記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画「生きる LIVING」を観て

5月18日「生きる LIVING」という映画を観た。
原題は「Living」。2022年のイギリス映画で、オリヴァー・ハーマナス監督の作品だ。

キャストは、ロドニー・ウィリアムズ役のビル・ナイ、マーガレット・ハリス役のエイミー・ルー・ウッド、ピーター・ウェイクリング役のアレックス・シャープなどである。

あらすじは、

1953年のロンドン。若いピーター・ウェイクリングは市役所の市民課に就職した。課長であるロドニー・ウィリアムズは大変な堅物(かたぶつ)で他人を寄せ付けず、部下たちは冗談を言うことも控えていた。ある日、陳情書を持ち込む婦人たち。汚水まみれの小さな資材置き場を子供たちの遊び場に変えて欲しいという陳情で、彼女たちは何ヶ月もたらい回しにされながら市役所に通い続けていた。しかし、無表情なまま陳情書を未決の棚に放り込むロドニー。
ある日、医者から末期ガンを宣告されるロドニー。寿命は半年か長くて九ヶ月だった。同居の息子夫婦に話そうとするが、日頃から疎遠で言いそびれるロドニー。彼は初めて役所を無断欠勤し、海辺のリゾート地に行って羽目を外した。だが、性に合わずにロンドンに戻り、出勤するふりをして町をさ迷い歩くロドニー。
町でロドニーを見かけ、声をかける部下のマーガレット。カフェに転職して副店長になるという陽気なマーガレットを食事に誘うロドニー。その姿を見た近所の噂好きの主婦が息子の嫁に告げ口し、浮気を疑う息子夫婦。父親に意見しようと意気込むが、厳格な父を前にすると息子は何も言えなかった。
3週間も無断欠勤を続けた末に、マーガレットが転職したカフェに行くロドニー。マーガレットはウェイトレスとして働いていた。「副店長」は店員募集のセールストークだったのだ。時間の潰し方が分からないからと、マーガレットをデートに誘うロドニー。仕事をサボることに反対なマーガレットに末期ガンだと打ち明け、明るく前向きな彼女のように一日でも生きたいと話すロドニー。翌朝、役所に復帰したロドニーは人が変わったように意気込んで、土砂降りの中、陳情されていた遊び場の現場に向った。
ロドニーの葬儀に集い故人を偲ぶ人々。陳情した婦人たちはロドニーが一人で遊ぶ場を作ったと彼を讃えたが、手柄は他の部署やお偉方に横取りされていた。ロドニーは他の部署に苦労して話を通し、渋る役人たちやお偉方を説得して遊び場を作り上げたのだ。
夜、ロドニーの遊び場に行く新入りの部下ピーター。職務質問して来た巡査は彼がロドニーの部下だと知ると、ロドニーが亡くなった晩の話をした。雪の降る中、ロドニーは遊び場のブランコを漕ぎ歌を歌っていた。その姿が幸せそうだったので帰宅を促さなかったと悔やむ巡査。ロドニーはその直後に亡くなったのだ。ロドニーは凍死ではなく末期ガンだったことを告げ、最高に幸せだったのだとピーターは巡査を慰めた。

出典:Wikipedia

といった内容。

で、観終わっての感想。

人が生きる意味は、何なのだろう

とてもいい映画だった。展開や内容は地味であるが、ボクの心の中にはグッと入り込んできた。
主人公のロドニー。年齢的にもう仕事もあとわずかであろう。本当にある意味かたぶつなくらい波風を立てずに、無難に役所の中で働いてきたのだろう。もし彼に、がんが宣告されなければ、その人生はさざ波のように、静かだったのかもしれない。
「生きる」という意味を考える余地さえなかった人生に思える。

有限な命の時間がわかると、人は気づく

医師から余命半年と告げられた彼。
そこからの人生は、まさに「生きるということに気づいた人生」のように思える。
ロドニーは、有限な命の時間を知ったとき、生きるという意味を彼なりに解釈したのかもしれない。
しかしながら、彼に残された時間はわずか。
そのわずかな時間を、彼は一つの案件に全力を傾けるのである。
彼が選んだのは、家族との時間ではなかった。
今までの生き方を変えたのだ。
それが彼の生きるという選択肢だったように思える。

余命を息子にも知らせなかった意味

余命が半年の宣告を受けたことを、息子にも話さなかった。
会社の部下のマーガレットにだけ打ち明ける。
映画の中で、「息子は可愛いが彼には彼の人生がある。」と言っている。それは本心であるとは思うが、それだけではないとボクは思った。
彼は、マーガレットを、人として信頼していたからではないだろうか。
そして、ピーターにも進展で手紙を残した。これも同じ理由だった気がするのだ。そこには年齢差など存在しない。人として、そして未来を託したい信頼できる若者に対して、気持ちを伝えたかったのかもしれない。

誓いを立てても、変わらなかった部下

ロドニーの直属の部下が、彼の死後に課長職になる。
ロドニーの葬儀を終えた列車の中で、部下たち4人は、ロドニーの残した生き方を受け継ごうと決意する。決して仕事を先送りしないことをである。
しかし、それもその時だけで終わる。
次第に以前の姿になってゆく部下たち。
ピーターだけが、その姿を冷静に見ている。
ロドニーはそれを見越して、ピーターに手紙を送ったのかもしれない。
「若い君は、そのようにはなるな」と。

この映画を観て、黒澤明監督の「生きる」を観たくなった。
近いうちに、必ず観たいと思うのだ。

この記事が参加している募集

#映画感想文

66,723件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?