収まりきらなかった診断SS④
「好きなんですか?」
昼休み。聞き慣れた声が不意に耳に飛び込んできて内心肩が跳ねる。まばたきしながらギクシャクと振り向けば、永源先生がニコニコとこちらを覗き込んでいて。
「あー…っと…?」
「椎名先生いつも食べてますよね、それ」
そう言って軽く指差したのは、自分の手に収まっていた焼きそばパン。思えば、これとオレンジジュースはこの学校に勤め始めてから皆勤賞の代物だったかもしれない。
「…ああ…はい。…好きです」
「やっぱり!僕も好きなんですよ。明日は焼きそばパン食べようかな」
「ははは、いいですね。それならあそこのコンビニのが…」
たわいもない雑談を交わして、仕事の話もそこそこに、幾度と聞いたチャイムが響く。「ではまた」と、教材を抱えて去っていく彼の背中をぼんやりと見つめて、今度は内心でため息を吐いた。
「あなた」が好きだなんて。
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貴方はACで『言えるわけがない』をお題にして140文字SSを書いてください。
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