66歳で飛び込んだ暗号資産業界。定年は終わりではなく、次のステージの始まりだ
人生100年時代が到来した現在の日本では、終身雇用や65歳定年制だけに収まらない、多様な働き方が求められています。ビットバンクの常勤監査役、高橋洋二郎(たかはし ようじろう)は、そんな時代を体現する存在です。
社員から「ジョージさん」のニックネームで親しまれている高橋は、金融業界出身の超ベテラン人材です。60歳で1回目の定年退職を迎えた後も新たなチャレンジを続け、2017年に66歳で初めて暗号資産(仮想通貨)業界に飛び込みました。
2021年1月には70歳となり、人生で2回目の定年をビットバンクで迎えましたが、現在も引き続きコーポレートガバナンス(企業統制)体制の確立およびコンプライアンス(法令遵守)を管掌する常勤監査役として、情熱的に仕事に取り組んでいます。
働き続ける楽しさ、そしてビットバンクと暗号資産業界の未来について、詳しく話を聞きました。
40年以上にわたって見てきた金融業界
ーージョージさんは、もともと外資系金融機関に勤めていたんですよね。大学生の頃から、海外で活躍したいと考えていたのでしょうか?
実は、全くそんなことはありません。大学時代は理工学部で量子エレクトロニクスの勉強をしていて、海外にも金融にも縁はなかったんですよ。
ーーそんなジョージさんが、なぜ外資系金融機関に入社を決めたのでしょう?
大手メーカーなど日本企業の面接も受けたのですが、なんだか堅苦しくて退屈だったんですよ(笑)。
それで、他も見てみようと外資系銀行の面接を受けてみたところ、明るくてオープンで、雰囲気が全然違う。初対面の社長から、いきなり握手を求められて、とても驚いた記憶がありますね。当時の日本企業で、そんなことは考えられませんでしたから。
正直なところ英語は苦手だったのですが、これは楽しく働けそうだ!と入社を決めました。
ーーその会社ではどんな仕事をしていたんですか?
社員数が少なかったので、入社してしばらくは何でもやっていました。入出金の管理や小切手の取扱いなど銀行業務の基礎を現場で学びつつ、現金や日銀券のデリバリーやら外貨の売買やら宴会部長やら・・・本当に色々やりましたよ(笑)。
そんなある日、当時の上司が「ジョージは『FX(外国為替取引)』の業務に向いているんじゃないか」と。そこからFXディーラーとしての仕事が始まりました。
外国為替は変動が大きく、常にリスクヘッジを考えて機敏に動かないといけません。毎日同じことはやりたくない、常に変化し続けるほうがエキサイティングだと感じる私に合っていたようで、面白かったですよ。
ーーそうだったんですね!そこからなぜ、コンプライアンス領域に進まれたのでしょうか?
金融業界が大きな変化を迎えていた時期、外国国債や外国株式の売買取引のキャピタルマーケットが飽和してきたのを感じて、キャリアの方針を転換したんです。
1990年代後半からは、フランスやオランダの銀行でバックオフィス部門の経験を積んでいきました。
金融機関は非常に大きな金額を動かすため、バックオフィス部門では並々ならぬ慎重さが求められるし、デリケートな要素が多い。そうなると次第に、法令遵守に関して考える場面が多くなってきます。そこで「コンプライアンス」をキャリアの軸にしようと決めて、それ以来コンプラ一筋でやってきました。
なぜ「暗号資産」に注目したのか
ーー当時勤めていたシティバンクで“1回目”の定年を迎えた後、ビットバンクに入社する前には、韓国とフィリピンの金融機関で働かれていたと聞いています。
「まだまだやれる!」と考えていたので、定年で仕事を辞めるつもりは全然なくて(笑)。これまでの経験を活かせる場を探して働き始めました。
ーーその後、なぜ暗号資産業界に入られたのでしょうか?
韓国とフィリピンの金融機関では、コンプライアンスオフィサーとして海外送金のアンチ・マネー・ロンダリングに携わっていました。
日本から海外への送金業務を担当する中で見えてきたのは、海外から来日した技能実習生たちが、母国に送金するために高い手数料を支払っている事実。「これは大きな課題だな」と思っていたとき、暗号資産がこの問題を解決できると気づいたんですね。
暗号資産は手数料を低く抑えられるうえに、簡単かつ瞬時に送金ができます。世の中では、投機対象として注目されていた暗号資産ですが、私はまず「送金手段」として魅力を感じたんですよ。
そんな経緯で暗号資産への興味が強まっていた中、とある記事で「暗号資産業界全体のために足繁く金融庁へ通い、普及に腐心している人物がいる」と知りました。
その人物こそが、ビットバンク社長の廣末でした。業界全体のために行動できる人はなかなかいません。「理想を追っていて立派な方だ、この人と働きたい」と思い、早速ホームページから連絡を取ってみました。
ーービットバンクがまだまだ小規模だった頃ですよね。
当時のオフィスはマンションの一室で、社員数も10数人くらい。小さい会社でしたねえ。でも、廣末さんの情熱は当時からすごかったですよ。初めてお会いしたとき「私たちが暗号資産を普及させる」という熱い想いのこもったプレゼンテーションを受けて、大いに共感しました。迷わず入社を決めましたね。
内部統制・コンプライアンスを通じて会社の発展に寄与
ーー入社当時、ビットバンクではどんな業務をしていたのでしょうか?
当初は、バックオフィスのありとあらゆる業務を引き受けていましたよ。内部監査関係の業務はもちろん、バランスシートの作成から経理まで様々な仕事をしましたが、特に苦ではなかったですね。新卒時代の「何でもやる」経験が活かされたんじゃないでしょうか(笑)。
ーーもともとスタートアップ向きだったんですね(笑)。ビットバンクが本格的な成長フェーズに入ってからは、どんな業務がメインになったのでしょうか?
2018年以降は、メンバーが少しずつ増えてきたので徐々に業務分担を進め、私自身は専門領域の「内部統制(インターナルコントロール)の推進」と「コンプライアンス(法令遵守)」に重点を置いて取り組むようになりました。
内部統制とは「事業目標の達成のため、適切な制度やルール・社内体制を構築して、実際に運用していくこと」です。財務報告資料の作成・管理はもちろん、法律に則った行動規範をつくり、円滑に業務を進める仕組みを整備して、社内に浸透させていきました。
この内部統制とも密接に関係しているのがコンプライアンスですね。例えば、アンチ・マネー・ロンダリング対策もその一つです。暗号資産はマネー・ロンダリングに悪用されるリスクがあり、不正防止策を講じる必要があります。この問題は日本の法律だけでなく、海外の法律も考慮しながら考えなければいけません。
こういった業務を通じて、ビットバンクの信頼性向上に尽力してきました。
ーー“縁の下の力持ち”として組織づくりに貢献し、会社の成長を支えてきたわけですね!
いやいや、それほどでも(笑)。ただ、暗号資産業界はまだ発展途上なので、そこに私のような金融業界の経験者が加われたのは良かったと思っていますね。
この業界が成熟していくためには、さらに社会的な信頼構築が必要となります。私は金融の世界で40年以上勤めてきましたから、そういった長期点な視点を持ってアドバイスできるのが強みになっているかなと。
同じ志を持つ仲間たちと一緒に、この4年間でビットバンクを大きく成長させられたのは、本当に嬉しいことです。
パラダイムシフト期を迎えた暗号資産業界
ーージョージさんは、2021年1月に“2度目”の定年を迎えましたが、常勤監査役として仕事を続けられていますよね。
はい、これからも働きますよ。正直なところ、定年という言葉に意味はないと思っていますからね。次のステージが始まっただけ。意欲がある限り、仕事は続けたいと考えています。
ビットバンクの常勤監査役として、やりたいことをやれる場所があってリスペクトし合える仲間がいる限り、私は現役でいたいなあ。できるだけ長く働き続けていたいです。
ーー長きにわたって金融業界を見てきたジョージさんの、これからの目標について聞かせてください!
何十年間も金融業界で働いてきて、最も強く実感しているのが「時代時代で必ず大きなパラダイムシフトがある」ということなんですね。
今、暗号資産業界でもパラダイムシフトが起こり始めていますよね。最近、アメリカでは暗号資産取引所が初めて株式市場に上場しました。より一層、暗号資産に注目が集まるのは確実です。
そうなると、競合相手は日本だけでなく世界に広がっていきますし、企業間の競争も激化していくと予想されます。
だからこそ、私は常勤監査役として、ビットバンクの企業価値をさらに高めたいですね。今後もこの仕事に情熱を注ぎ、会社と暗号資産業界全体の発展に貢献できたらと考えています!
ーージョージさん、ありがとうございました!
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