ゆとりの攻防戦【天然温泉 豊穣の湯 ドーミーイン池袋@池袋駅】(1/2)
僕は一般的な家庭で育った。生活する上で特に不自由なことはなかったけれど、贅沢をした記憶も無い、ごくありふれた中流家庭である。今考えたら、それ自体が幸せなことだったのかもしれないけれど、やはり生活水準の高い友人への憧れは少なからず持っていて、次第にお金に興味を持つようになっていった。
そんな僕も大人になり、社会に出て自分で稼ぐようになった。新卒で入社した会社の給料はそれほど良いものではなかったかもしれないけれど、とはいえそれまで自分がアルバイトで得ていた収入に比べたら大金だ。
しかし、まとまったお金が手に入るようになったことで人生がより豊かになるのかと思いきや、実際はなにも変わらなかったのである。むしろ、上司や理不尽な取引先に対して抱くストレスは日に日に大きくなり、日常への不満は残ったままだった。収入は増えているにも関わらず、である。
その時に気付いたのだった。僕はお金が欲しかったわけではないのだと。お金はただの金属であり、紙切れであり、データなのだ。それらをいくら集めたところで、問題を根本から解決することはできなかったのである。
お金とは物事の価値交換をスムーズにするための、ただのツールでしかない。その存在自体は重要ではなく、「お金が欲しい」という言葉の裏には、そのお金と交換することによって得られる別の ”なにか” が存在しているはずなのである。
ーー僕が本当に手に入れたかったものは、なんだったのだろうか。
この疑問は、会社員を辞めて独立してから少しずつ解消されていくことになった。フリーランスとしてのキャリアがスタートして、苦手な同僚や上司と毎日顔を合わせる必要も就業時間をコントロールされることも無い生活を手に入れることによって、それまで抱えていた不満が徐々に薄れていったのである。
おそらく、僕が本当に必要としていたものは、お金ではなく「ゆとり」だったのではないだろうか。
毎日自分が食べたいものでお腹を満たすことができ、十分な睡眠時間を確保できて、ストレスを感じる相手とコミュニケーションを取る必要もなく、たまに気分転換がてらサウナや温泉に出かけることができる。その程度の安定した生活を送り続けられる未来が確約されていれば、幸せを感じることができるのかもしれない。僕の人生に刺激なんて不要なのだ。
リスクを冒してまでそれ以上のものを手に入れるモチベーションは無く、自分にとって最低限の安定した生活を維持するために必要なものさえ揃っていれば十分なのである。
それを手に入れるためにどうしてもお金が必要なのであれば仕方なく稼がなければならないけれど、どうやらそういうわけでも無いらしい。これといって物欲も無く、ゆとりさえ手に入れることができるのであれば、お金は必ずしも必要なものではないのだ。
そんな性格だからか、僕は自分が経験したことの無いものに対して警戒心や不安を抱きやすく、逆に一度でも経験したり手に入れたりすれば関係性を長く維持できるように努めている。10年以上着ている服なんて何着も持っているし、壊れない限りは物を買い換えることも滅多に無い。これは飲食店や娯楽施設でも同じで、過去に利用したことのある店舗には何度も足を運んでしまう。
ただし、例外もある。チェーン店の場合は、1店舗でも利用経験があれば別の店舗を抵抗なく利用することができるのである。基本的にチェーン店には共通のマニュアルが存在するので、どの店舗に行っても一定の品質のサービスを受けることができる安心感があるし、こちらとしてもすでに利用上のルールやマナーを心得ているので気持ちが楽なのだ。
ーーそういえば、あのサウナ業界の人気ホテルチェーンが新しい店舗をオープンしたんだったな。
僕は公式サイトを開き、池袋に新しくできたばかりのそのホテルを予約したのだった。
ーー後編に続く
(written by ナオト:@bocci_naoto)
YouTube「ボッチトーキョー」
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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます