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夜の少年と星の少女|情景|詩




「...だってもうこの星は
 壊れてしまったのに?」

泣き出しそうな瞳で
少女は言いました

少年はほほえみ
蒼い、澄んだ声で
そっと言いました

その瞳は銀をかくして静かに光る
深い夜のようでした

「大丈夫。
 眠りについた人たちの夢を
 すべて燃やして
 その灰をそらに溶かしたら
 天の川ができるから

 ―さあ行こう
 ぼくたちのつないだ指と指で
 はじまりを描くんだ」

そう云うと
少年はくつを脱いで
星の糸をたどるように
まっすぐに夜空へと
駆けのぼりはじめました

少女は
約束の小指が
はなれないように
夢中で
少年のあとを追いました





🌠 麻衣です!さんによる朗読



いつかnoteに載せようと思っていたこの詩を、麻衣です!さんのコメント欄に書き込みました(そのほうが敷居が低かったので)。
麻衣さんが朗読してくださったので、並べてのお披露目となりました(^^)/

たとえば。「蒼い声」って、どんな声なのだろう、と、突き詰めて決めないまま書いているので、それを朗読してくださる麻衣さんは苦労が多いのではないかと思います(^^ゞ

にもかかわらず、そこは軽々と飛び越えて彼女の世界観を引き出してくれるので、いつも感心。

新たな光をあててくれる麻衣さんの朗読に、ときめいています。

麻衣さん、ありがとう(^^)♡



🌠 この詩のこと

わたしのなかにいる少女がふとしたときにいつも泣き出して言う言葉。
それが、「だって、もうなにもかも壊れてしまったのに?」です。

大人になった私は、これはきっとヒロシマのことなんだろう、と"理解"しています。ほんとうは、ぜんぜんちがうのかもしれないけれど。


もう、夏ですね。
気づけば、8月6日まで、2週間を切りました。
今年の8月6日はどうやって過ごそうか...特別なことはしなくても、一日...いえ、一週間を、一年を、静かに、大切に過ごそうと、カウントダウンを始めるのが、梅雨明けの頃。


小学4年生の時に社会見学で訪れた原爆資料館。心のごく小さな一部なのかもしれないけれど、徹底的に破壊し尽くされた破片を抱えることになったのです。心を地図にたとえるなら、壊滅した地平、永遠の廃墟が広がる場所がある。

創作とは、無意識の深みから銀色の糸をたぐり出すようなもの。
ですが、私の場合は時おり、自分のものではないはずの生々しい傷や深い怒り、崩れ去った荒野がたぐり寄せられてしまって、慌てて手を放すことがあります。

それが怖いから、あまり手当たり次第には書けず、うまく避け得た世界、せめて"儚さ"に軽減できた世界を、繰り返し読み返して手を入れる性分なのかもしれません。


私は、亡くなった人たちの死を無駄にはしません。無駄になるはずがないのです。かつてたしかに生きていた人たちだから。

そんな思いが引き出されてきた詩なのかな、と思っています。(本当は、ぜんぜん違うかもしれないけれど。)

《つねに、書き損ねたところにこそ、本来の自分が現れる》
《意図しないディテールに、自分自身が宿る》

そう教えてくださったのは、中島智さん。(要約)

だから、麻衣さんは、私の書き損ねたところに眠るメッセージを受け止めて、朗読してくれたのかなと感じています。―それが何なのか、私にも麻衣さんにも、名指すことができないとしても。


タイトル画像はmashakotscur様@stock.fotoです。


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