ランダム辞書SS②
過去のもの寄せ集め
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「書いてあるアドレスをタップしたら携帯がおかしくなったのよ。見て!」
そういって彼女が突き出してくるスマホの画面をまじまじと見つめる。異形、異質、異物、異色、異音…悲しいことに、一目でわかった。
「随分な災難だな。この世のURLじゃないよ、これ」
『URL』
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軽く力を入れれば、ぷつりと音を立ててフォークの先端が柔らかな肉に食い込む。美しく光る銀色に、滴るほどの赤い肉汁が纏わりつくと、それはより一層わたしの食欲をかき乱した。
フォークを刺す。口に運ぶ。咀嚼する。嚥下する。繰り返し。
そうして綺麗に平らげて、わたしは彼女と一つになった。
『フォーク』
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「月が綺麗ですね」だなんて陳腐な台詞を、まるでプロポーズのように口にする貴方。
握られた手、波の音。
夜の海辺、二人きりの世界。
波浪に揺れる満月は、私の心を写しているかのようだった。
『波浪』
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「影の中には怪物が潜んでいるんだ」
お前なんて食べちゃうぞ。と、兄はよく小さかった僕をからかっていました。でも、何年もの月日が流れたある日、彼は誰にも気付かれることなく死んでしまい。
きっと恐らく、その怪物の仕業なのでしょう。
そう呟いて振り返れば、街の灯に照らされた僕の影、まるで怪物のよう。
『街の灯』
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白いお肌とつぶらな瞳
赤いおくちの百合鴎
待てど暮らせど姿は見えぬ
恋し焦がれし都鳥
『百合鴎』
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