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心を開いた相手【徳の湯@東白楽駅】(2/2)

 白楽駅で降りると、そこには友人が僕を笑顔で待ってくれていた。その友人は自他ともに認めるグルメで、まずは行きつけだという飲食店に案内してもらい、軽く食事をすることにした。

 数ヶ月ぶりに会った友人とは会話が盛り上がり、それだけでも楽しかったのだけれど、本番はここからだ。僕たちは、そこから歩いて次の目的地へと向かった。

「これが噂の銭湯か!」

 そう、今回訪れたのは横浜市にある「徳の湯」だ。その友人が以前から通っている銭湯で、東白楽駅からであれば歩いて1分かからない場所にある。日によって1階と2階とで男女の浴場が入れ替わるそうだが、今回は男湯が1階だ。
 僕たちは中に入り、さっそく受付を済ませたのだけれど、入浴料はサウナ込みで590円という非常に良心的な価格設定である。そして脱衣所へと進み準備を済ませた僕たちは、各々浴場へと足を踏み入れた。

「広いな〜!」

ーー引用:神奈川県公衆浴場業生活衛生同業組合

 今までにさまざまな銭湯に足を運んだが、その平均よりも1.5倍ほどの広さがあるのではないかと思えるほどゆったりとした空間が、目の前に広がっていた。なお、すでに友人とはこの時点から別行動である。
 僕はさっそく身を清め、巨大なお風呂で体を温めると、いよいよサウナ室へと向かい、扉をゆっくりと開けた。

「ほぉ、なかなか渋い」

 いわゆる昭和ストロング系に分類されるであろうタイプのサウナ室の中は比較的明るく、温度計は135℃付近を指しているが、実際には100〜105℃程度といったところだろうか。室温はガス遠赤外線ヒーターによって十分に高められていて、湿度は低くカラっとしている。
 10人以上が座れるほどの広さがある2段構造で、僕はその上段に腰をかけ、テレビを眺めながら静かに蒸され始めた。すると、みるみるうちに体温は上昇し、全身から汗が流れ出して、心臓の鼓動が激しくなり、呼吸が荒れていったのだった。

ーーそろそろ出るか。

 僕は限界を迎えたところでサウナ室を出ると、そのままの勢いでシャワーを頭から浴び、サウナ室の正面にある水風呂に肩まで一気に浸かった。

「おお! これはなかなか良い!」

 バイブラによってぶくぶくと循環する冷水の温度は16℃と、僕の体質にぴったりの設定だ。30秒ほどかけてゆっくりと深呼吸をしながら身体を落ち着かせた僕は、そこから立ち上がって露天スペースへと移動し、露天風呂で足湯状態になりながら目を閉じた。そして外の新鮮な空気を思い切り肺に取り込み、それをゆっくりと深く吐き出していくと、無意識に僕の体は脱力していき、表情が緩んでいったのだった。

ーーなんだろう、この落ち着く心地よさは。

 この体験をたったの数百円で味わうことができるとは、なんという贅沢だろう。友人の提案で訪れることになった徳の湯に、僕の心はすっかりと奪われてしまっていた。
 それから数分後、再びサウナをいただいてから休憩をしていると、あとからもう一人の友人が合流し、ようやく3人揃うことができた。といっても、阿吽の呼吸で別行動ではあるのだが、この適度な距離感がちょうど良いのである。
 この2人とも、自分から自分の話をするというよりは、お互いに相手の話に耳を傾けつつ、それに応じて自分自身の話も織り交ぜるようなコミュニケーションを取るため、一緒にいて居心地がとても良いのだ。だからこそ僕はこの2人のことを信頼しているし、僕が「サウナ仲間」だと認識している数少ない友人となっている。むしろ、今のところ僕にはこの2人以外に裸の付き合いを持つことができる友人がいないほどだ。

ーーでも、それで十分なんだよな。

 友人関係の価値は「数」なんかでは決して測ることができない。そうではなく、心を開くことができる相手が1人でもいれば、それだけで人生は楽しくなるものだ。
 浴場を出て友人らと外で待ち合わせると、そのまま僕たちは自然な流れで近くの居酒屋へと歩き始めた。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます