと向かうことにした。そして昨晩と同じように手際よく準備を済ませてから、サウナ室で今日の出来事を振り返っていた。
やはり、どれほど評判が良くメディアに取り上げられるような店舗であっても、客層次第では全てが台無しになってしまう。よく雑誌やテレビで「いま注目のサウナ」のようにおすすめのサウナが紹介されているけれど、客層まで触れられることは無い。
ただ、店舗によって明らかに客層に違いが見られることはサウナ愛好家の間では共通の認識となりつつあるだろう。
それでいうと、ここ由縁に関しては総じて落ち着いたお客さんばかりで非常に居心地が良い。そして、そんな僕の目の前に現れた一人の男性客の登場によって、それは決定づけられた。
ーー素晴らしい……。
その30歳前後と思われる男性は、全ての所作が美しかった。濡れた体をしっかりとタオルで拭きあげてからサウナ室に入り、乱れているサウナマットをきれいに敷き直してから座り、水風呂に入る前には水風呂からすくった水を他のお客さんにかからないようにしゃがんだ状態で頭から被り、もちろん水風呂に潜ることはなく、それから露天スペースのベンチにしっかりとお湯をかけてから座り、休憩が終わると再びベンチにお湯をかけてからその場を立ち去った。
周りへの配慮を欠かすことなく自分自身の快楽を極めようとする姿に、僕は終始見惚れてしまった。そして、このようなお客さんばかりになれば、サウナで余計なストレスを感じることもなくなるだろうとも思ったのだった。
ーー最高の1日になったな……。
僕は外気浴をしながら、心の中で彼に向かって「ありがとう」と呟いた。
人生は帳尻が合うようにできているのかもしれない。悪い出来事のあとには、良い出来事が起きるものなのだ。嫌なことがあったとしても、そこで立ち止まる必要なんて無いのである。
(written by ナオト:@bocci_naoto)
YouTube「ボッチトーキョー」
https://www.youtube.com/c/boccitokyo
①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます