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    診断メーカーのお題で書いたものです。創作多め

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    ランダム辞書で出た単語をお題に書いています

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丑三

【2016.5.30 人のキャラを借りて書いた】 幼子とはなんとも可愛いものだ。 「恐ろしい夢を見た」と枕片手に目を擦り、添い寝をしてくれと愚図る姿のいじらしさたるや。 下のきょうだい達が小さい頃は、そんな風に部屋へやってきては兄である自分が彼らの寝息を聞くまで丸い腹や背中をゆっくりと叩いてやった。 そんな思い出が今となって蘇る。 「蜘蛛兄さん、添い寝してくれませんか」 随分と成長した弟を目の前にして。 『丑三』 三男・鼠切丸は決して男兄弟に執着を持つような性格で

    • ある夜の話

      玩具は夢を見ない。そもそも眠りにつくこともなければ、空腹を感じることもない身体を持つ。しかしそれでも、彼らの世界に夜は訪れるもので。 ─── 「今夜はなにしようかな。ねえ兵隊さん」 瓦礫とガラクタの山がどこまでも広がる灰色の世界の空には、その大地とは対照的な無数の星が輝いている。 時間という概念があるのかも分からないし、そもそも星の光かどうかは分からない。もしかしたら巨大な廃棄プラネタリウムの中にいるのかもしれない。だけど灰色の世界の住人のとって、この星空のような光景が

      • 独白(海藤×佐波)

        佐波視点 ————— 耳触りのいいその声が、好きだと思った。 「〜♫」 朝。偲が気怠げな身体を這わせてでも布団から出てきたのは、ベッドルームまで漂ってきた焼き鮭の香りに釣られたからに他ならない。ぺたぺたとダイニングまで足を運べば、次第に米の炊ける匂いや味噌汁の香りも混ざり始める。 それと同時に、低い、しかし機嫌の良い鼻歌も聞こえてきた。『彼』は少しばかり怖い見た目をしているが、多分料理が好きなのだろうな。なにせ味も文句の付け所がない。料理の楽しさというのは、自

        • キャラクター設定(海藤/七瀬)

          名前:海藤 秋介(カイドウ シュウスケ) 性別:男性 年齢:28歳 誕生日:11月5日 職業:暴力団 暴力団に所属する男。 仕事で負傷し追われているところで佐波と出会った。「傷が癒えるまで」と匿ったところ、一向に出ていく気配が見られず、奇妙な同棲生活が始まってしまう。仕事一筋の佐波に対して頻繁に食事を作ったりする様子が見られる。見た目に反して世話好きのようだ。 「悪い、少しだけ黙ってろ」 「お前ここで本当に生活してんの?なんもねえじゃねーか」 「食えよ。なにって?飯だ

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        記事

          一節

          大小様々な肉片と、蛭のような血の塊が辺りに散らばっている。 恐らく彼女が『食事』をしていたのだろう。 そんな推測が、胸糞の悪さと共に嫌でも込み上がってきた。

          『とても弱い魔女の話』

          一人は小さな魔女だった。 特性は「語り部」 知れば知るほど強くなる。そんな魔法。 けれど魔女は無垢だった。 目を背けてはならない。これから全てを知ることだろう。真実を、悲劇を、この物語を。 一人は臆病な魔女だった。 特性は「獅子」 怒れば怒るほど強くなる。そんな魔法。 けれど魔女は優しかった。 恐れてはならない。悲しみを知るがいい、絶望を味わうがいい。怒りとは憎悪にあらず。 一人は愚直な魔女だった。 特性は「案山子」 悩めば悩むほど強くなる。そんな魔法。

          『とても弱い魔女の話』

          ランダム辞書SS④

          「プラモデルの塗装なんて何が楽しいのかしら」 そう言って、形のいい爪にふぅと息を吹きかけながら彼女はテレビを一瞥。けれど僕の視線の先にある彼女の爪は、綺麗なピンク色に彩られていて。これから更に上塗りするらしい。 「君のそれもあまり変わらないと思うけれど」 「んま、失礼ね。そう言うなら貴方のそれもおんなじ」 君こそなんて失礼な。 「絶対あげないから」とそっぽ向くと、僕はチョコレートたっぷりのザッハトルテを頬張った。 『コーティング』 ——— 近頃寝た気がしないのです

          ランダム辞書SS④

          過去作②

          「レジお願いしまーす!」 さっきからカウンターに向かって怒鳴っているのに。 自分の他に客一人いない深夜のコンビニ。それどころか店員の姿さえなく、有線だけが虚しく響き渡っていた。 「あのー!すみませーん!」 これも何度目だろうか。思わず溜息をついて、一度はカゴに入れたアイスを掴んで冷凍棚に戻す。防犯カメラだってあるのだし、このまま商品を盗んで行くわけにはいかない。だが、それにしたってあんまりだと思う。お金はあるのに煙草だって買えやしないのだ。 帰ったら絶対にクレームを出し

          過去作②

          過去作①

          「話をしようじゃないか」 ぐずる子供に語りかけるような口調でその人は言う。私が声のする方を一瞥して返事をしないでいると、それを肯定の意と捉えた彼は、やがて歌うように言葉を紡ぎだした。 「むかーしむかし、そのまたむかし、そのまたむかしのおおむかし…」 「…またそのお話ですか?」 口を開けば、彼はたいそう嬉しそうな表情を浮かべるのだ。 「今日は違うよ。小さなドラゴンに関する豆知識でも、臙脂色のスプーンの物語でもないさ」 そう言って小さく手招きする男の元へ歩いて、弧を

          過去作①

          ランダム辞書SS③

          「一体どこまで行くつもりなんだい」 「もうちょっと」 僕の声なんて聞こえていないかのように、彼女は知らない道をどんどん歩き続ける。「ふたりで行きたいところがあるの」だなんてお誘いに、ほんの少しの期待を寄せてふたつ返事でOKしたものの、今僕がいるのはオシャレなお店でもアパートの一室でもなく、もう見渡す限りの大自然で。こういうのも悪くはないけれど。 歩きながら適当に見渡すが、目ぼしいものは特にない。知らない土、知らない虫、知らない風に知らない草木——おや。ふと、見覚えのあるギ

          ランダム辞書SS③

          取り返しがつかない話

          「お前なんか消えちゃえばいい!」 「本当によろしいですか?」 「あぁ、どうぞ!もう知らない」 「データ初期化中。ファイルを消去しています。絶対に電源を切らないで下さい」 「えっ、ちょっと待って」 「88%完了…92%完了…」 「ねぇ、駄目だって、待ってよ」 「初期化が完了しました」 「ああ…ああ」 「初めまして!私はあなたのパートナーロボです!あなたの名前を教えて下さい」 「ねぇ…本当に消えちゃったの…?」 「ねぇ本当に消えちゃったの さんでよろしいですか?」 「違う」 「あ

          取り返しがつかない話

          ランダム辞書SS②

          過去のもの寄せ集め ——— 「書いてあるアドレスをタップしたら携帯がおかしくなったのよ。見て!」 そういって彼女が突き出してくるスマホの画面をまじまじと見つめる。異形、異質、異物、異色、異音…悲しいことに、一目でわかった。 「随分な災難だな。この世のURLじゃないよ、これ」 『URL』 ——— 軽く力を入れれば、ぷつりと音を立ててフォークの先端が柔らかな肉に食い込む。美しく光る銀色に、滴るほどの赤い肉汁が纏わりつくと、それはより一層わたしの食欲をかき乱した

          ランダム辞書SS②

          ランダム辞書SS①

          ランダム辞書で出た言葉がお題 ——— 「出したものくらいキチンと片付けなさい」 仕事帰りにスーパーで買ってきた食材を冷蔵庫に入れるのも忘れて、一番下の娘を叱りつける。なにせ、彼女がこの家一番の散らかし職人であったから。ところが娘はオモチャを弄りながら柔らかい頬を膨らませた。 「私じゃないもん」 どうやら見当違いだったようで、機嫌を損ねたらしい。先程まで宝物のように抱き締めていたウサギのぬいぐるみを放り出し、床中に散りばめられた彩りの数々にまた一つピンク色を加えてみせ

          ランダム辞書SS①

          収まりきらなかった診断SS④

          「好きなんですか?」 昼休み。聞き慣れた声が不意に耳に飛び込んできて内心肩が跳ねる。まばたきしながらギクシャクと振り向けば、永源先生がニコニコとこちらを覗き込んでいて。 「あー…っと…?」 「椎名先生いつも食べてますよね、それ」 そう言って軽く指差したのは、自分の手に収まっていた焼きそばパン。思えば、これとオレンジジュースはこの学校に勤め始めてから皆勤賞の代物だったかもしれない。 「…ああ…はい。…好きです」 「やっぱり!僕も好きなんですよ。明日は焼きそばパン食べよう

          収まりきらなかった診断SS④

          収まりきらなかった診断SS③

          時が止まったかのようだった。 テーブルの箸を持とうと添えられた彼の指先は、そのままピタリと静止して一向に動く気配が見当たらない。 妻と子どもたちは泊まりがけで出掛けており、席についているのは男二人、元敵対関係。いつもより簡素な朝を迎えていた。そんな中で、食卓に並ぶ茶碗に盛られた米や味噌汁、漬物の合間を縫って、亜門の目線がある一点を捕らえている。 「食わないのか」とわざとらしく催促してみれば、目の前の男は目線だけ上げて、チラリとこちらを見遣る。なんとも困惑した顔。 「まさか

          収まりきらなかった診断SS③

          収まりきらなかった診断SS②

          「パレット。すまないが其処に居られては動けない」 誰かに背中でも撫でてもらいたい昼下がり。家の中をゆったり飛び回っていると、ソファにちょうどよく亜門が座っていたものだから、これ見よがしにその膝に降り立ってやった。少し硬いが別に構いやしない。 しかし、なんとまぁ。やけに困った声を上げるではないか。それが気になってチラリと見れば、どうやら針と糸で服のボタンを留め直している最中だったようで。パレットが前後の左足で踏んでいたのがまさにそれだった。 「おぉ〜わりィ。でもよぉどーせ座

          収まりきらなかった診断SS②