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その他です。過去作や気まぐれな文章など
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一節

大小様々な肉片と、蛭のような血の塊が辺りに散らばっている。

恐らく彼女が『食事』をしていたのだろう。
そんな推測が、胸糞の悪さと共に嫌でも込み上がってきた。

『とても弱い魔女の話』

一人は小さな魔女だった。
特性は「語り部」

知れば知るほど強くなる。そんな魔法。
けれど魔女は無垢だった。
目を背けてはならない。これから全てを知ることだろう。真実を、悲劇を、この物語を。

一人は臆病な魔女だった。
特性は「獅子」

怒れば怒るほど強くなる。そんな魔法。
けれど魔女は優しかった。
恐れてはならない。悲しみを知るがいい、絶望を味わうがいい。怒りとは憎悪にあらず。

一人は

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過去作②

「レジお願いしまーす!」

さっきからカウンターに向かって怒鳴っているのに。
自分の他に客一人いない深夜のコンビニ。それどころか店員の姿さえなく、有線だけが虚しく響き渡っていた。

「あのー!すみませーん!」

これも何度目だろうか。思わず溜息をついて、一度はカゴに入れたアイスを掴んで冷凍棚に戻す。防犯カメラだってあるのだし、このまま商品を盗んで行くわけにはいかない。だが、それにしたってあんまりだ

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過去作①

「話をしようじゃないか」

ぐずる子供に語りかけるような口調でその人は言う。私が声のする方を一瞥して返事をしないでいると、それを肯定の意と捉えた彼は、やがて歌うように言葉を紡ぎだした。

「むかーしむかし、そのまたむかし、そのまたむかしのおおむかし…」
「…またそのお話ですか?」

口を開けば、彼はたいそう嬉しそうな表情を浮かべるのだ。

「今日は違うよ。小さなドラゴンに関する豆知識でも、臙脂

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取り返しがつかない話

「お前なんか消えちゃえばいい!」
「本当によろしいですか?」
「あぁ、どうぞ!もう知らない」
「データ初期化中。ファイルを消去しています。絶対に電源を切らないで下さい」
「えっ、ちょっと待って」
「88%完了…92%完了…」
「ねぇ、駄目だって、待ってよ」
「初期化が完了しました」
「ああ…ああ」
「初めまして!私はあなたのパートナーロボです!あなたの名前を教えて下さい」
「ねぇ…本当に消えちゃっ

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