【漢詩解説】②杜甫:丹青引赠曹将军霸〈書き下し文・日本語訳〉*白文音声あり*
こちらをお読み頂いてからご覧ください。
杜甫:丹青の引 曹将軍覇に贈る
今回は中盤の解説として
「凌烟功臣少颜色」から「一洗万古凡马空」
までを紹介します。
【用語説明】
凌烟功臣…凌煙閣。唐太宗は文武開国の功臣に褒賞を与えるため、貞観十七年(643)に閻立本らに命じて凌煙閣に二十四功臣図を描いた。
少颜色…功臣図が年月によって色あせていくこと。
开生面…曹覇が描き改めて、再び生き生きとしたありさまになったこと。
良相…優れた宰相。
进贤冠…唐代、文武の官が朝参するおりの冠。黒い布で作られている。
大羽箭…矢羽を四枚はいだ、大笴の矢。
褒公…段志玄。輔国大将軍、揚州都督、褒国忠壮公になった。
鄂公…尉遅敬徳。開国府儀同三司、鄂国公になった。
毛发动…画が生き生きして真に迫っているさま。
来酣战…戦場の真っ只中にいるようだ。
玉花骢…玄宗の乗る馬。
如山…数が多いこと。
貌…えがく。
不同…少しも似ていない。
是日…曹覇が玄宗の馬を描いた当日。
赤墀…丹砂をしい宮殿前の階段。「墀」は飾り塗りした地面。丹砂(赤い砂)で塗り込めたのが赤墀。
阊阖…天の紫微宮の門。
生长风…遠くから風が吹いてくること、転じて馬の威風のあるさま。
拂绢素…白い画絹をのべ広げて絵を描く。
意匠…書画をかいたり文を作るにあたって、意を用いて工夫すること。
惨澹…さまざまに苦心すること。
经营…構図を決めること。
九重…天子の宮殿。
真龙…描き出された真の竜馬。
万古凡马…古来、多くの画家が描いたつまらぬ馬。
【解説】
詩の背景・概要はこちらの記事をご覧ください。
【日本語訳】
凌煙閣の功臣の像が
いつか色あせてきていたのを
将軍が一度筆を下すと
たちまちよみがえるその姿
名宰相のかしらに戴く進賢冠
猛将軍の腰にたばさむ大羽箭
褒公も鄂公も生き生きと
その毛髪が動くばかり
英姿颯爽として今戦いの最中のよう
先帝の御馬玉花驄
あまたの画工が描いたが
どれも真の姿に似つかない
この日御殿の階の下に牽き出させると
はるか宮門に立っただけで
さっと一陣の風が吹き渡った
詔していう
いざ将軍 画絹をのべてこれを画けと
苦心惨澹 意匠をこらす
たちまち九重の宮中に
まことの竜馬があらわれて
古来の凡馬を一洗し去った
【書き下し文】
凌煙の功臣 顔色少なし、
将軍筆を下して 生面を開く。
良相頭上の進賢冠、
猛将腰間の大羽箭。
褒公鄂公 毛髪動き、
英姿颯爽として酣戦の猶し。
先帝の御馬 玉花驄、
画工 山の如く貌せども同じからず。
是の日 牽き来たる赤墀の下、
迥かに閶闔に立って長風を生ず。
詔して謂う 将軍絹素を払えと、
意匠惨澹たり経営の中。
須臾にして九重に真竜|出で、
万古の凡馬を一洗して空し。
漢詩解説は以上になります。
残りの詩「玉花却在御榻上」から「终日坎壈缠其身」までの解説は12/25の投稿をお待ちください。
応援したいと思ってくれたらうれしいです! これからも楽しく記事を書いていきます☆